居酒屋で経営知識

101.ビジネスプランを作る

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

「へい、いらっしゃい。ジンさん、毎度」

「さすがに、日が落ちると寒くなってきましたねえ」

「今年は夏が長かったせいか、秋をスキップしてしまうような気がしますよ」

「ホント、そんな感じですね。本格的な冬になる前に、秋を味わっておかなければいけないですね」

「ジンさん、その言葉を待ってました。今日は石狩鍋がお勧めですよ。生鮭の良いのが入りましたんでね」

「そりゃいきますよ。ちょっと待ってれば誰か来るでしょうから、取っておいてくださいね」

「もちろんですとも。ところで、最初はビールでいいですか?」

「ええ。あれ?今日は亜海ちゃん休みですか?」

「そうなんですよ。就活セミナーがあるとかで、そろそろ次のアルバイトを考えなければいけないかもしれませんね」

「ほとんど毎日来てましたらからね。やっぱり数人でローテーションするのが良いんじゃないでしょうか?」

「由美っペがフルタイムだったから、何となく亜海に甘えていたかもしれないですね。彼女も家の仕送りがないらしくて、とにかく自分でやるんだって頑張ってましたんでね」

「今時、なかなかいないですよね」

「あ、いらっしゃい。すいません、原島さん。話し込んでて気がつきませんでした」

「いえいえ。ところで、今の話は、バイトの亜海さんの話?」

「原島さん。失礼しました。ええ、そうなんです」

「そうだったんだ。こういう言い方じゃ、叱られるかもしれないけど、最近、見かけによらずしっかりしているなあって思ってたんだよ。そうか、就活か。うちを受けて貰えるかなあ」

「え!原島さん。そりゃいい。亜海に言ってみますよ。原島さんの会社に憧れているみたいですから」

「そうですか。採用については、上に上がってくるまでは私は口を出さない方針なので、保証はできないですが、彼女を上げてきたら、うちの採用部門も優秀と認められるかもしれないですね。私が言ったことは内緒ですよ」

「もちろんですとも。そうなったら、ありがたいです。楽しみだ」

「いらっしゃい。おお、由美っペか。いいところへ来た。ちょっと忙しくなったら手伝って貰えるかい。亜海が休みなんだよ」

「そのつもりよ。亜海ちゃんからメールを貰っていたのよ。あの娘も責任感強いわ」

「そうだったのか。ありがたい」

「原島社長さん、お疲れ様です。そうだあ。ジンさんに見てもらいたいものがあるの」

「見てもらいたいものって?」

「今、若手で新しいビジネスプランを作る研修を行っているの。でも、せっかくだから、それぞれ会社に提案できるくらいのものを作ろうっていうことになったの。そしたら、経営会議のメンバーの前でコンペティション形式で発表して、有望なら会社として支援するっていう話までトントン拍子で決まってしまって」

「そりゃ面白そうだ」

「そうなの。でも、さすがにそうなると中途半端な内容にする訳にはいかないので、全体構成も含めて意見が欲しいの」

「了解。そうなると、しっかり見なければね。そういえば、雄二の会社をスタートする前にビジネスプランを作成したのを覚えている?」

「ええ。その時、一緒にみやびのビジネスモデルの見直しもしたもの。それを覚えていたので、その時の資料も使ってやっているの」

「さすがだね。今、何か手元にある?」

「今日は、大枠を確認していたので、発表するときに必要な項目を書いたものがあるんだけど、まずはそれを見て貰える?」

「OK。どれどれ・・・・しっかりしているじゃないか。きちんと基本原則通りだから、後はそれぞれの中身だよね」

「そう。それが問題。でも、大枠に抜けがなさそうならまずは一安心ね」

 脇で生ビールを飲んでいた原島さんが身を乗り出してきた。

「どれどれ。正当なビジネスプランってどんなものなんだ」

 それは、A4一枚にまとめる項目の目次として書かれていた。

ビジネスプラン項目>
1)サマリー(要約)
2)事業概要 ・ミッション ・ビジョン ・セールスポイント、事業内容
3)ビジネスモデルコンセプト
4)環境分析
5)ドメイン
6)ビジネス構造
7)事業戦略
8)個別戦略
9)アクションプラン(マイルストーン)
10)コンティンジェンシープラン
11)ファイナンス

「テーマは何を考えているの?」

「実はね。今の事業と全く違うものなの。未婚の一人暮らしの人が増えているところに注目して、不安の解消を図るっていうのが話の出発点だったわ」

「未婚の一人暮らしか。確かに、最近の生涯未婚率は随分高くなっているらしいし、未婚には入らないけど、離婚や死別での一人暮らしも増えているね。震災以降、つながりを求める人が増えたけど、逆に不安が増したとも言われいてる」

「そうなの。最近だと、ネットでしかつながっていない人も増えて、そうなると、病気になったり、突然倒れたりすると連絡が無くなるだけで、どうなったか誰もわからなかったりするから、ますます不安になるみたい。リアルもネットも両方のつながりを大切にするサービスを考えているの」

「なるほど。楽しみだね。応援しがいがありそうだ」

「ジン先生。よろしくお願いします」

(続く)


 居酒屋小説の初期の頃、鳶野雄二が起業するという設定で、ビジネスプラン策定の説明を連載していた時期があります。

 ホームページで見ていただければ載っていますが、今回はそれを具体的なビジネスプランサンプルでやってみようと思います。

 サンプルは、過去に私が受講していたMBA講座で開催したビジネスプランコンペティションへ出したプランを使おうと思います。

 他のメンバーに許可をもらっていませんが、まあ、問題ないでしょう。(このメルマガ見ていたら連絡ください。また、飲み会しよう)

 観念的な説明が多かったので、具体的な内容での展開を楽しみにしてください。

*私が受講していたMBA講座は週末に単発で開催されるので、会社員が受講するには最適だと思います。参考に。
MBA Solution Business College
http://www.mbajp.org/index.html

(100)打ち上げ