居酒屋で経営知識

49.経営者の条件(2)八つの習慣

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「へい。いらっしゃい。毎度」

 雄二と共にカウンターに収まる。

「ジンさん、鳶野さん、生で~す」

「亜海の速攻生ビールも板についてきたな」

「早くしないと鳶野さんにどやされますから」

「どやされるとは人聞きの悪いことを。急かした、くらいだろ」

「雄二は気が短いからそう聞こえるんだよ。ね、亜海ちゃん」

「またもや、ジンはいい人か」

 亜海ちゃんの速攻ビールで乾杯し、今日の目的でもある原島さんの会社でのドラッカー読書会の話に移った。

「ところでジン。今回は読書会というけど、読書ったって、みんなで音読しあうわけじゃ無いだろう」

「もちろん、読むのは各自事前にやることだよ。ただ、基本的に一人ひとりに対象の範囲で、自分が一番気になったり、そうだ!と思った場所に印をつけて、当日は、その部分を示して、なぜ、そう感じたのかを発表すると言う形で行うんだ」

「それだけか?何か、あっけないなあ」

「人がどの部分でどう感じたかとか、それにつながる体験があったと言う話は、ひとりで読んだ時とは違う気づきを得られるんだ。それを聞くだけでも深く考えることができるようになる。たとえば、同じ場所の同じ言葉でも、全く違って受け取っている人もいることがわかったりすることもある」

「なるほど。今回の『経営者の条件』は俺も前にジンに勧められて読んだけど、また読み返してみたよ」

「お、偉い。どうだった?」

「そうだな。前に読んだ時は会社を立ち上げる前だったからかもしれないが、結構細かいことを考えるんだなあと思っていたんだ。でも、今回は一つ一つが身に染みる気がする。特に、成果という部分にこだわるのがよくわかるところだ」

「なるほど。この本は、ポイントが明確なので、大体一つの章で1回やろうかなと思っているんだ。原島さんにも、次回は序章の『成果をあげるには』を宿題として送ってあるんで、雄二ももう一度序章を読み返して、一番気になるとか、これが重要だと思うところをピックアップしておいてくれ」

「了解。でも、序章は八つの習慣を説明しているところだよな。ここで、一つ取り上げると言うのも難しそうだな」

「確かにそうだけど、逆に、具体的ゆえに実際どういうことをするのか、立場によって受け取り方が違うかもしれない。それぞれの考え方のギャップも興味深いぞ」

「なるほど。実は、今日持って歩いているんだ。これだよな。

(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
(3)アクションプランをつくる
(4)意思決定を行う
(5)コミュニケーションを行う
(6)機会に焦点を合わせる
(7)会議の生産性をあげる
(8)『私は』でなく『われわれは』を考える

「そして、雄二としてはどこに特に興味を持った?」

「うーん。確かに、実践としての八つの習慣だが、その前段として成果をあげる人は、カリスマ性などのいわゆるリーダータイプではないというのが一番ガツンときたかな。トップマネジメントと言えば、カリスマとまでいかなくても、何らかのリーダーシップが強いと思っていたからな」

「なるほど。カリスマ性を持たないという言い方で、出てきた例がトルーマン大統領だったり、GEのジャック・ウェルチというのが面白いよな。ウェルチなどは、カリスマというイメージがあるが、ドラッカーに言わせると違うということになる」

「でも、よく読んでいるともしかしたらそうかもしれないと感じてきた。たとえば、アップルをあそこまでにしたスティーブ・ジョブズなどは、カリスマだと言って反対する人は少ないかもしれないが、彼も手を抜かずになされるべきこと、アップルという組織として行うことを徹底したと言うことなのかもしれない。ドラッカーの言い方を借りると、この八つの習慣を身につけることで誰でもジョブズになり得るということなんだ」

「うん。雄二も企業家としてジョブズにも劣らない成果をあげることができるとはっきり言っているのが、この経営者の条件だ。だから、最初の一冊としても、座右の書としてもいい本だと思うんだ」

「確かに、読めば読むほど自分の曖昧さに気づかせてくれる本だな。この八つの習慣だけでも毎日見直す必要があるかもしれない」

「次回はいきなり八つの習慣だから、時間が足りないかもしれないな。2回に分けることも考えないといけないな」

 旬の生シラスをつまみながら、自分の習慣としてできているのか、改めて考え直して見た。確かに、深いテーマだ。

(続く)


《1Point》
「経営者の条件」ドラッカー名著集1 上田惇生訳 ダイヤモンド

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 序章で、いきなり成果をあげるための具体的なポイントが書かれています。初めて読む時には、サラッと流しがちですが、クライマックスが最初に来ていると言ってもいいかもしれません。

 私自身、何度も読み返し、具体的な内容に置き換えてみましたが、簡単では無いとうのが実感です。

 トップマネジメントなら、すべてを実行することになりますが、組織のメンバーであれば、1人ですべてできるものでもありません。しかし、トップへの要求として必要かもしれません。

 特に、(7)会議の生産性については、実際に高い生産性をあげる運営というのは非常に難しいですね。実は、これこそが、トップが本気で取り組まなければいけないことかもしれません。

 他の行動は、それぞれの立場・役割の中で成果をあげるために習慣化できますが、会議は主催者が多岐に亘り、それぞれに確実に時間を取られることになりますから。