居酒屋で経営知識

110.クロスSWOT

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

 由美ちゃんの会社で実際の新規事業としてビジネスプランを作る研修を行っている。
 年末までに、コンセプトをつくり、SWOT分析を完了した段階だ。

「あけましておめでとうございます。ジンさん、今年もよろしくお願いします」

「大将。あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」

「さあさあ、菰樽を開けましたので、枡に取ってくださいよ。いいですか。では、新年を祝って、乾杯!」

 みやびへの初出?だったので、樽酒とお節風のお通しで乾杯をした。

「しかし、新年早々からビジネスプランに取り組んだんですか。そりゃ、すごいですね。やる気の表れでしょうね」

「えへへ。うちの社長がとうとうやる気になったのね。ジンさんにも口添えしてもらったけど、社内起業のコンペを募集することになったの。採用されると実際にFS予算と専属チーム化を許可してくれるって言うことになったので、他でも検討を始めたみたい」

「由美ちゃんの熱意でしょうね。元々、みんな研修ではなくて、本気でやりたいという仲間だったので、賛同者が多かったこともよかったですね。そういう訳で、自分も研修講師というより、コンサルタントとして対応する必要が出てきました」

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「昨年の話になってしまいますが、SWOT分析の内容は覚えていますか?今回は、SWOT分析で明らかにしたそれぞれの内容を組み合わせて成功要因を抽出してみましょう」

 各検討チームでまとめたSWOTの各項目を加工した資料を配った。

「手元の資料を見てください。各チームの最終的なSWOT分析としてまとめた内部環境を縦軸に、外部環境を横軸に寄せてあります。
それぞれが交差する欄で内部環境と外部環境をマッチングさせてみましょう。つまり、強みと機会が交差する欄では、強みが活かせる機会はどれか、もしくは、その機会に使える強みはないかと考えてみてください。同じように、例えば、弱みと脅威の交差欄では、脅威をまともに受けてしまう弱みや場合によっては、その弱みゆえに、脅威を回避できる場合もあるかもしれません。このように、一つ一つ組み合わせて、四つの欄を埋めてみてください」

 各チームからの質問に答えながら、作業を進めていった。

「同じ強みでも、機会に有利だと思っていても、別の脅威を考えるとリスクも高いことが考えられますが、どちらを取れば良いんですか?」

「どちらも書いておいてください。どちらを取るかは、今後のFSでの検討事項になるかもしれませんし、経営判断のポイントになるのかもしれません。また、場合によっては、他との組み合わせを見ていると、強みだと思っていたモノが実は弱みかもしれないという場合もあり得ます。一度決めたからではなく、常に、両面から考え、場合によっては、見直すことも必要です」

 考え出すとSWOTで明確化したものが曖昧になってくることもある。

「このツールはクロスSWOTと言います。一番注目すべきは、もちろん、機会×強みの欄です。ここにはっきりした組み合わせが見つかれば、まず、それをコアに成功へのビジネスモデルを考えていくことが出来ます。また、脅威に対抗できる強みや機会を捉えるには弱みがあるという点なども明らかにします。これらを総合的に何度も見直して、ビジネスモデルの明確化と更にビジネスプランとしての計画書へ展開することになります」

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「ジンさん。今回のクロスSWOT分析のおかげで、随分分かりやすくなったわ」

 枡酒を味わいながら、次の展開を考えていた。

「今回わかったことで、会社としてこれから伸ばしていくことが有利である点があったろう。ほら、高齢者介護施設などへの販路展開が既存事業の方針だったけど、今回の新事業テーマとして上がっている老人ホームなどへの法人契約のモデルは、現事業とのコラボになる可能性があるよね」

「そうなの。うちの会社ですでに高齢者介護施設へ食品や半製品を売ろうとしているなんて、知らなかったわ」

「これなんかは、現在ある強みとして強化していくポイントとなると思うよ。単に、新規事業を検討するのみならず、既存事業の内容についてもよく調査しておく必要があるよね」


《1Point》
クロスSWOT分析

 これも定番中の定番でしょう。
 マトリクスをみれば分かりやすいので、過去の説明へのリンクを貼っておきます。

http://bit.ly/113rs1S

上記リンクページの一番下の方に、クロスSWOTを説明する表が貼り付けてありますので参考にどうぞ。

(109)納会2012