ラグビー型経営論

第2章 経営方針(ミッション)と組織形態

いかなる組織であっても長期的に存続していくためには、経営方針・ミッション・社是というようなものがしっかりしていることが前提になると考えます。

確かに、形だけのものと思っている人もいるでしょうし、日常の業務においては、これらを意識しなくとも何ら不都合はないと感じている人も多いと思います。

本当でしょうか?

昨今の企業・官庁等で大きな社会的非難を浴び、組織の存亡に晒されている現状を他人事と思っていませんか。

組織の中で活動を行っていると、ルーティンワークだけでは処理できない状況になることは多々あります。

場合によっては、前例もなく、自分の判断で進めたり、規則違反だと知りながらも前例に従うことを求められることがあります。

  • 昔からの商習慣だから、
  • 長年当たり前のように行われ引き継がれてきていたから、
  • 誰も損をするわけではないのだから、
  • 必要悪として現実には残さなければいけないシステムだから、
     
    自分だけじゃない、自社だけじゃない行動だから、とまことしやかな言い訳をしていませんでしたか?
  • 「顧客を第一に」考えるという企業が、売れ残りを防ぐため、「顧客」を騙す
  • 「競争」といいながら、話し合いや暗黙のルールで助け合う
  • 「公僕である」と言いながら、「国民」を欺く
  • 「説明責任」といいながら、「都合の良いことだけを公開する」

いかがですか。身に覚えはありませんか。

1.ミッションとは何か

最近、経営の基本理念とか、社是とか、言うよりも「我が社のミッションは」とか、「ミッションステートメント」を公開するなど、よく使われます。何が違うのでしょうか。

ミッションは英語でしょうから、かの国の思想が込められています。

つまり、ミッションとはキリスト教から来ていると思って良いでしょう。最近あまり聞きませんが、キリスト教系の学校をミッションスクールといいました。

では、キリスト教でミッションとは何を差しているのでしょうか。

イエスキリストが神の国から人間界に送られた意味、その使命、人間界に存在する理由や後世の人々がそれを伝える「使命や存在理由」であると考えます。

イエス・キリストは何故にこの世に送り出され、何故に我が身を犠牲にしたのか?

つまり、「ミッション」とは、その企業・組織が「存在する理由」とまとめてしまって良いでしょう。

「お客様に、安心で、安全な食品を提供する」ことをミッションに掲げるなら、

  • 安全を保証する賞味期限を偽装する
  • 廃棄すべき食品を使い回す 
  • 外国産が危険だと思われているから国産だと偽る ・・・・

などを行うということは、自らが存在する理由を否定することになりますね。

そうです。ミッションとは、その組織にとって、社会において立つべき位置であり、自らの行動の判断ルールであり、前進する方向を示すものなのです。

立つべき位置に立てなくなった組織は社会から退場しなければいけないという厳しい気持ちがあるかどうかが、最近の企業の浮沈を左右していると言うことに気づくべき時期です。

そういう意味で言えば、ミッションと言わなくとも、基本理念とか経営の基本方針とか、判りやすい言葉の方が良いでしょう。外資系は別として、日本人に向かって言うなら、判りやすい言葉で、強い決意として示すべきでしょう。

あなたの会社や組織が、社会に存在する理由とは何ですか。そして、その到達目標を明らかにしていますか。

2.従来型組織とラグビー型組織の概念的比較

ミッションへ向かって進むために必要なものは、目的集団としての「組織」ということになるでしょう。

営利組織の代表である企業でも、さまざまな非営利組織であっても、何らかの組織体制を採用し、現に活動を行っているはずです。

ラグビー型経営論のイメージを明確にするためにも、従来型の組織とラグビー型で想定される組織について、4つの視点から比較をしてみました。

従来型組織ラグビー型組織
組織設計業務の機能的分業とその組み合わせによって組織系統が作られる。
それらの機能を満足する人員を配置する。
業務の目標(ビジョンもしくは短期的成果基準)を達成するために必要な強みを生かす人員配置を行う。
それらの人員の機動性を生かす組織系統を作る。
情報活用と決定原則として稟議による決裁によって運用される。全体調整は関係者による会議の開催によって行われることが多い。顧客ニーズに働きかけている担当者・機能組織が流動的リーダーとなり、他機能部門担当者が常時支援するため、ITツールを活用した横断的活動によって常に議論と仮説検証によって決定する。。
指揮命令組織デザインに従った権限と責任の範囲及びルートによって行われる。トップマネジメントはビジョンと方向性の乖離は無いかを判断する。指揮命令は流動的リーダーを中心に双方向で流される。
役割分担組織デザインに従った役割に権限と責任が与えられる。他の役割に勝手に入り込むことはタブーである。ビジョンと顧客ニーズの調整を取るために専門機能については、専門家が意見を調整する。
ただし、個人に許された権限の範囲において、組織内の役割を越えて活動することが推奨される。

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ラグビー型はあくまでミッションをスタートに位置づけ、組織設計においても固定化した体制は取らないことが特徴となります。

そのため、組織メンバー一人ひとりが流動的なリーダーの役割を受け持つ覚悟と自律した個々の目標意識が重要となります。

改めて整理します。

ラグビー型経営にとって、

  • 最重要課題は、「ミッション」の明確化
  • ミッションにコミットメントし、自律した組織メンバー
  • 個々の強みを最大限に発揮できる柔軟な組織形態

が大前提となります。

実際の事業活動においては、これらの大前提を基盤とし、4つの原理に沿ったマネジメントを行い、成果を上げ続ける組織運営を行うことがラグビー型経営です。

では、次章より、具体的な4つの原理の実践について見ていきましょう。
(次章は未完成です。乞うご期待(^_^;)