居酒屋で経営知識

26.2次試験対策講座(1)

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「それでは直前対策のまとめに入りたいと思います」

 休日のみやびを使わせてもらった診断士の試験対策講義も最後の回となった。

「ここまできたら自分の解答方法は身についていると思います。そのやり方を変えずに、自信を持って当日に臨んでください。筆記用具、時計、電卓については、予備を持つつもりで準備してくださいね。当日はとにかく焦ってしまうことが一番の敵ですので、いつものやり方を維持するために不安要素は必ず潰しておいてください。

そして、

(1)事例文で素直にSWOT分析を行い、経営環境を分析します。
(2)設問文とあわせて戦略ドメインを書き出すのがお薦めです。
(3)特に、市場細分化と製品差別化の視点でざっと見てみることもお薦めです。

もちろん、皆さんのやり方を変える必要はありません。ただし、(1)のSWOT分析は必須ですよね。この時、抽出したSWOTの項目をすべて意識する必要がありますので、必ず目立つようにしておいてください。

(2)の戦略ドメインですが、私のやり方は、誰に(Who・顧客)、何を(What・顧客ニーズ、製品、サービス)、どのように(How・
独自能力)を文章でなく単語で一番目立つところに書き出しておきました。

(3)の市場細分化とは、誰に、の部分について、今のターゲットとしている顧客にギャップはないのかという視点で見直すために、切り口を変えてみるということです。また、製品差別化は事例文か、設問文から読み取れる顧客ニーズもしくは、経営者の考え方から見つけることが出来る場合があります。

特に、経営者の「思い」が書かれていた場合は、その「思い」は必ず中心的な解答に関連します。一番目立つようにしておきましょう。

戦略ドメインは、事例文の書き方によっては、現在のドメインと目指すべきドメインの両方がわかる場合があります。その場合は、解答のテーマは、目指すべきドメインですので、対策を書く設問では、目指すべきドメインに対する現在の課題をギャップと捉えて、明確に書くことが重要ですね。

もう一つ、今後に与える影響については、短期的な視点と長期的な視点の両面で考え、また、解答に反映することを考えてください。

全般的なことで気になる点は他にありますか?」

 さすがに、ほとんどみんなから手が上がった。

「北野先生は、1次試験から経営情報システムの内容についても要注意とありましたが、どのあたりを気をつければいいんでしょうか」

「ERPパッケージなどは名前を使えれば大丈夫だと思いますが、経営情報システムを取り入れる目的を明確にしておくことでしょうか。つまり、
(1)顧客との関係性強化
(2)業務効率の向上
(3)情報の集積と活用
が目的の項目になります。

これまでも良く出て来たのは、受注生産型やメンテナンス対応において、顧客・営業・設計・製造・調達といった離れた部門間での課題に対し、システムを利用して対策とすると言うようなものです。

これらの具体的な例として、クラウドの活用やスマホ・タブレットによるリアルタイム対応などを書くということが考えられます。

あまり、無理をせず、関係性強化なのか、効率向上なのか、情報活用なのかを使って説明すれば問題ないと思います」

「過去問を解いていて時々悩むのですが、対策というのはやっぱり積極策がよりいいのでしょうか?」

「それは、売上か、利益かという質問でしょうかね。それは、私も経験があります。対策が何案か考えられるような設問の場合、積極策か消極策か悩みますね。事例と設問によりますが、一つの見方としては、出されている問題点(対策すべき課題)が売上アップであれば、積極策をとり、利益であれば、コスト削減などのどちらかというと消極策を取ると考えればいいと思います」

「リスクが示されることが多いですが、複数のリスクが出ているとどのリスクを重要視すればいいのか迷ってしまうのですが」

「たぶん、素直に見ると設問などで絞り込めるようになっていると思いますが、例えば、最も重要なリスクを取り上げ対策を考えよ、などという設問だった場合は、『顧客の信用を失うリスク』をもっとも重要と考えればいいと思います。具体的には、品質や納期について、顧客の要求を満たせないものがあれば顧客の信用を失う最大のリスクを見つけることが出来ると思います。そこに対策を絞り込めばいいと思います」

「受験指導校などでも自分の切り口を複数持てという指導をしているようです。北野先生は、どんな切り口で考えていましたか?」

「割とオーソドックスなものばかりです。例えば、
・P-D-C-A
・E-C-R-S
・3C
・人・モノ・カネ・情報・ノウハウ
・3S
などです。これらはわかりますよね」

(次回へ続く)


《1Point》
 最後のローマ字用語のみ念のため解説を入れます。

・P-D-C-A
 Pは(Plan)、つまり計画ですね。どんな改善をするのか。
 Dは(Do)で実行です。計画に基づいて実行してみる。
 Cは(Check)、実行の結果を検証します。
 Aは(Actin)、やり方の改善を行う。

・E-C-R-S(排除-統合-プロセス変更-単純化)
 Eは(Eliminate)、止める、排除することが出来ないか。
 Cは(Combine)、2つのステップを統合することにより効率化できないか。
 Rは(Rearrange)、順序を変更できないか。
 Sは(Simplify)、単純化できないか。

・3C
 顧客(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)

・3S
 標準化(Standardization):繰り返し行う業務等を標準化する
 単純化(Simplification):業務を単純化する
 専門化(Specialization):特定の機能に特化する