居酒屋で経営知識

25.経営情報システムについて

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「へい、いらっしゃい。ジンさん、毎度」

 ほぼ満席だ。仕事帰りの会社員の天下になっている。

「大将、忙しそうですね」

「うれしい悲鳴ですよ。送別会とか、歓迎会が多いみたいですよ」

「ああ、なるほど。結構、この時期での異動も多いみたいですからね。春より転勤者が多いのかもしれません」

「ジン、そんなところに突っ立ってると邪魔になるぞ」

「雄二も早かったな」

 久しぶりに雄二が飲もうというメールを送ってきていた。

「はーい。ジンさんの生と鳶野さんのハイボールね」

「え!雄二、いつからハイボールなんて飲むようになった?」

「たまにいいだろ。うちの若い奴らが盛んに頼むんで、時々付き合ってたら口に合ってきた」

「まあ、最近のハイボールって酎ハイみたいなもんだからな」

「そう言われればそうだ。ジョッキで出るせいかもな」

「そういえば、久しぶりだな。乾杯・・・・経営は順調か?」

「おお。世の中の流れがポジティブになりつつあるからな。この辺で、ステップアップしていこうと思っている」

「うん。攻める手を緩めないことだな」

「そのつもりだ。社内インフラも大がかりに更新しようと思ってる。段階的に新しいソフトを導入したりしていて増築を繰り返した老舗の温泉宿みたいになっていたんでな」

「確かにそれは言えるな。従業員の負担になるようなシステムは思い切ってゼロから変えるくらいの思い切りも必要だ。根本的なリフォームをしてしまうことだな」

「俺も、診断士の試験のために経営情報システムの勉強はしたつもりだったけど、あれは割と古い基幹システム中心だったから、最新情報にはついて行ってないんだ」

「それは言えてる。でも、最近少しは変わってきたみたいだぞ」

「ん?1次試験では得点の稼ぎ頭科目だったけどな。そういえば、そろそろ2次試験が近づいてきたから、2次対策の直前研修やるんだろ?」

「そうなんだ。原島さんからもいろいろ要求が来ている。それで、今年の1次試験をざっと見てるんだ。これまでは、経営情報システム関係で2次に必要な情報というのはシステム名くらいしかないのであまり気にしていなかったんだけど、ちょっと気になる傾向はあったな」

「え、そうだったか?今までも、ネットワーク層とか、データベース関係の統計、セキュリティくらいが注意点だったけどな」

「そういう意味では、これまでもよく見てはいなかったんだけど、今年の問題だけみると、スマートフォンとかタブレット、SNS、ビックデータ、クラウドサービスなどキーワードは追いつこうとしている気配があったようだ」

「なーるほど。もしかすると、顧客情報システムなどで、スマホとクラウドを使ったシステムの提案なんかが使える問題が出るかもな」

「その可能性も無くはないな。とはいえ、その程度なら対策としてはそれほど負担はないだろうな。次の研修に参考として入れてみるか」

「中小企業にとって、クラウドとか、ソーシャルメディアを使うというのは、実は大きなチャンスだと思うんだ。その辺を中小企業庁も考えているのかもしれないな」

「確かに。日本ではまだ、ITという言葉が主流で、何となく、情報を扱うシステムという感覚だけど、アメリカなどではBusiness Technologyを略して、BTというのが普通だという話も聞いたよ。つまり、ビジネスと情報インフラの融合が当たり前の時代が来ているとでも言うのか、とにかく、システムがあればいい時代から、ビジネスの根幹に関わる部分を担う時代となっているんだろうな」

「そうだろうな。システムはある。でも、それをどう使っていくかで差がつくという当たり前の時代になってきている。大企業ほど遅れる可能性があるんじゃ無いかと思いつつあるんだ」

「つまり、中小企業が大企業と戦えるインフラがすでにあるということか?」

「たぶんな。これからは、大企業と中小企業という枠組みでの構図が崩れるんじゃないか。単に、ベンチャー企業が世界の主導権を握るような大企業になるという成功物語だけではなく、大企業になる必要もなくなるかもしれない」

「結構、深い話になってきたな。マイクロソフト、アップル、グーグルというようなベンチャーから巨大企業という方向性が目指す方向ではなくなるということかな」

「ここで予言をしていても仕方がないが、目指す成果が曖昧になるような大企業化は間違いなんじゃないかと中小企業の社長の俺は思うんだ」

「なるほど。それは一つの考え方かもしれない。企業の適正規模というのがあると思うけど、その適正規模自体が必要条件ではなくなってきたかもしれないな」

(続く)


《1Point》

 曖昧な話になってしまいましたが、確かに、今年の中小企業診断士1次試験の「経営情報システム」では、いくつかのキーワードが出ています。

「スマートフォン、パソコン、メインフレームなど多様な情報機器を有効に連携させてビジネスに利用するケースが増えてきた。」(第3問)

「個人所有のスマートフォンやタブレットを社内業務に利用する場合」(第12問)

「SNS などの発達によってソーシャルメディアは、個人間の私的な情報交換に利用されるだけでなく、ビジネスでも多様に利用されつつある。」(第14問)

「ビッグデータ活用」(第15問)

「クラウドサービスの活用」(第16問)

 2次試験で、これらのキーワード自体を問われることは少ないと思いますが、対策として使える内容になる可能性はあります。

 それぞれ、営業情報システムなどとの連携という視点などから整理しておくのもいいと思います。