居酒屋で経営知識

99.財務会計のキーワード

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

「いらっしゃい。毎度」

「大将。とうとう鍋スタートですね」

「さすがに、リクエストが増えてきましたよ。一気に秋がやってきましたからね」

「今年は暑さがどこまで続くのかと思っていましたがね。あ、亜海ちゃん。いいよ、とりあえずの生ビールはOKだから」

「はーい。鍋っていうから日本酒なのかなあって」

「もちろん、ビールの後は日本酒にするよ」

「いらっしゃい」

「お、ジンさん。今日も先を越されたな。こう涼しくなってもビールは飲むんだね」

「大森さん。外は寒くても、暖かい部屋の中で飲むビールも格別ですよ。実は、日本では秋から冬の方が乾燥するから、この時期の方がおいしく感じると思っているんですよ」

「ほお。なるほどね。確かに、喉が渇いた方がうまいから、汗をかいた後だけじゃなく、乾燥していてもいいのかもしれないな。相変わらず、理屈じゃ勝てないや」

「勝ち負けじゃあないでしょう。北海道へ行くとビールがうまく感じるのは、空気が乾いているからじゃないかって」

「確かに、札幌で飲んだビール園のビールは最高だったなあ」

「いいなあー。私も北海道行ってみたいなあ」

「あれ?亜海ちゃんは北海道未体験?」

「あんまり旅行ってしたことないから。でも、良くジンさん達が北海道の話をするし、いいなあって思ってたの」

「これからの季節は結構安いツアーがあるから、一度行ってきたら?」

「そうだ、亜海。角の旅行会社で、札幌のホテル3泊と往復の航空券がついて、確か、3万円を切ったツアーがあったぞ。こりゃ、安すぎないかって、話をしていたところなんだ。話付けてやろうか?」

「いいなあー。でも、まだ学校あるし。冬休みならいいかも」

「そりゃそうだな。その気になったら頼んでやるよ」

「あれ?ジンさん、携帯のバイブなってません?」

 確かに鳴っていた。雄二からだった。

『ジン。今日もみやびに行ってるんだな。うらやましい』

『試験ももう少しだから、辛抱だな。で、どうした?』

『前に、ジンが試験を受けたときに直前にまとめたチェック表があるって言ってたよな。最後の確認用に送って欲しいんだ』

『あ、そうだった。事例1から3までの内容は今まで小出しに出していたんだけど、4用の財務会計は直前に見直した方が良いっていうことにしてたんだった。了解。あくまで、チェックリストだから、自分の知識の確認程度にして、わからないところがあったら、自分のテキストで見直しておいた方がいいぞ』

『了解。ここのところは財務会計の練習を中心にしていたから、違った視点で見直したいしな。じゃあ、頼んだぞ』

 今週末が試験本番だ。由美ちゃんにも送っておこう。

「雄二からだった。今週末が本番だから、最後のチェックをしたいって言う電話だったよ」

「いやー、由美もだったよな。みんな本当に頑張るよな」

「由美先輩や鳶野さんが頑張っているのってすごいですよね。私も来年受けようって思ってるんですう」

「なに。亜海もか?来年だったら就活じゃないのか?」

「うん、そうなんですけど。でも、この資格取れたら、就活にもいいかもしれないし。うーん、それより、企業経営の全体を勉強できるってジンさんも言ってたんでチャレンジしたいの」

「亜海ちゃん。やってみれば良いよ。学生だとなかなか取っつきにくいところもあるけど、1次試験の知識なんかは、幅広いから役に立つかもしれないよ」

「はい!ジンさん、個人指導をお願いしまーす」

「こらこら、亜海。あんまり勝手言っちゃいけないよ。それじゃなくても、ジンさんはうちに来るたびにノンビリ飲めない日が多いんだから」

「大将。良いんですよ。これが趣味みたいなもんですから。そのうち、みんなでビジネスができたら面白いですしね」

「やったー。ジンさんとお仕事ができるかも」

「おおー。ジンさんがとうとう独立かい?それなら、俺も乗るぞ」

「大森さん。気が早いですよ。まあ、そんな時が来たら、まずは出資のお願いに行きますからよろしくお願いします」

「了解だ。ジンさんの事業なら応援するよ」

 やけに盛り上がってしまったが、こんなメンバーで事業を興すというのもいいかもしれないな、などと思ってしまった。

 忘れないうちに、雄二にキーワードチェックのメモを送っておこう。

(続く)


《1Point》
・財務会計の事例チェック
以下は、私が実際に直前の確認メモとして試験会場に持っていったものです。説明は最小限になっていますので、もし、読んでもピンとこなかったものは、きちんと確認しておいて貰えればと思います。

事例の山張り(当たるも八卦当たらぬも八卦(^_^;))
「小口取引増加で売上債権増加や販管費が増加している卸売業」が出たら
・指標:売上債権回転率、自己資本比率を取り上げる
・売上債権の改善法は取引先別の管理がポイント
・標準原価計算で問われる論点はABC(特に物流費が出たらビンゴ)
・原価管理においてのキーワードは「原価企画」設計段階での原価管理

*原価差異分析の箱図の覚え方
(1)標準原価が内側-実際原価が外側(差異額も標準-実際)(2)縦がカネ(単価)、横が数量

*固変分解の方法を問われたら(これは過去に知識問題として出たことがある)
(1)総費用法(ある売上高の費用総額と他の売上高の時の費用総額を対比して求める)
(2)勘定科目法(勘定科目毎に一つ一つ分解)
(3)スキャッターグラフ法(グラフ上に売上高と総費用を記入して求める)
(4)最小二乗法(売上高と総費用の数値から回帰曲線を求める)

*株価の理論価値=(企業価値-負債の価値)÷発行株式数

『2つの切り口』
(1)収益性:自己資本経常利益率=売上高経常利益率×総資本回転率
 →資金の運用面
(2)安全性:自己資本比率
 →資金の調達面

*差額利益 A案とB案の比較
 差額利益=(収益A-収益B)-(費用A-費用B)

*プロダクトミックスの判断
(1)制約条件を見つけよ(時間、個数?)
(2)制約条件の単位当たりの限界利益を計算
(3)限界利益の高いモノから増やす、もしくは低いモノから減らす

*安全性の指標
借入金の増加が財務体質を悪化させている時
「調達計画の内容に問題がある」→自己資本比率
「運用計画の内容に問題がある」→固定比率

*「運転資本」とは資金不足のことである 
 →(売上債権+在庫)-仕入債務
 ※債権管理と在庫管理が問題

*未払い費用、未払い利息はキャッシュフローの増減となる→未払いなのでそれぞれキャッシュフローの「増」につながる

*当座資産=現金・預金+売掛金・受取手形+短期所有の有価証券+未収入金

*総資産の増大:資金調達面の問題=安全性、資金運用面の問題=収益性

*工場で手待ちが発生している時は、「有形固定資産回転率」を疑え

*EVA=NOPAT-資本コスト
DDM(配当割引モデル) 株価=(配当金)/(期待収益率-成長率)
CAPM=リスクフリーレート+β(市場投資利回り-リスクフリーレート)

*投資収益性を測る指標:総資本経常利益率、ROI
ROE=当期(純)利益/自己資本
 自己資本=純資産-新株予約権-少数株主持ち分

→(100)打ち上げ