居酒屋で経営知識
(95): 市場地位
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントを している 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長
「へい、いらっしゃい。鳶野さん、毎度」
「おお、大将。ジンがいなくて寂しそうだね」
「まあ、毎週何度かは顔を出してくれるのが当たり前でしたからね」
「ちょっと行ってくると出かけたのに、もう2週間じゃないかな」
「そうなの。昨日、メールのやり取りしたんだけど、まだ商談が停滞しているって」
「由美も心配だったら行ってきたらどうだ?」
「何を言ってるのよ。仕事の邪魔になるだけでしょ」
「ふーん。まあ、ジンのメールによると、マーケティング調査の一環だって言うから、また、土産話はわが社の発展に寄与するかもしれないからな」
「そういえば、鳶野さんとジンさんのメールのやり取りで、市場地位の話が出ていたわよね。市場地位っていうと、フィリップ・コトラーが出てくるけど、今回はドラッカーの著書の話だったわよね」
「そうなんだ。簡単に言えば、シェアってことなんだろうけど、目標の設定の話で、売り上げではなく市場地位が重要だとドラッカーが言ってるぞと教えられたってわけだ」
「それは、シェア一番を目指すってことかしら」
「それが、えっと、『現代の経営』のここに書いてあるんだが、ちょっと違うコメントがあるんだ。
『市場地位をそれ以上に大きくすることは賢明でないという限度がある。リーダー的な地位は企業を眠りに誘う』(P89)
要は、独占的な地位になってしまうと変化に適応できないって言うんだ」
「え?そんなことが書いてあったんだ。ここね。へえー。
『市場で圧倒的な力をもつことは、組織の内部においてイノベーションに抵抗する力を生み出し、変化への適応を危険なほどに困難にする』(P89)
難しいわね。ある程度までシェアを伸ばしたら、あえて、他の競争相手に譲るなんていうことではないわよね」
「ジンが帰ってきたら聞こうとは思っているんだが。独占は、独禁法に抵触するということより、自ら腐敗するとでもいうようなんだよ」
「元々、目標設定の話よね。そうすると、その市場地位の目標というのはどう設定するのかしら」
「それが、その後ろの辺りにある7つの目標だな。
『
(1)現在の市場において、現在の製品が占めるべき市場地位:金額およびシェア
(2)将来の市場において、現在の製品が占めるべき市場地位:同じく金額およびシェア
(3)技術上の原因、市場の動向、製品ミックスの改善、事業の定義の変更によって放棄すべき既存の製品
(4)現在の市場において、新製品の占めるべ主市場地位:金額およびシェア
(5)新製品をもって開拓すべき新しい市場において占めるべき市場地位:金額およびシェア
(6)これらの目標を達成するための流通チャネル、および価格政策
(7)顧客がが価値ありとみなすサービス
』(P91)」
「あら?ここにはアンゾフの成長マトリクスの組み合わせがあるわね。(1)が既存市場×既存製品、(2)新市場×既存製品、(4)既存市場×新製品、(5)新市場×新製品ってね」
「おおー。本当だ。その間に、既存の製品の廃棄という課題があり、達成するための対策に加えて、顧客の視点を入れて目標化するということだな」
「確かに、ドラッカーって、マトリクス化するようなツールを直接提示しないけど、割り切れない視点を切り捨てるべきでないということなのかもしれないわね」
「なるほど。ジンがいなくても、結構俺たちだけでやれるもんだな」
「自画自賛もいつまで続くかな。鳶野さんもそろそろ日本酒にする?」
「おお。由美も完全に日本酒党になったな」
「そりゃ、ジンさんの門下生だもの」
「そういうことだな。じゃ、熱燗できるまで、ビールのお代わりをしておこうかね。亜海、よろしく!」
「はーい」
(続く)
《1Point》
ドラッカー名著集2「現代の経営(上)」上田惇生訳 ダイヤモ
ンド社を読み直しながら、進めています。
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今回もドラッカーの提示と既存の有名な戦略の関係が出てきました。
コトラーの市場地位別戦略においては、企業の地位を4つに分類して、それぞれの取るべき戦略を示すというものでした。
(1)リーダー:最大の市場シェアを確保しているトップ企業
(2)チャレンジャー:一般的に、第2位のシェア企業と言われる。僅差の戦いの場合は、2位と3位が相争う場合もある
(3)フォロワー:3位もしくは4位以下の企業と言われる
(4)ニッチャー:リーダーからフォロワーまでが戦いを展開する市場から離れた特定の領域で独自の地位にある企業
この市場地位別戦略について、過去の居酒屋シリーズでも何度か取り上げましたので、興味あれば、検索してください。ちなみに、見出しで取り上げているのは、以下のページです。
→http://bit.ly/1aF6zBO
続いて、アンゾフマトリクスですね。
→http://bit.ly/1AIs0eE
(1)既存製品×既存市場=市場浸透戦略
(2)新製品×既存市場=製品開発戦略
(3)既存製品×新市場=市場開発戦略
(4)新製品×新市場=多角化戦略
どうでしょうか。覚えていますか?
他にも何度か書いていますので、参照ください。
(94)目標の設定←
→(96)独占企業