居酒屋で経営知識
17.ビジネスプラン最終段階
(前回まで:週末に雄二がジンの部屋で環境分析から企業のドメインを決定しました。これからは具体化になりますね)
「あれえ?土曜日に2人揃って来るのはめずらしいわね」
「いらっしゃい。なんか、2人ともすっきりした顔をしてますね。なんか、いいことありましたか?」
みやびの縄のれんをくぐると大将も由美ちゃんも、不思議そうな顔をして迎えてくれた。
「とりあえず、雄二の独立に目処がつきそうなので一息入れに来たんですよ」
「由美ちゃん。やっぱり、社長夫人を狙った方がいいかもしれないぞ」
カウンターに座ると生ビールと里芋の小芋を揚げたものが出てきた。
「へえ、めずらしいね。もしかして、揚げ出しになってるの?」
「そうですよ。ちょうど今、メニューに追加するために揚げてみたところなんです。どうですか」
揚げたての小芋をだし汁に入れて一口。
「フハフハ。アフイ、けどウマヒ」
「これはいいね。里芋のヌルヌル感があまりなくて、クリーミーな感じがする。これは売れるよ」
「鳶野さんに誉められたんで、こりゃあ出さないといけないですね」
「雄二の言うように、間違いなくうまいですよ」
完全に同意見だ。
しばらく、新メニューと生ビールの相性について意見を戦わせた。
「そういえば、鳶野さん。ジンさんが、独立の目処がついたって言ってたけど、もう会社になるの?」
「とりあえず、方向性が決まったということかな。今日は、ドメインと言って、会社がどういう形で進んでいくかを決めたんだ」
「へえー。じゃあ、本当にもうすぐなんだ」
由美ちゃんがしみじみと感心しているので、次の課題に入るとするか。
「落ち着いてきたところで、次の課題だ」
「むむむ。やっぱり来たか。受けて立とう」
「これからは、二つの流れを考えた方がいいだろう。一つは、事業化するための具体的な作業で、もう一つは、事業計画書の形にビジネスプランを落とし込んで出資者や借入れに耐えられるものを作る作業だ」
「事業化のための具体的な作業は始めているぞ。まず、このビジネスモデルには2つの重要な仕組みがあるというのは、ジンとの検討の通りだ。その1つ、インターネットを使った中心システムの開発は、前の会社のITシステム部から独立した奴がこのアイディアに乗ってきた。もう1つの印刷・製本・発送の部分については、SNSで積極的だったグループが実は印刷の組合を作っていて、そこの事業と近いと言うことが判ったので、共同でシステムも含めて検討することになった」
「これで、ビジネス構造もほぼ目処がついたと言うことだな。具体的なプロとの打合せも出来る態勢となったので、具体的にビジョンを立て、全体スケジューリングとマイルストーンを設定しよう。これは、システム開発会社と印刷の組合の意見も入れていかなければいけない。それに開発費用や設備投資、会社設立登記のタイミングも入れる。人の問題も考えて、アクションプランを作り、予想財務諸表を作り込めば、事業計画書としてのビジネスプランは出来上がる」
「・・・やっぱり頭痛い」
「社長になる人間は、こんなことで力尽きてどうする。まだまだ、机上の空論になる可能性もあるんだ。自分だけじゃなく、他人も巻き込んでくるとなれば、もう、お遊びでは済まない」
「判ってるさ。ムキになって怒るな。ちょっと、由美ちゃんに甘えようと思っただけだ」
「あら、鳶野さん。休んでる暇なんて無いわ。さあ、お立ちなさい」
「由美ちゃんまで・・・判った、判った。今のジンの長い話は、またメールでもらうとして、もう今日はゆっくり飲もう」
「まあ、そうだったな。大将、今日のお勧めのお酒は?」
「今日は、金陵の楠神が入っていますよ。あまり飲んだことないんじゃないかな」
「金陵っていえば、四国だったですよね。飲んでないかも。それいきましょう。刺身もお願いします」
「はいよ。今夜も鳶野さんの前祝いということでサービスしますから、社長になったら接待お願いしますよ」
「任せなさい!そういえば、みやび日本一計画の入り口改造はどうしたんですか?」
「由美ッペがネゴ中です」
「ガラスを替えるだけじゃあ変わらないので、全体的に落ち着いた日本酒の雰囲気にしようとしたら予算オーバー。それで、建材も扱ってる大森さんの力を借りてるの。もう少しね」
「そろそろ、オフィスビルも完成間近ですからね。由美ちゃんのコントロールが効いてるみたいですね」
みやびの改革も進んでいるようだ。
しっかりした金陵を味わいながら、次の仕掛けを考えていた。
(続く)
《1Point》
・ビジネスプランを作る
このテーマで、鳶野雄二の独立への道を見てきました。具体的にどんなものかについては、ビジネスプラン・コンペティションのサンプルを上げるつもりですのでお楽しみに。
今回の全体の流れ
『ビジネスアイディア』
↓
『ゼグメンテーションとターゲティング』
↓
『ターゲットの具体的なシミュレーション』
↓
『ビジネスモデル仮説策定』
↓
『調査・データ収集』
↓
『ビジネスモデル仮説の検証』
↓
『環境分析』
↓
『ドメインの設定』
↓
『ビジネス構造』
↓
『ビジョンとマイルストーン』
↓
『戦略とアクションプラン』
↓
『リスクの把握とコンティンジェンシープラン』
↓
『予想財務諸表』
↓
『事業計画書(ビジネスプランの文書化)』
↓
ベンチャーキャピタル、銀行、協業者への説明
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