独学で診断士を勝ち取る

ある受験指導校の名物講師が言っていた言葉に「独学は毒学である」というものがあった。

一つには、学校の講師として発言するので、学校を擁護していると言えるかもしれないが、やはり、この中小企業診断士試験の、特に2次試験(筆記)の特殊性の経験ゆえの言葉かもしれないと思う。
 
1次試験は、回答選択式であり、配点や正解が公表されるため、幅が広いと言っても特別なスキルが要求されるわけではない。

しかし、2次試験については、出題の趣旨は公表されるが、採点方法や模範解答は一切わからない。

不合格者に対しては、各事例ごとに評価(A・B・C・D)は通知されるが、合格者には無いため、実際には何をどう書いたから良いのか、悪いのかが想像でしか判断できないのだ。

(評価)
A:60%以上、B:50%以上60%未満、C:40%以上50%未満、D:40%未満 

各事例得点と総得点をこの4段階評価によって通知される。

総得点がAであり、一つもDが無ければ合格ということになるが、合格者にはこの得点通知はないため、何が良くて、何が悪かったのかは判らない。

つまり、世に出ている模範解答は、受験指導校や分析者が「勝手に」解釈して作成しているため、たとえば、その解答なら絶対に合格できるのかも不明である。(不合格者の再現答案を集めて分析はしているので、それなりに方向性は判るのだろうが・・・)

実際に3つくらいの学校の模範解答を並べてみることをお勧めする。

方向性が全然違うのだ。

それどころか、解説で「こういう書き方はダメ」と書いてある内容が他校の模範解答となっていたりする。(とにかく、本当に多いので驚くよ)

この特殊さゆえに、独学は困難であるというのが、大方の意見のようだ。

ただし、私は敢えて異議を唱える。

なぜなら、2次試験の模試を2年間で7つほど受けたが、そのほとんどの合格可能性が最低に近かったのだ。

H19年では、順位等は次のとおり。

模試実施校合計点数(400点満点)順位/受験者数
LEC中間模試141点160/214人
LEC公開模試150点224/612人
TAC公開模試149点806/1859人
マンパワー公開模試180点98/552人

順位の位置を見てもらうとわかるが、マンパワー以外は全く歯が立っていない。

例年の2次の合格率は20%くらいなので、LECやTACは問題外の成績だ。

何を言いたいのか、判るだろうか。

  • 受験指導校の採点は、自校の教え方に沿った解答に対して高い配点をしている可能性が高い。

ということだ。もしかすると、見るべきポイントが全く違う恐れすらあるのではないかとさえ思うのだ。

だから、独学でも戦えると言えるのである。

独学だからこそ、もしかしたら偏ってしまっている考え方に染まらずに素直な解答が書ける可能性が高いと思うのである。

H18年度とH19年度の2次を受けてみて感じたことが、「受験指導校の断言しているような分析結果は実はそれほど当たっていないのではないか」というものなのである。

そして、H19年度の試験直後に思ったことは、「もし、この俺が合格できたとしたら、受験指導校の採点分析には大きな間違いがあるだろう」というものだった。

その思いがあったため、合格した今、このような書き方をしているのだ。

もちろん、私が大きな間違いを犯しているかもしれない。今回の合格も全くの偶然なのかもしれない。

それでも、独学で合格を勝ち取ることは不可能ではないことはこの私が証明した。

その必要条件を自分なりに分析してみた。

1)自分が独学に向いているか分析してみる

まず、自分を知らなければいけないのはお判りだろう。

【独学に向いていない人】

  • 1人で勉強した経験がない。
→とにかく、学校で教えてもらうこと慣れていて、自分で新たな内容を学んだ経験の無い人は難しいと思った方がいいだろう。
  • 読む人間ではなく、聞く人間である。
→これは感覚の問題かもしれないが、読んで理解するのが得意な人と聞いて理解するのが得意な人がいるように思う。

聞いて理解する方が得意な人は学校向きと考えられる。

私は、あまり聞くことが得意ではない。

余計な想像に頭が飛んでしまう。ゆえに、読む勉強を中心に行えたと思う。

  • 自分でスケジューリングするのが苦手である。
→長期・短期両面でスケジューリングを自分で行い、それを繰り返す地道さが必要である。

【独学に向いている人】

  • 上の向いていない人の反対である人。
→自分で予定を立て、それを地道に繰り返した勉強の経験があり、それが自分向きであると感じられる人は、まさしく独学向きであると思う。

2)気分転換がうまいか

 
とにかく、毎日暇があるなら勉強をしなければいけない。

暇がなければ、暇を作らなければいけない。

朝型なら、より早く起き、遅く寝る。
夜型なら、より遅くまで勉強し、早く起きる。

そうして勉強をする時間を繋いでいかなければいけない。

たとえば、今日から試験が終わる(10月下旬)までそのスタイルを維持していくことになる。
 

絶対に、やる気を失う時期があり、絶望感や虚無感が襲ってくると言ってもいいだろう。

それは、本気でやればやるほど仕方がないものだと思う。

そして、それを超えなければ自分を超えられない。

だから、気分転換がうまいか、もしくは、そんな、自然に自分を預けられるものがあるかどうかが重要なのだ。

自分の場合、身体をいじめることで気分転換を図れた事が大きかった。

ランニングは気分をハイにしてくれる効果があり、ウェイトトレーニングであちこち筋肉痛になると余計な事を考えられなくなる。

結果的に、落ち込んだり、やる気を失っていた気分を忘れる事ができる。

何か、手軽にできる気分転換手段があることは長期戦を戦うためには強い武器になる。

3)受験指導校に通うのが困難である

別の面で言えば、現在の仕事の関係で、継続的に学校に通う事ができないという環境があることも、独学を継続する意欲付けになる。

経済的に無理だという場合もあるだろう。それも強い後押しだ。

学校に通っている人たちのブログを読んだり、合格者の体験談を読むと仲間で勉強をする効用が書かれている。

「お互いの考え方を聞く事でより広い視点で事例に取り組めるようになる」などと書かれていると、心が揺れ動く事がある。

やはり、必勝を考えたら、指導校で受講して、特に2次試験の考え方は、人と切磋琢磨した方がより効率的であると思いこむ事になる。

そんなとき、元々、不可能な環境であれば悩む事もないからである。

学習の途中で揺れ動くことが、一番マイナスであると思う。

4)絶対に合格してやるという強い意志

これが無ければ絶対に無理だと思った方がいいでしょう。

理由は何でもいい。

非常に負けず嫌いの方でしたら、この私に負けたくないという気持ちでもいいと思う。

あいつにできたのに、自分にできないわけはない。

どんな事をしても、今年1回で合格してやる、と思えますか?

原点に戻る。

「あなたは、なぜ、中小企業診断士の資格を取りたいと思ったのですか?」

これを明確にしよう。

何が何でも合格したいという強力な思いが続かなければ独学は無理だと言い切れるだろう。

中小企業診断士の試験の状況等は自分で調べていると思うが、この試験は、1次試験の合格率がだいたい20%だ。

その上で、1次の合格者しか受けられない2次試験の合格率もほぼ20%。

つまり、単純計算で、全体の合格率は「4%」しかない。そんな資格試験なのだ。

思いがあって、まじめに学校に通っている人が多い試験だが、その中で4%に入らなければならない。

それも、独学でやろうとしているんですよね。

絶対に合格してやるという燃え上がる強い意志がなければ、まず合格できません。

あなたは、絶対に合格しなければならない