居酒屋で経営知識
51.八つの習慣(2)
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
雄二の経営者としての悩み相談に対し、まずは、ドラッカーの「経営者の条件」の冒頭の自らをマネジメントする方法を引いて話を始めた。
「ちょっと待て、やっぱり紙に書く。真摯な姿勢がないと言われちまうからな」
雄二が手帳を出したので、もう一度読み上げた。
(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
(3)アクションプランをつくる
(4)意思決定を行う
(5)コミュニケーションを行う
(6)機会に焦点を合わせる
(7)会議の生産性をあげる
(8)「私は」でなく「われわれは」を考える
「まあ、普通の言葉だな。これで、俺は変われるんだろうか」
「お前はお前。変わることはないだろう。ただ、経営者として、リーダーとして成果をあげるために習慣化することだと言っている」
「なされるべきことを考える、というのは、当然だからこれはOKだな」
「そうか?何をしたいかじゃなくて、今なされるべきこと、つまり、自分の会社にとって得意なことだろう。でも、一番難しいのは、たぶん、なされるべきことと考えるとたくさんあると言うことだ。あの仕事も、この決定も、改善も、そして、日々の数々の対応や処理。どれも会社にとって重要だし、なされるべきことに思えるはずだよな」
「そこだ。そこが日々の苦労だ。じゃあ、なされるべきことを考えれば考えるほど、悩むだけじゃないか」
「悩むことは大事だけど、挙がってきたなされるべきことに優先順位をつけることが重要なんだ。ドラッカーは一つに絞って、集中しろと言っている」
「え?一つだけか」
「そうだ。目の前についてもそうだし、将来についても同じだ。GEのジャックウェルチの例を挙げている。ウェルチは、自分がしたかった海外展開ではなく、世界一もしくは2位になる望みのない事業から撤退することが、なされるべきことだと知り、実行した」
「おお、有名な話だな」
「あれは、ドラッカーのコンサルによるものらしい。そして、更にウェルチは優先課題のうち、自らが得意なものだけを取り上げ、それ以外については、他のトップマネジメントに任せたんだ」
「まずは、なされるべきことを考えて、抽出し、優先順位をつける。その一番なされるべきことに集中する。他については、任せるということか・・・もっと、任せなければいけないのか・・」
「そして、(2)の組織のことを考える、だ。出資者や従業員のために良いことではない。組織にとって良いことだけが、最終的に出資者や従業員のためになる。雄二の一番信頼できる総務・人事部長を昇進させたいかもしれないが、組織にとって、営業部長を上げるべきなのかもしれないというような考え方だ」
「くそ。ジンに読まれていたか。そうなんだ。今、重要なのは営業の強化で、その先陣に立ってやってるのが営業部長だ。確かに力はあるが、個人的に心配だ」
「人を見る目は必要だ。でも、それが、組織にとってどうなのか、であって、社長にとって使いやすいかどうかじゃないぞ。彼を上げることによって、従業員にも社長の方針が明確になるんじゃないか」
「うーん。なされるべきことを考え、組織にとっていいことは何かを考える、か。考えに考えなけりゃ、いかんと言うことか」
「そうだ。この二つの習慣で、『知るべきことを知った』ということになる。次からが成果を上げる具体的な行動の習慣だ」
(続く)
《1Point》
・八つの習慣
(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
(3)アクションプランをつくる
(4)意思決定を行う
(5)コミュニケーションを行う
(6)機会に焦点を合わせる
(7)会議の生産性をあげる
(8)「私は」でなく「われわれは」を考える
今回は、(1)と(2)についての内容となっています。
【該当部】 「経営者の条件」ドラッカー名著集1 P2~P5(上田惇生訳 ダイヤモンド社)
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(1)(2)で知るべきことを知り、
(3)~(7)で成果を上げた。
(8)で組織内の全員に責任感をもたらした。
というのが、ドラッカーの成果を挙げたリーダーたちがしてきたことだと言っているのです。
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