居酒屋で経営知識

121.独学診断士2次試験(口述)

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

「へい、いらっしゃい。毎度」

「桜がすごいですね。川の方は随分散り始めてますが、商店街の入り口は満開でしたよ」

「毎年、あの桜が遅れてくれるんで、商店街に人を呼ぶって言われてますからね」

「桜のイメージが消えないうちに花見酒の樽酒ください」

「あいよっ。あ、そういえば大山商店の息子がジンさんが顔を出したら連絡くれって言ってましたっけ。連絡してもいいですか?」

「ええ、いいですよ。そういえば、今日はメール確認していなかった。あ、来てました」

「ジンさんは、結構電子機器得意なのに、メールはあんまり好きじゃないって由美っペが言ってましたね」

「そんなこともないんですが、基本的にメールは確認する時間を決めているんで、それ以外には見ないんですよ。メールを気にしていると自分の仕事ができなくなってしまいますからね」

「なーるほど。確かに、最近のお客さんは、一緒に来ている友人達がいるのに、みんなそれぞれ携帯とかスマホを凝視していたりしますからね。時々、異様な集団に見えるときがありますよ」

「飲み屋でもですか・・・急ぎなら電話をくれというのがうちの決め事なんで、メールは参考資料として必要なモノだけですね」

「あ、それじゃ、電話しておきますね」

「すいません」

 しばらく、樽酒で花見話が続いた。

「いらっしゃい」

「大将。ありがとうございました」

 大山君がやってきた。

「ジンさん。まだ、1次も通ってない段階ですが、試験スケジュールが発表されていたので眺めていたら、2次試験に筆記試験と口述試験ってあったんです。口述試験ってどんな試験なんですか?」

「確かに気が早いね。そうなんだ。2次試験って、筆記試験に合格しても、もう一段階口述試験を突破しないと最終合格にはならないんだよ」

「うわー。口述試験なんて、難しそうだなあ」

「ははは。大丈夫だよ。まあ、いろんな話があるけど、基本的に落とす試験じゃないんだ。例年受験者の1名とか、2名程度の不合格者が出るくらいだよ」

「え?そうなんですか。でも、不合格になる人もいるんですよね」

「最近聞いた不合格の理由は、欠席がほとんどらしいよ。何かの都合で受験できなかったんだと思うけど、普通に受けて不合格になったという例は、何年も前になるけど、ほとんど口を開くことが出来なかったとか、かなあ」

「ちょっと安心しました。でも、どんな試験なんですか?」

「試験時間自体は一人10分で、基本的には筆記の事例から取り上げて、質問に答えるというものだったね。ただ、気をつける点として当日言われたことでは、ノックをしてどうぞと言われてから入る、挨拶をする、お座りくださいと言われてから座るというような非常に基本的なことだったよ。だから、この試験自体は、最低限の常識とコンサルとして相手と会話が出来ると言う点を一応チェックするというモノなんじゃないかと思うよ」

「そうですか。じゃあ、特に事前準備は必要ないんですね」

「とはいえ、万全を期した方がいいから、受験指導校で行っている予行演習をやってみると良いと思うよ。自分の時は、1000円で形は本番と同じようにやってくれて、講評として注意点を言ってくれるのでよかったと思うんだ」

「そうします。まずは、そこに到達することが大変ですが」

「そういえば、自分の時の質問は、事例1と事例2について3人の試験官から順番にされたなあ」

「あ、それじゃあ、事例は覚えておいた方がいいんですね」

「そのためにも再現答案を作っておいて、試験の復習はしておいた方がいいね。試験から二ヶ月くらい後になるから、忘れていると焦ってしまうからね。ただ、質問の前に、簡単に事例の説明はあるから、ある程度復習しておけば思い出すとは思うけどね」

「筆記の時の設問と同じことを聞かれるんですか?」

「いや・・・同じではなかったな。設問では直接聞かれていなかった点について、例えば、そんな状況になったのはなぜかとか、具体的な対策案が考えられるかという内容だったような気がする」

「ちなみに、間違った回答をしても大丈夫なんですか?」

「まあ、普通に答えて落ちた人はいないというのだから大丈夫だと思うよ。自分の時も、コストについての質問があって、後で考えるとコストが安くなるという状況だったのに、コストは高いと答えたんだ。その時は、再度念押しをされたから、状況によっては誘導してくれるのかもしれないね。でも、俺は、そうですと押し切ったけど」

「ありがとうございました。余計な心配なんですけど、気になってしまって」

「心配事は最低限にしておいた方がいいからね。どう、一杯飲んでく?」

「いえ。大将には申し訳ないですが、やっぱり勉強します」

「頑張って、思う存分飲めるようになってきてくださいよ。それまで、うまい酒を集めておきますから」

「はい。ありがとうございます。それじゃ、失礼します」

 彼もやってくれるだろう。

「大将。じゃあ、大山君の合格を祈って、もう一杯いきます」

(続く)


《1Point》
 口述試験については、今から心配することはありませんが、私の対応と当日の状況、質問内容と私の回答再現をホームページに残してあります。

 筆記試験が終わってからで良いと思いますが、興味があったら眺めておいてください。

http://bit.ly/RipQhK