居酒屋で経営知識
60.経営者の条件(13)成果評価
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長
「へい、いらっしゃい。毎度。お揃いですね」
「疲れたワー。亜海ちゃん、みんなビールだと思うからよろしくね」
由美ちゃんを先頭に、雄二、俺と続く。
「では、ジンさん、鳶野さん、お疲れ様でした」
「由美ちゃん、お疲れ様。乾杯」
ファシリテーターを務めた由美ちゃんの慰労会だ。
「おいしい!」
「由美っペのファシリテーター役はどうでしたか?はい、お通しの空豆ですよ」
「大将。さすがの由美ちゃんでしたよ。発言しやすい雰囲気を作るのがうまいですね」
「俺も、今回はシャッポを脱ぐよ」
「ええ?ホント?素直にうれしい。結構、反省しているのよ」
「ファシリテーターとしての引っ張るところ、待つところのメリハリが効いていたよ。これからは、由美ちゃんにやってもらうのがいいだろうね」
「なんか、涙でそう・・・」
「おいおい。由美らしくない。まあ、今日の話の状況じゃ、仕方がないけど、予定の範囲を終えられなかった点だけは、一応反省点かな」
「ええ、そうね。そこが私も気になっていたの」
「それは、仕方がないさ。次につながる議論が出ることが重要でもある。無理矢理先に進めることが目的じゃあないからね。それにしても、やっぱり、直接の人事の話だったから面白かったね」
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「はい、それでは、いつも通り自分の気になって印をつけた部分について発表をお願いします」
「それじゃ、今日は私からいきます。今回は、印をつけた部分がたくさんありました。前の方からいきますね。まずは、この文章でした」
→「人に成果をあげさせるには、『自分とうまくいっているか』を考えてはならない。『いかなる貢献ができるか』を問わなければならない。『何ができないか』を考えてもならない。『何を非常によくできるか』を考えなければならない」(P105)
「一見当たり前に思えますが、実際の現場ではどうでしょうか。どうしても、うまくいってない部分や不得意な部分を見て、変えてやった方がいいか、と思ってしまうことが多々あります」
「同感です。彼は、これが得意だから異動させようと考える前提には、今、うまくいっていないことがあり、うまくいっているなら変えないことを選択しそうな気がしますね」
「うーん。そうかもしれないなあ。自分と非常にうまくいっている部下を動かす決断というのは確かに難しい」
「なるほど、皆さん、同じような意見のようですね。人を異動させる点で、他に気づいた人はいますか?」
「その少し後に、人の強みについて書かれていますよね。本来、組織によって、強みだけを生かして弱みを消し去るけど、その前に、仕事を前提にして人を選んでしまうというのが問題だと言ってます」
「なるほど。具体的に、何が問題だと言っていると思いますか?」
「その仕事をさせるのにもっとも無難な人を探すことになってしまうことだと言ってますね。これは、その通りだと感じました。もし、人からスタートして、この人がいちばん得意なものは何かを考え、それから、それを活かせる配置はどうか、と考えていったらそれはないですよね」
「そうなんですけど、実際にそうすると、人が偏ってしまうような気もするけど」
「そうですよね。では、どうしたらいいでしょう」
「うーん。やっぱり、そこで妥協せずに、どうしても適格な人がいないなら、外から探すなりすべきだと思います」
→「人は組織のおかげで、強みだけを生かし弱みを意味のないものにできる」
→「人の強み、特に同僚の強みを生かすことのできる者はなぜ稀なのか」
→「主たる理由は、目の前の人事が人の配置ではなく仕事の配置として現れているからである。したがって、ものの順序として仕事からスタートしてしまい、次の段階としてその仕事に配置すべき人を探すということになるからである。そうなると、最も不適格な人、すなわち最も無難な人を探すという誤った道をとりやすい。結果は凡庸な組織である」
(P107)
「他のポイントに意見のある人は?」
「厳しいなあと思ったのは、同僚や部下と親しくしないというところですね。組織のコミュニケーションを考えると同僚や部下といかに親しくするかに気を遣いますが、ドラッカーは否定しているようです」
「そこのコメントはそうですけど、コミュニケーションをとらないことを推奨しているわけではないと思います。あくまで、人を選ぶ点を考え、冷静に成果を求めるためには、親しくしすぎることがマイナスになると言っているんじゃないでしょうか。コミュニケーションとは別の視点だと思います」
→「ということは、一流のチームをつくる者は直接の同僚や部下とは親しくしないということである」(P109)
「ここはどうでしょう。人事考課について、潜在能力を評価するなと言っています。何となく、将来性というのは評価としてあるような気がするんですが」
「将来性については、見込みでしかないから、現実に成果として出されたものを評価するんであって、余計な感情で評価するなと言うことではないでしょうか」
「うーん。その後の方に、具体的な成果のへの期待に対し、成果を評価すると言っているので、将来性などという曖昧なものではなく、実際に具体化された将来の目標に対し、どう貢献しているかという視点で評価することが重要なのではないでしょうか。だから、先ほどの親しくならないというところにつながる気がします」
→「また現在の人事考課制度とその背後にある思想は、潜在能力にあまり関心をもちすぎる。」
→「われわれが行うことのできるのは、現実の評価だけである。」
(P119)
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「人事制度についてで、前半のほとんどが終わったんじゃなかったか?」
「そうなの。それで、ちょっと焦っちゃった」
「お話中ですが、サロマ湖のホタテが入ったんですが、いかがですか?」
「うおー。そりゃいい。シンプルに焼いて欲しいな」
「賛成!」
「じゃ、大将、焼きホタテと国稀でよろしく」
「最高!」
(続く)
《1Point》
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人の強みを生かすというテーマについて、人事制度というのは大きなポイントなのは間違いないですね。
ただし、組織が大きくなればなるほど、人事についての縛りが厳しくなって、強みによって人を動かすための仕組みから遠ざかってしまう傾向があるような気がします。
成果だけで評価するというのは、冷たすぎるようにも感じますが、その前に、その人の強みを存分に発揮できるポジションと向かうべき具体的な目標が示されていることが必須なのだと思います。
仕事に合わせて人を配置し、成果を出せと言うだけでは、単に仕事を流すだけの組織になってしまうのではないでしょうか。
いや、そんな組織が主流のような気がします。では、なぜ、そんな組織でもなんとか成果が出ているのか?とも感じます。
それが本当のなされるべき成果なのか、過去の遺産で生きながらえているだけなのか、という問いも投げてみたいですね。
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