居酒屋で経営知識

117.独学:中小企業診断士

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

「へい、いらっしゃい」

「お、今日は満席状態ですね」

「嬉しい悲鳴ですよ。ジンさんの席は確保済みですですので、どうぞ、どうぞ」

 いつもの、カウンターの壁際の席に移動する。それにしても、ビジネスマン、ウーマン達が賑やかに飲み食いする風景は、非常に日本的だなあなどと考えながら。

「ジンさーん。よかった。来なかったらどうしようかと思ってたよ」

「大森さん、どうしたんですか。電話でもしてくれれば心配せずに済んだのに」

「まあまあ。ほら、話をしていたジンさんだ。ジンさん、うちの商店街の八百屋の大山君を紹介しようと思ってたんだ」

「はじめまして。大山商店の次男になります大山潔です。よろしくお願いします」

「こちらこそ。大山商店って、商店街の入り口に近いお店ですよね。へえー。すると、今、店に出ている若い人はお兄さんですか」

「そうなんです。自分は家を出て会社勤めしているんですが」

「八百屋って言っても、ブランド野菜を中心にして、結構流行ってますよね」

「ええ、兄貴が割と新しいことをしたがるタイプで、オヤジが体調崩してからは口を出さなくなったんです。それで、随分イメージを変えてますね。人気はそこそこあるみたいですけど、昔からのお客さんが来づらくなったって話も聞きます」

「なるほどね。まあ、まずは、お近づきの一杯でもどうですか」

「ありがとうございます」

 3人で軽く乾杯して落ち着いた。

「いやー、実は大山君が中小企業診断士の資格を取るって話を聞いて、さっそくジンさんの話をしたら、是非紹介しろって言うんでね。今日は、店で会って久しぶりに話をしてたらそんな話になったんだよな」

「ええ。本当に偶然なんですが、大森会長に診断士の話をしたら、ジンさんのお話をうかがって、是非お会いしたいとお願いしたんです。受験指導校なんかを調べたんですが、仕事が週末にあったりして、どうも時間的に合わないんです。そこで、通信教育を利用して取り組もうかと思っているんです」

「なるほど。是非頑張ってください。そうですか、通信教育をね。サラリーマンをしているとやっぱり時間の捻出が大変ですからね」

「ええ。大森会長に聞いたら、ジンさんは独学で合格したっていうので、参考になる話があるんじゃないかって思ったんです」

「独学って言っても、一番最初は通信教育に申し込んで1年やったんですよ。その時は、あんまり本気じゃなくて、1次試験で不合格でした。それから、本気で取り組んだのは数年後でしてね。本屋で買ったテキストと通信教育で残ったテキストなんかを参考になんとか取りました」

「すごいですね。通信教育も結局は、テキストを勉強し、テストを自分でやって採点してもらうという形なので、独学の一種ですよね」

「そうですね。きっぱり言い切れます。ですから、自分の時間をどう使うのかというスケジュール管理ともちろんモチベーションの維持がポイントでしょうね」

「是非、そこのやり方を参考に教えて欲しいんです」

「ジンさん。なんか、みやびにくると中小企業診断士になりたがる人が世の中にこんなにいるのかって驚くね。この店で診断士教室でもやったらどうだい」

 忙しそうにしていたはずの大将が身を乗り出した。

「大森さんも面白いことをいうねえ。去年は、由美っペや鳶野さんも合格したし、原島社長のところでも受かってたよね。彼らを講師にして、ジンさんを校長にすれば、診断士学校が作れるんじゃないですか。ジンさん、土曜の昼間とか日曜日なら、この店を使ってもいいですよ」

「大将もあまり乗せないでください」

「ジンさん。もし、実現するなら是非お願いします」

「大山さん。そんなに期待しないでください。まずは、心構え程度しか教えられませんから」

「もう、それが一番知りたいんです。本当に」

「参ったなあ。ま、もう少し飲みながら話をしましょう。どうも、大将にしても、大森さんにしても、突っ走りがちですよ。田酒でもいきましょう」

「田酒、いいですね。でも、獺祭も捨てがたいし。獺祭の50をお願いします」

「大山さん。随分いける口ですねえ。でも、診断士を今年中に取ろうと思ったら、酒はほどほどにですよ」

「そうですね。覚悟は出来てます」

(続く)


《1Point》
 一度、これまでの整理をしたいと思い、一番多い診断士志望者向けに書くことにしました。3月まで、心構えや実際の独学の状況やキーポイント知識などを復習します。