居酒屋で経営知識
(12):4つの原理(3)継続(2)
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長
ジン、由美、雄二の3人が、みやびでラグビースタイルマネジメントの予習中だ。4つの原理のうち、継続についての話が続いている。
「こりゃ、うまいね。一本義って初めて飲むような気がするな」
「雄二。さすがだね。福井の酒造蔵なんだけど、なかなか流通しないようだ。ねえ、大将」
「そうなんですよ。それで、直接蔵へ行って交渉してきたんで、時々送ってくれるようになったんですがね。いい酒でしょ」
「後味がスルッと抜ける感じがいいね。淡麗なんだろうけど、深みがあるから水っぽくない。水と米の相性がいいんだろうね」
「ジンさん。ここは白山の伏流水と五百万石の名産地ということで贅沢な造りが出来るんでしょうね」
「なるほど」
「さあ、急がないと完全に酔っぱらってしまうわ。継続の続きをお願い」
「由美。そろそろ限界だよ」
「由美ちゃんに叱られるから、雄二はおいておいて進めようね。まず第一にゲームレベルとして業務フローを回し続けるという視点で説明したよね。次のレベルは、チームの実力を向上させ続けるというレベルになる。これを、イノベーションサイクルを回すという言い方で考えているんだ」
「イノベーションは、ピーター・ドラッカーの話の時、何度も出ていたわね」
「そうだね。イノベーションというと技術革新と訳してしまうことがあるけど、そうじゃなかったよね」
「世の中は常に変化し続けるから、その変化を捉え、変化に対応することでイノベーションを起こすことできるっていう感じかな」
「OKだよ。新しい組み合わせや概念を変えるような活動をイノベーションというんだけど、イノベーションを特別なこととして捉えてしまうと現状維持になってしまい、陳腐化にさらされてしまうと考えてもいいかもね。このレベルでは、事業そのものを変えることになるから、非常に高度ではあるけど、その起点は一人一人の関係者の感覚でしかないんだ。経営者やリーダーというレベルでは無く、日々課題を抱えて顧客や非顧客と接しているところからイノベーションは起こるんだ」
「それを意識するとすれば、ピーター・ドラッカーの言う7つの機会になるわけね」
「ご名答。復習しておこうか。
(1)予期せぬことの生起である
(2)ギャップの存在である
(3)ニーズの存在である
(4)産業構造の変化である
(5)人口構造の変化である
(6)認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化である
(7)新しい知識の出現である
だったよね。
そして、組織メンバーの一人一人がサイクルを回すという意識で考えるのは、(1)~(3)くらいかな。特に、(1)の予期せぬことの生起、という部分を意識してメンバーと気づいたことの共有をし続けることで、変化に対応したアイディアが産まれるというサイクルになり得るんだ」
「そうだったわ。予期せぬ成功と予期せぬ失敗を見逃すなっていうことね」
「そうだね。あれ?と感じたことをそのままにせずに、記録し、共有し、問題意識を広げていくことでイノベーションと言われるような新しいものを作り上げることが出来る、ということが実力の向上ということだね」
「あれ?ジンと由美はまだやってたのか」
「雄二は一本義に取り組んでりゃいいさ。俺も、もう少しで参加するから」
「ジンさん、ごめんなさい。そろそろお酒モードにしましょう」
「もう、まとめだから、もう一息。第三のレベルは、マネジメントレベルになる。つまり、業務プロセスやイノベーションプロセスを回し続けるためのまさに継続システムが必要だという考え方だ。
そのためには、
(1)業務プロセスをシステムの中で自然に引き継ぎの出来るマニュアル化を目指す必要があると思うんだ。マニュアル化って言うと画一化という面もあるけど、ノウハウなどの暗黙知を形式知に変えると言い換えてもいいと思う。非常に労力を要する部分だけど、それをなおざりにしがちでいつしか失われてしまうことが良くあるんだ。
(2)イノベーションサイクルを継続する共有システムと意識のレベルアップが必要だ。常にイノベーションを意識するというのは、トップから各担当者まで問題意識が浸透している必要があるから、マネジメントのポイントにしなければいけない。
(3)そして、これらのシステムを統合したトータルマネジメントシステムとでも呼ぶ融合が必要だと思う。ナレッジマネジメントとコミュニケーションシステムの融合をして、日常的な業務プロセスに落とし込む必要がある」
「ジン。言いたいことは大体わかるけど、それは、俺たちだからじゃないか。もう少し、具体的に整理しないとわかりづらい」
「やっぱりそうか。まだまだだな。この辺を分かりやすく出来ればいいんだな。週末の課題にするよ、ありがとう」
「私も一度書き出して整理してみるわね。週末のレジメを送っておいてね」
「了解。さあ、日本酒に戻るか」
「賛成!」
(続く)
《1Point》
・ラグビーの4つの原理
(1)前進:個人ではなく組織の前進である
(2)サポート:チェックをし、準備をする
(3)継続:止まっているプレーは後退である
(4)プレッシャー:主導権は相手にある
継続についての続編となります。
雄二が言っているように、ちょっと咀嚼が足りないですね。もう少し、シンプルになるように頑張ります。
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