居酒屋で経営知識
52.八つの習慣(3)
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
ドラッカーの八つの習慣について、『知るべきことを知る』部分に続いて、成果をあげる習慣に入る。
「ちょっと、一杯飲んでから次いこうぜ。大将が寂しそうに見てるからな」
「そりゃそうだ。大将、雄二のおごりなんで、どんどん持ってきてもいいですよ。とりあえず、菊姫のお代わりよろしく」
「おい、ジン。適量でいくのがお前の主義だったろうに。だんだん、浅ましくなってきたんじゃないか」
「よく言うよ。ま、冗談だよ。大将だってわかってるさ」
「はいはい。鳶野さんのおごりなら、怒らせない程度にしておかないと店が壊されてしまいますからね。お勧めは銀杏ですよ」
「お、いいねえ。大将さすがだ。誰が払う客なのかをしっかり見極めるなんて、マーケティングの鏡だね」
「まったく。でも、いい銀杏ですね。秋ですねえ」
銀杏をむいて、菊姫で味わう。秋をさらに深める組み合わせだ。
「さて、雄二。『知るべきことを知った』という習慣はわかったな。
(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
だぞ。じゃあ、次だ。
(3)アクションプランをつくる
というのは、分かりやすいかな」
「無論のこと。実行計画を立てるのは初歩の初歩。ドラッカー君も若干見下しているところがあるんじゃないか?」
「なるほど。当然だよな。じゃあ、雄二のアクションプランはどんなものだ」
「もちろん、会社の経営計画を実行するために何をするかだ。営業を強化するために、重要顧客を定期的に回るとか、取引先との関係強化のために接待するとか、手帳にはびっしり書かれている」
「うーん。それじゃあ、単なるTODO管理じゃないのか?ドラッカーは行動の前に絶対必要だが、単に計画を立てるだけではないと言っている」
「経営計画の重点目標にしたがって、経営者として俺がやるべきことをきっちり明文化して、行動に繋げるだけじゃダメだって言うのか?」
「その行動によって望むべき結果はなんなのかを明確にすべきだ。そのためには、なんらかの障害やリスクを予測する必要もある」
「望むべき結果は、仕入れ先には安くしてもらい、お客には高く買ってもらうと言うことだ。障害と言えば、ライバル会社がキーマンを丸め込んでいるところがあるってところか」
「単純すぎるし、何より、成果が上がったのかどうか、どのくらいまで進んでいるのか、全くわからないじゃないか。ある程度の期間で、例えば、1年とか2年間で自分の貢献するべきことが、どんな成果を生むべきか、そして、それはいつまでなのかを明確にしておかなければいけないだろうな」
「もっと、細かく考えろと言うことか?例えば、接待した見返りにどの程度の値引きを求めるべきかというようなことになるのか」
「それが、雄二の貢献すべき行動なら、会社の目標に対し、自分の交渉での目標を立てればいいかもしれないな。それも、期限をはっきりさせて、だ」
「わかった。障害とリスクについてはどう考えればいいんだ」
「ドラッカーは、『倫理的に正しいか』『組織内で理解を得られるか』『法律的に問題ないか』『組織としてのミッション、価値観、方針に合っているか』を考えよと言っている。今で言えば、コンプライアンス上問題ないか、経営方針に沿っているかという視点になるだろうな」
「ドラッカーはコンプライアンスのことまで先取りしていたのか」
「まあ、そうとも言えるな。会社は社会のものであり、社会のために貢献するものという定義をするくらいだからな」
「アクションプラン一つとっても簡単にはいかないな。俺自身が経営者として何によって貢献するのか、そしてどんな成果をいつまでにもたらすべきか。コンプライアンスや自社のミッションにとってどうか・・・」
「そうだ。そこまで考えてアクションプランを立てるんだが、アクションプランは常に修正する必要がある。つまり、成功しても失敗しても、見直す柔軟性がひつようだ」
「なに?常に見直すって言うのか?」
「すべて変化なんだ。一歩踏み出せば、何かが変化する。だから、成果を考えながら修正する。そのためにも、チェックポイントを設定することも必要だ。よく、マイルストーンを決めるということが言われるだろう?中間点や終わり近くに設定すべきだと言っている」
「ますます気が抜けないな。常に見直し、その上、チェックポイントも設定する、か」
「そういうことだ。そして、それを習慣化するというのが一番のポイントだ。それをやってきた人たちが成果をあげてきたわけだ」
「うーん。銀杏の苦みが心に染みる。ますますぼんやりしてはいられないな」
(続く)
《1Point》
・八つの習慣
(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
(3)アクションプランをつくる
(4)意思決定を行う
(5)コミュニケーションを行う
(6)機会に焦点を合わせる
(7)会議の生産性をあげる
(8)「私は」でなく「われわれは」を考える
今回は、(3)についての内容となっています。
【該当部】 「経営者の条件」ドラッカー名著集1 P6~P7(上
田惇生訳 ダイヤモンド社)
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(1)(2)で知るべきことを知り、
(3)~(7)で成果をあげた。
(8)で組織内の全員に責任感をもたらした。
説明しようとすると、だんだん、本の内容を丸写ししなければいけなくなってしまいます。それだけ、重要なことだけが書かれていると言うことかもしれません。
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