居酒屋で経営知識

(11):4つの原理(3)継続

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

 今日は、みやびで週末に予定しているラグビースタイルマネジメントの予習をしている。ジン、雄二、由美がカウンターでビールを飲みながらの勉強会だ。

「ジンさん。酔ってしまう前にあと二つね。次は、えっと・・・」

「前進・サポートときたから、次は継続、そしてプレッシャーだね」

「継続か。うーん、そういえば、企業の前提としてゴーイングコンサーン(going concern)というのがあったな」

「雄二の言うとおり。企業にとって、継続し続けることはすべての計画の前提であり、顧客や社会への責任としても継続するということは重要だよな」

「そうだったわ。継続ね」

「とりあえず、ラグビー自体に戻って、継続とは何かと考えてみるね。まず、止まってしまうと言うことは敵に押されてしまうことになるし、もちろんより有利な状況を作り出すためにもボールを動かし続けることが重要になる」

「ラグビーは陣取り合戦という言い方をしてたよな。そうなると、継続して前進し続けることが大事という訳か」

「そうだな。それに加えて、絶えずチーム力の向上を継続することという視点も必要だ。実力を発揮して目標を達成するためには、常にライバルを上回るチーム力向上が必要だ」

「そうね。試合中は現場対応の駆け引きになるから、そのための実力は普段の練習で培われるというのは、どんなスポーツでも一緒よね」

「もちろん。そして、もう一段の視点をもってみよう。そのチームが存続するためのマネジメントが必要だ。例えば、メンバーが自分の役割に専念し、強みを強化することが出来る環境を作ることやリスクへの対処法をあらかじめ検討しておくことも重要だね。ラグビーでは、怪我で主力選手を使えないということを考えておくことが必須条件だ」

「確かに、ゴーイングコンサーンもそうだが、ラグビーの原理としては、継続というのはよくわかるような気がするな。しかし、どうやって継続し続けるのかというのは難しそうだ」

「おお。さすが経営者だな。それじゃ、企業における継続を同じような3つのレベルで考えてみるね。

まず、ゲームレベルで言えば、業務フローを継続することだよね。そのためにどうするか。

(1)業務プロセスを明確にする
(2)業務の状況が誰にでもわかるようにする
(3)目標と成果がリンクして評価される

という3つの視点を考えているんだ。これでいいのかどうかはみんなの意見をもらいたいんだけどね。

まず、(1)業務プロセスを明確にする、ためにすべきことは、
・仕事の流れをマニュアル化する
・役割・責任を明確にする

くらいの行動指針を考えているんだ。マニュアル化というのは、プロセスを明らかにして、ノウハウなどになっている暗黙知を形式知化するということにもなるよね。その実行のための、役割・責任の明確化は絶対条件だ。

次に、(2)業務の状況が誰にでもわかるようにする、ことが必要だ。そのためには、

・日常の業務がそのまま記録される
・日常の継続が業務のナレッジとして蓄積する

とういように考えているけど、チームメンバーの共有のためには、一々報告書として書き換えたり、共有のための余計なまとめをなくす必要があると思っている。
通常に、例えば、スケジューリングして、行動し、その結果と状況がそのまま分かりやすく共有されるというイメージを考えている。最近のグループウェアはそれを目指しているものも増えているかもしれないね。

最後に、(3)目標と成果がリンクして評価される、だ。

これは、
・プロセス毎の目標が明確になっている
・プロセス毎に評価できるシステムとなっている

としているけど、目標の明確化と評価システムがリンスすることが必要だと思うんだ」

「前進とか、サポートなんかより、地味な原理だと思ったけど、結構やるべきことが多そうだな」

「継続というのは、まさに日々のシステムをどうするかだから、より細かな検討が必要だと思うんだ。企業の強みの基盤づくりだとも言えるかな」

 頃合いを見計らうように、大将がやってきた。

「話が盛り上がっているようですが、焼き空豆なんていかがですか」

「大将。そりゃ、すぐ出してもらわなきゃ。ビールお代わり」

「じゃあ、同じく」

「大丈夫かなあ。継続の話って、まだ続くんでしょ?」

「由美。継続の話が継続してるって言いたかったんじゃないのか」

「そんな、オヤジギャグなんて考えてないわよ」

「どうだか。由美もオヤジ化しているんじゃないのか」

「鳶野さんに言われたくないわよ」

 うーん、そろそろ飲みながらの勉強会は限界かなあ。

(続く)


《1Point》
・ラグビーの4つの原理

(1)前進:個人ではなく組織の前進である
(2)サポート:チェックをし、準備をする
(3)継続:止まっているプレーは後退である
(4)プレッシャー:主導権は相手にある

 継続については、日常の活動と明確にリンクしやすいので、私の手元でも結構詳細な形になっています。

 そのせいで、今回は3つのレベルのうち、一つ目で目標行数に近づいてしまいました。

 長くなってもますますわかりづらいので、次のレベルは来週にしました。