居酒屋で経営知識

48.経営者の条件(1)

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「へい。いらっしゃい。皆さんおそろいですね」

「大将。花見ですよ」

「これからですか?」

「そんな訳無いでしょ。花を見ながらそぞろ歩きしてきましたので、花見は十分です。まあ、花より人出の方がすごかったですけどね」

「ジンさん。この人数なら小上がりにしますか」

「そうですね。たまにはテーブルを囲むのもいいですね。原島さん、いいですね?」

「おお、もちろんだ。あ、大将。うちの新入社員で、関と小島です」

「そうですか。4月ですからねえ。春だねえ。関君と小島君、いい会社に入ったね。原島社長によーく教えてもらいなよ」

「はい。ありがとうございます」

「実は、彼らは高校の後輩なんですよ。ということは、北野や鳶野にとっても後輩ですね。縁故じゃ無いかって疑われましたがね。人間で選んだら2人が残ったんです」

「へえー。そりゃすごい。もしかして、ラグビー部じゃ無いんですか?」

「残念ながら。そこまでになると言い訳が難しいですね。関が野球で、小島がサッカーだったよな」

「はい!」

「元気がいいねえ。さあ、小上がりに上がってください。亜海。注文聞いて」

「はーい」

「あれ。そういえば、亜海は今年4年生かい?」

「そうでーす。今年は就活デース。原島社長。よろしくお願いしまーす」

「原島さん。本気でお願いしますよ」

「さすがに、私は最終面接まで口を出せないけど、是非応募してみてよ」

「はい」

「お、いきなり就活生らしくなったなあ。大将もそろそろ悩み時ですね」

「ジンさん。そうなんだよ。亜海のように毎日出てくれるバイトなんて探せないからねえ。あ、申し訳ない。飲み物言ってください」

 原島さんの会社に高校の後輩が入ったというので、雄二と連絡してみたら、原島さんから誘われ、さっそく後輩を連れて来たという訳だ。

「それじゃ、関君、小島君。これから一緒に頑張ろうな。まずは、乾杯!」

「よろしくお願いします。カンパーイ」

「うまい!あ、ところで、北野と鳶野に頼んだ中堅幹部向けの研修だけどテキストはドラッカーで良かったんだよな」

「ええ、そうです。まずは、『経営者の条件』を読んできてもらって、読書会形式でやろうかと思っています。後で、第1回目の事前準備についてメール入れますよ」

「頼む」

「北野さん。そのドラッカーって言うのは、もしドラのドラッカーですか?」

「関君、その通りだよ。よく知っていたね」

「大学の時に周りで流行っていたのでさっそく読んだんです」

「もしドラって何の略でした?そういえば、ジンさんと由美さんの会話でも良く出てましたよね」

 亜海ちゃんがビールのお代わりを持ってきながら興味津々の顔つきだ。

「えっと、もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら、だったですかね」

「その通り。ドラッカーは、他に知っている?」

「実は読んでないんです。経営者の条件っていうのは新入社員が読んでも仕方が無いですね」

「関君。そんなことは無いよ。ドラッカーは、どちらかというと人間を磨くことに視点を置いているので、新入社員でも経営者のマネジメントについて学ぶことができるよ」

「そうなんですか?でも、マネジメントって、される方ですよね」

「ドラッカーは、マネジメントすべき対象をまずは自分であると言っているんだ。この本のまえがきにあったはずだけど、成果をあげるために自らをマネジメントする方法について書いたと言ってるんだ。自分をマネジメントできない人間が部下や同僚をマネジメントできるはずが無いとまで言ってるんだ」

「うわー。ますます、大変そうですね。でも、読んでみたいです」

「北野。もし良かったら、中堅幹部に限らず、新入社員にも声をかけていいだろうか」

「今年の新入社員は何人入ったんでしたっけ?」

「15人だよ」

「そうですか。社会人経験者といきなりやるのは難しいでしょうから、中堅幹部とは別の会でやってみましょう。中堅幹部での意見の要点をまとめて、新入社員に読ませてみるのもいいかもしれないし、逆に、新入社員の感想を中堅幹部に伝える形も面白いかもしれません」

「それはいい。是非頼むよ」

 新年度は、原島さんの会社の研修が中心になりそうだ。

(続く)


《1Point》
「経営者の条件」ドラッカー名著集1 上田惇生訳 ダイヤモンド社
http://amzn.to/rXd8ai

 ドラッカーの言葉と並行してしまいますが、新たな試みとして、ドラッカーの著書を中心に進めていきます。

 先ほど、Amazonのリンクを作ってみるとKindle版で電子書籍化しているんですね。電子書籍で読んでみるのもいいかもしれません。