居酒屋で経営知識
48.診断士試験・2次対策(7)事例4
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
事例3はやはりみんなにはなじみがなく、苦戦しそうな内容のようだった。
「ジンはまあ、取引先の工場なんかにも行くから分かりやすいのかもしれないな」
「それも他の事例と一緒で、なじみがあるかどうかで気分的に違う程度だと思うぞ。結局は、ある程度の知識があれば、鳥瞰できる読解力と一貫した回答に尽きると思っているんだ」
「そうなのね。あんまり、業種なんかにこだわらない方がいいのかもしれないわね」
「由美ちゃんは、わかってきたようだね」
天狗舞のお代わりをしながら、そろそろメインイベントの事例4について話しておかないと酔いが回りそうだ、と感じ始めた。
「この一杯を飲む前にざっと事例4を説明して、それからゆっくり味わおうよ」
「御意。さっさと行こうぜ」
「事例4は、はっきりしているわね。必ず最初に財務諸表があるものね」
「そういう意味で言うと、一番分かりやすいかもしれないね」
「なに?財務諸表が分かりやすいだと。計算問題じゃ、誤魔化しがきかないじゃないか」
「まあ、計算問題ばかりじゃないから心配ない。ただ、財務諸表分析の指標は、間違いなく書くことになるから理解しておくことが必須だな」
「財務諸表分析ができれば大丈夫なの?」
「いや、そうは問屋が卸さない。投資効果を考えさせたり、コンピューターシステムの導入留意点を出させるなどと言うひねりがあったりするからね」
「そうかあ。単純に、財務諸表分析とか、キャッシュフローの計算だけをやっていてもダメなのね」
「そこはやっぱり診断士の試験だ。経営者へのアドバイスをするためには総合的な判断が必要だからね。割と与件文が短く、ヒントが少ないことが多いんだけど、それでも与件文から導かれるところをはっきり意識して設問に取り組むというのは他と同じだ」
事例4のチェックメモをみんなでのぞき込んだ。
【2次試験当日チェック】
【財務会計の事例チェック】
「小口取引増加で売上債権増加や販管費が増加している卸売業」が出たら、以下に注意!
・指標:売上債権回転率、自己資本比率
・売上債権の改善法は取引先別の管理
・標準原価計算で問われる論点はABC(特に物流費が出たらビンゴ)
・原価管理においてのキーワードは「原価企画」設計段階での原価管理
*原価差異分析の箱図
→箱図を書くと分かりやすいが、書き方を決めておかないと迷うことになってしまう。
(1)標準原価が内側-実際原価が外側(差異額も標準-実際)
(2)縦がカネ(単価)、横が数量
*固変分解の方法
(1)総費用法(ある売上高の費用総額と他の売上高の時の費用総額を対比して求める)
(2)勘定科目法(勘定科目毎に一つ一つ分解)
(3)スキャッターグラフ法(グラフ上に売上高と総費用を記入して求める)
(4)最小二乗法(売上高と総費用の数値から回帰曲線を求める)
*株価の理論価値=(企業価値-負債の価値)÷発行株式数
『2つの切り口』
(1)収益性:自己資本経常利益率=売上高経常利益率×総資本回転率
→資金の運用面
(2)安全性:自己資本比率
→資金の調達面
*差額利益 A案とB案の比較
差額利益=(収益A-収益B)-(費用A-費用B)
*プロダクトミックスの判断
(1)制約条件を見つけよ(時間、個数?)
(2)制約条件の単位当たりの限界利益を計算
(3)限界利益の高いモノから増やす、もしくは低いモノから減らす
*安全性の指標
借入金の増加が財務体質を悪化させている時
「調達計画の内容に問題がある」→自己資本比率
「運用計画の内容に問題がある」→固定比率
*「運転資本」とは資金不足のことである
→(売上債権+在庫)-仕入債務
※債権管理と在庫管理が問題
*未払い費用、未払い利息はキャッシュフローの増減となる→未払いなのでそれぞれキャッシュフローの「増」につながる
*当座資産=現金・預金+売掛金・受取手形+短期所有の有価証券+未収入金
*総資産の増大:資金調達面の問題=安全性、資金運用面の問題=収益性
*工場で手待ちが発生している時は、「有形固定資産回転率」を疑え
*EVA=NOPAT-資本コスト
DDM(配当割引モデル) 株価=(配当金)/(期待収益率-成長率)
CAPM=リスクフリーレート+β(市場投資利回り-リスクフリーレート)
*投資収益性を測る指標:総資本経常利益率、ROI
ROE=当期(純)利益/自己資本
自己資本=純資産-新株予約権-少数株主持ち分
「うーん。酔いが回ってきた・・・」
「まあ、これは、俺が試験数日前にポイントとなる点を自分でメモしたものだから、ピンとこないところもあるかもしれないな」
「いきなり卸売業の例が出てるが、予想か」
「「自分の時は結構盲点かなと思ってな。よく言われる中抜きに対応する事例も作りやすそうだし」
「きっとこれも過去問中心なんでしょうけど、特に、注意点は何かあるのかしら」
「さっきも言ったように、始めに、財務諸表が出て、設問で指定された関係の指標を挙げ、もちろん計算結果も出し、具体的な問題点と場合のよっては解決策を出すんだ。そして、それが、その企業の現状をはっきり示しているし、その後の設問にも繋がるから、何の指標を使うのか、を練習すべきだね」
「何の指標を使うかが、問題のなのね」
「そうなんだ。ここで迷うと後の問題とちぐはぐになってしまうこともある。与件文での書き方も再確認して、どの指標がその企業の状況を正確に表しているか、慎重に選ばないといけないよ」
「よっしゃ。まずは、全体のポイントと試験の雰囲気はわかったから、飲もうか」
「ま、そうだな。ただし、チャレンジは思い立ったら吉日だから、明日からスタートするつもりでな」
「よっしゃ」
「はーい」
(続く)
《1Point》
・中小企業診断士2次試験(筆記試験)
事例4はまさしく財務・会計についての問題になります。
財務諸表分析の問題が必ず最初に出るところも特徴的です。それも、どんな分析指標を使うかにポイントがあるとも言えます。
また、キャッシュフローの計算をさせる問題も結構出るので、財務諸表からキャッシュフローの計算をする練習も欠かせません。
あとは、投資分析の現在価値などへの割引計算などですかね。
ただ、他の事例と違って、割とはっきり点数が出やすいので、ここで稼ぐつもりでやってみるといいと思います。
さあ、これで私の直前チェックはすべてです。
今回、2次を受ける方のご検討を祈っています。
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