居酒屋で経営知識
120.独学診断士2次試験
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。 新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士
「へい、いらっしゃい。毎度」
「生よろしく」
「はーい。おまちどおさま」
エビスの生を飲みながら、桜の開花情報チェックをしてみた。
「やっぱり、今週末が花見のピークですね。今年は入学式までもたないようですね」
「今年は寒い寒いって言ってましたが、早かったですからね」
「て、ことは、今週末の講座の後に軽く花見をしましょうかね」
「あ、それはいいですね。それなら由美っペとお花見弁当でも作りましょう」
「それはありがたいです。裏の川岸の公園ならなんとか場所取りせずにいけそうでしたよね」
「あそこは穴場ですよ。近所の人しかきませんから」
「じゃあ、講座の資料の確認をしておかなければ。花見の時間も考えて、と」
「ジンさん。いい話を聞いちゃった。お花見するなら、私も参加していいですか?」
「もちろん。亜海ちゃんも診断士に挑戦するって言ってたよね。たぶん、来年の挑戦だろうけど講座にオブザーバーで出てもいいよ」
「うれしい。じゃあ、予習しなくちゃ。今週は何をするんですか?」
「まだ、心構えと学習方法の確認なんだけど、少し、2次試験対策も話そうかと思ってるんだ」
「診断士の2次試験って難しそうですよね」
「一番難しいって思わせているのは、明確な正解が示されないからかもしれないね。財務会計の問題で、数字を出す場合と時々戦略名などの知識問題が出たときくらいは、各受験指導校の回答が同じになるけど、通常は方向性さえ違う模範解答が出たりするからね」
「受験指導校によって違った模範解答ですか?それじゃあ、どの学校に入るかで合否が決まってしまうんじゃないですか?」
「それもわからないけどね。だから、唯一の手がかりは合格者の再現回答になるんだ」
「再現回答って、後から思い出して作るってことですか?」
「そういうこと。みんな、問題用紙などに下書きやキーワード、印などを付けるから、それを見ながら、自分でどんな回答を書いたか思い出しながら書いてもらうんだ。受験指導校では、それを集めるためにいろいろなイベントやサービスをしたりしているようだね」
「ふーん。それで、分析をして正解に近づけるって訳ね」
「それでも、合格者の再現答案がみんな同じような書き方ならいいけど、実際に全く違った内容の回答をしていたり、中には、まともに書けなかった問題があっても合格したりと様々なんだ」
「それじゃあ、やっぱり何を信じて勉強をすればいいのかわからないわ」
「手がかりはあるよ。まずは、なんと言っても、最後の問題は財務会計関係になるんだけど、ここだけは知識と計算問題の比率が高いので確実に点数を取るためにも注力する必要があるんだ」
「計算問題って数学の試験問題みたいね」
「財務諸表分析や割引計算なんかは必須だね。キャッシュフローの計算も結構何度も出ているんだ。だから、1次試験では禁止だけど、2次試験では電卓が必須なんだ」
「そうなんだ。やっぱり大変そうね。でも、後の問題は違ってくるのね」
「自分が勉強してきて思うのは、どうしても国語の問題に近いと言うことなんだ。すべての与件は文章や表などで提供され、回答は決められた文字数の範囲で論理的に書かなければいけない。つまり、読解力と作文力の向上というのはどうしても避けて通れないと思うんだ。もちろん、ベースは経営者へのアドバイスという中身がなければ元も子もないけど」
「国語は苦手かも。今更、国語の勉強をする訳にもいかないわ」
「もちろんそうさ。一番なのは慣れかな。そのためには、過去問を何度も試験と同じ時間でやるということが絶対に必要だね。大体、ちゃんと与件文を読んで、設問の意図を把握し、文章にするという作業をすると80分という時間では厳しいんだ。つまり、時間配分が重要だし、余計なことで時間を取られないという受験テクニックも必要なんだ。合格率が低いのはこの辺も重要なポイントなんだとおもうな」
「そうよね。単に感想文を書く訳じゃないし、それでも、文字数に制限があると言うのは書き慣れていないと難しいわね。短く書けば大丈夫なのかしら」
「よく言われているのは、文字数が少ないと減点の対象になっているから、なるべくギリギリまで書くということなんだ。でも、正直言って、必要なキーワードや理論の一貫性があれば、大丈夫だと思っているんだ。自分が調べた合格者の再現答案でも、随分文字数が少ない回答もあったからね。きっと、冗長な意味のない文章を書いても同じだと思うね」
「それはそうよね。少なくとも経営についての課題に対して書いている訳だから、文章がうまいとか文字数がぴったりとかで評価されたらたまらないわ」
「ま、そういうこと。だから、まずは、コンサルタントとして文章で表現されている経営者などの思いや創業からの企業理念などを押さえる、現状と将来のギャップを見つける、という基本姿勢が重要なんだ。そして、それを規定時間に把握し、書ききる最低限のテクニックを身につけるということが受験勉強の目標だ」
「大変そうだけど、経営者の思いとか企業理念を読むのも楽しそうね」
「ふーん。そう考える亜海ちゃんは、もしかするとコンサルタント向きかもしれないな」
「ええー!嬉しいな。勉強したくなってきたわ」
「今更ながらだけど、大学は入りたててアルバイトに来たときとは、話し方から随分変わったよね」
「うん、そうかも。就活のための勉強も結構役立ってるかもしれないわ」
(続く)
《1Point》
今回、再現答案について書いていますが、私も合格したときの再現答案を作成しています。
ホームページに、その時の問題と私の再現答案を載せていますので、興味のある方はダウンロード(PDFファイル)してみてください。
正直言って、事例1で完全にミスったと思い、不合格の再現答案として、誰かに見てもらおうと思った記憶があります。
私の再現答案
→http://bit.ly/135AoGh
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