居酒屋で経営知識
102.アイディアの創出
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。 新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士
「いらっしゃい。皆さんおそろいで。何かあったんですか?」
「大将。そんなことより、熱燗つけてよ。今日は一段と寒いよ。まだ、コートも出してないし」
「ハイハイ。鳶野さんはそんな身体をしているのに割と寒さに弱いんですね」
「脂肪が少ないからかなあ。結構敏感なんだよ」
「それはあるのかもね。でも、脂肪が多いはずの女性に冷え性が多いのはなぜかしら」
「うーん。わからん。ジン、頼む」
「そんなこと、いきなり振られてもわからないよ。女性は、胎児を守らなければいけないから、敏感にできているのかも」
「わからんと良いながら、信じそうな話をするところが詐欺系コンサルタントらしいな」
「雄二。詐欺はないだろう。もう、お前の会社は見てやらん」
「ウソウソ。冗談だってば。まったく最近冗談が通じなくなったなあ。歳のせいか?」
「やかましい」
「まったく、二人して。早く座って。ねえ、亜海ちゃん。熱燗早めにね」
「はーい。ジンさんの好きな54度くらいになってきました」
雄二、由美ちゃんと久しぶりに3人揃ってみやびへやってきた。
「大将。今日は、この間話していた由美ちゃんの会社のメンバーにビジネスプランのつくり方の話をしてきたんですよ」
「ああ、そういうことですか。どうでした?」
「みんなやる気のあるメンバーで、良い感じでした。どう見ても由美ちゃんが仕切ってましたがね」
「仕切ってなんか無いわよ。でも、ジンさんのおかげで随分自信持てたみたい」
「俺も手伝ったんだけどな」
「鳶野さんを見て、みんな怯えていたじゃないの。おかげで、スムーズに始められたけど」
「まあ、そうだろう。人は見た目で判断してはいけないことも学習したかもしれないな」
「はーい。菊正宗の熱燗デース。お通しは筑前煮デース」
「おおー。いいねえ。まずは、お疲れさん。乾杯」
・・・・・・・・・(回想)・・・・・・・・・
「由美さんから聞いていますが、いろいろなアイディアから未婚の一人暮らし向けのサービスを第一候補としているようですね」
「ええ、私から説明すると、メンバーがそれぞれアイディアを持ち寄って議論しながら進めたの。確か、一人平均10件くらいアイディアをもってきたので50件くらいが集まったわ」
「なるほど。では、皆さんはどのようにしてそのアイディアをまとめたのか教えて貰えますか?」
メンバー一人一人から発表し貰った。その内容は以下の通り。
・インターネットの検索サイトでキーワードのランキングを並べて考えた。
・思いついたことを付箋紙に記入し、ある程度たまったところで似たものを集めたり、関連性を考えたりしながら進めた。
・別のメンバーとブレーンストーミングをした。
・元々興味のあった分野について、改めて調べて整理した。
・この会社でやることを前提に、強み・弱みなどSWOT分析をして外部環境への対応という形で考えた
など
「これはすばらしいですね。皆さん、それぞれのアイディアを作る方法を身につけているようですので私が説明するまでもないようです。一般的な整理だけしておきますね。
(1)マクロからアプローチするアイディア創出法
・社会や経済といった大きな視点から考える
・世界を俯瞰し、趨勢からニーズを考える
たとえば、よくあるのは、少子高齢化という視点から子供とお年寄りに特化したニーズを検討するというような考え方です。
(2)ミクロからアプローチするアイディア創出法
こちらは、逆に身の回りや身近な視点でニーズを捉えていきます。
・日常で不便なこと、不満を感じることに注目する
・あったらいいな、を考える
・自分の今の仕事から顧客ニーズとのギャップを解決するアイディアを考える
(3)マッシュアップによるアイディア創出法
これは視点を変えた方法です。
・既存の商品やサービスの組み合わせから新たなビジネスを創出する
たとえば、本屋と喫茶店を組み合わせ、本屋の売っている本を喫茶スペースでコーヒー等を飲みながら無料で読むことができるブックカフェなどがその例です。
まあ、このような創出法がありますが、もちろんこれでなければいけないなんてありませんので、ご自分のやりやすいやり方で良いと思います。
ただし、注意点があります。
・ニーズとウォンツの違い
これは、表面的な欲求をニーズであると捉えてしまうと失敗するという話になります。
例えば、ある地域で自転車を買う人が増えているので、自転車愛好家が増えたと判断し、自転車自体や自転車用品を売ることを考えたとします。
しかし、それらの人たちが求めていたもの(ニーズ)は、手軽にダイエットができるものかもしれません。自転車に興味があるのではないため、自転車用品をそろえても関心が無く、次のダイエットの流行製品に移行してしまうかもしれません。
・思い
いかにニーズがあり、売れると分析しても、その商品やサービス、もしくは、ニーズの解決に強い興味や思いがないようでしたら要注意です。
ニーズに加え、あなた自身の思いがなければ続かない可能性があります。俺がやらなければ誰がやるというような強い思いがなければ、本当のビジネスモデルにつながっていかないと思います」
・・・・・・・・・(回想ここまで)・・・・・・・・・
「みんな、新しいアイディアのつくり方を教えてくれるのかと思ってたらしくて、思いが一番大事だと言われて面食らったようね」
「でも、俺はジンの言うことは重要だと思うな。自分がやりたいことじゃないと壁にぶつかると進めなくなるような気がする。壁を乗り越えて事業化するには、強い思いがないといけないんだ」
「うーん。さすが経営者らしくなってきた」
「だろ。思いだけは誰にも負けん」
(続く)
正直言って、アイディアのつくり方には決まりはありません。
ただし、ちょっと面白い本があるので紹介します。
皆さん、ご存じかもしれません。非常に薄い本ですが、非常に示唆に富んでいます。そして、その著書名も「アイデアのつくり方」と直球勝負です。1000円しない本ですので、興味のある方は読んでみてください。
ジェームス.W.ヤング「アイデアのつくり方」
*私が受講していたMBA講座は週末に単発で開催されるので、会社
員が受講するには最適だと思います。参考に。
MBA Solution Business College
→http://www.mbajp.org/index.html
(101)ビジネスプランを作る←
→(103)ターゲットの明確化