居酒屋で経営知識
80.知的資産経営の6ステップ
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
大森さんが呼んだ経営研修講師の新田さんと飲みながら話をしている。
「北野さん。中小企業診断士は、普段から企業の全体指導をしていますから当たり前かもしれませんが、知的資産経営を指導する場合のスタートはSWOT分析でいいんでしょうか」
「それについては、指導する人によって違うかもしれません。確かに、SWOTが一番分かりやすいので基本的なテキストはそうなっていると思いますよ。我々も迷うところはあるんですが、ステップ毎に判断するようにしています」
「ステップがあるんですね。それを教えてもらっても良いでしょうか。図々しいのは承知でお願いしていますので、ダメなら諦めます」
「新田さんもはっきりしていていいですね。特に秘密じゃありませんが、我々の中でまとめたものなので、公開するときは気をつけた方が良いかもしれません。
ちょっと紙に書きながら説明しましょうか。
えーっと、ステップは6つを考えています。それと、P-D-C-Aサイクルを対応させていますので、6つを更に4つにまとめています。
ステップは
(1)自社の知的資産を「知る」
(2)知的資産を活かした計画を「まとめる」
(3)知的資産を「活かす」(実行する)
(4)知的資産を「伝える」
(5)知的資産経営を「振り返る」
(6)知的資産経営を「見直す」
となります。
これらをP-D-C-Aサイクルに対応させるとこうです。
【PLAN】
(1)自社の知的資産を「知る」
(2)知的資産を活かした計画を「まとめる」
【DO】
(3)知的資産を「活かす」(実行する)
(4)知的資産を「伝える」
【CHECK】
(5)知的資産経営を「振り返る」
【ACTION】
(6)知的資産経営を「見直す」
という関係になります。(1)の知るでSWOTなどの手法を使うことになりますね」
「なるほど。ところで、知的資産経営報告書を作るというステップはないのですか?一般的に、知的資産経営報告書を作成して公表するというのがメインだと思っていましたが」
「直接的には、(4)の伝えるというのが、知的資産経営報告書を作成し、公表するというステップになります。報告書は、初めの『知る』から計画を『まとめて』『活かす』ところを整理し、ステークホルダーに公開するための手段ですから、報告書が目的にならないようにしなければいけませんね」
「あ、そこですよ、私が疑問に思っていたのは。確かに立派な知的資産経営報告書を作って公表している企業が増えているんですが、視点を変えた企業案内を作って終わり、というように見えてしまうんです」
「さすが新田さんですね。知的資産経営に限らず、どうしても期限を切ってコンサルタントなどに依頼することになると、成果物に注目しがちなんですよ。だから、P-D-C-Aサイクルに対応させて、とにかく、『振り返り』と『見直し』を意識させるべきだと思っています」
「そういうことですね。報告書を作成することが目的ではなく、報告書をもとにチェックしたり、計画を見直すことが大切なんですね」
「その通りです。新田さんのような感覚なら、間違いないですね。だから、知的資産経営報告書はできるだけ、毎年更新して欲しいんです。そして、2年目からは、どう前進したかが見えるようにしなければいけないですね。どうです。実際に、一緒にやってみませんか?」
「え?いいんですか。ノウハウの流出になるなんていう診断士の先生が多いと聞きますが」
「ま、そういう人もいるでしょう。でも、目的は企業の支援ですから、いいノウハウは共有できれば、多くの企業のためになるじゃないですか。大森さん。どうでしょう。大森さんの店でもいいし、商店街組合の中で、どこかを2人で知的資産経営という視点で支援してみようと思うんですが」
「それはありがたい。是非お願いしますよ。明日にでも、希望を取ってみます。うちをやってもらいたいところですが、職権乱用だなんて言われるとうるさいんで、まずは聞いてみますよ」
「よし、決まった。新田さん、具体的な内容を今週中に相談しましょう。有償・無償も含めて」
「北野さん。私は無償でいいですよ。勉強ですから」
(続く)
《1Point》
・知的資産経営の6つのステップとPDCAサイクル
再掲しておきます。
【PLAN】
(1)自社の知的資産を「知る」
(2)知的資産を活かした計画を「まとめる」
【DO】
(3)知的資産を「活かす」(実行する)
(4)知的資産を「伝える」
【CHECK】
(5)知的資産経営を「振り返る」
【ACTION】
(6)知的資産経営を「見直す」
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