P.F. ドラッカー―理想企業を求めて

(11)P.F. ドラッカー―理想企業を求めて
エリザベス・ハース・イーダスハイム著
晩年のドラッカーが自ら選んだ彼女に語ったのは遺言かもしれない。
ドラッカー晩年の94歳から一年半、自ら選んだイーダスハイム女史に語った言葉の数々は、これまでの整理だったのだろう。

序章:何のためのマネジメントか
第1章:組み合わせ自在の世界
第2章:すべては顧客を理解することから始まる
第3章:イノベーションのために何を廃棄すべきか
第4章:コラボレーションが根本から発想を変える
第5章:企業は人である
第6章:意志決定が成果をあげるための方法
第7章:21世紀の経営における最大の問題

ドラッカーの言葉該当ページと独り言
「どうしてこれほど多くのリーダーが挫折するのか。原因は二つある。第一になされるべきことではなく、なしたいことを考えるからだ。そして第二に、コミュニケーション、すなわち理解し合うには膨大な時間と努力が必要だからだ」P14
ドラッカーの語るリーダーの条件がここから来ている
そこで私は、なされるべきことを知るにはどうしたらよいかを聞いた。ドラッカーは方法を二つ教えてくれた。 1つは尋ねることであり、もう一つは耳を傾けることだった。P14
なんと簡単で、なおかつ継続することが難しい答えだろう。再認識した。
静かな革命
(1)情報の急増
(2)距離の消失
(3)人口構造の変化
(4)買い手への主導権のシフト
(5)境界の消失
P22
この5つの変化が影響し合って革命となっているという。
長い間、情報そのものが武器だった。P22
ところが、情報ならパソコン一台あればいい。だから、知識という情報の活用がこれからの時代を担う。
本気になれないのであれば、力もあり、やる気もあるところと組めというのだ。P27
それが、ドラッカーの言うアウトソーシングだ。
ドラッカーは、専門分化することなく専門化すべきことを説いた。P32
非常に解釈が難しかった。しかし、事業の成果とは、専門化した企業のコラボレーションによって成し遂げられるということだと受け取った。
事業そのものの内容が変化しつつある。
もはや企業が売っているものは製品ではない。サービスである。
もはや競争相手は存在しない。
より多くの選択とより良いサービスがありうるだけである。
P36
競争を意識するなと言っている。競争戦略は古いということになる。
戦略は、かつての戦術と同じに、リアルタイムで展開していかなければならない。戦略の策定に三ヶ月もかけているわけにはいかない。機会はさっと現れて、さっと消える。P40
SNSやブログ、今はTwitterで購買行動が変わっていく。
組み合わせ自在の時代にあっては、柔軟さと連携による敏捷性が不可欠である。P40
組み合わせ、つまり、モジュール化を言っているのだろうか。
顧客は誰か?
顧客とすべきは誰か?
(1)使う人か?
(2)買う人か、決める人か?
(3)まわりの人か、ウェブサイトか?
P50
顧客は誰かという一見簡単な質問だが、事業分析にとってあまりに重要な問いなのだ。
ノンカスタマー(顧客になっていてもおかしくないのにもかかわらず顧客になっていない人)のうち、関わりをもつべきは誰か?P50
ノンカスタマーに注目する手法はブルーオーシャン戦略に影響を与えたのではないだろうか。
エイボンでは、最終消費者だけでなくエイボンレディが顧客である。彼女たちが豊富な知識をもって、最終消費者の意思決定を助けている。P51
顧客を単純に考えてはいけない。
顧客の心の内は、調査報告書ではわからない。直接会って話を聞かなければわからない。顧客にとっての価値は、顧客の側から見なければわからない。この仕事を委譲するわけにはいかない。いかにデータが溢れたご時勢になろうとも、重要なのは、顧客の心の内についての直接的な情報である。P57
経営幹部自身が外に出て、顧客の声を聞くこと。これは、ドラッカーが何度も言っていることだ。
利益は、明日のための投資に必要とされるものだった。しかし、そのようなものとしての利益でさえ、顧客を満足させたあとに得るべきものだった。逆ではなかった。P61
すぐ後に言う。「靴を買う者は、靴屋に利益を与えるために支払をするのではない」
明日とは機会のことである。P77
明日を脅威と捉えたら企業の歩みはストップする。
ドラッカーは、企業にとって最も重要なことは、機会を予期し、そこに人材と資金を投入することだといっている。P77
明日が機会であるから、明日に投資する
ドラッカーによれば、既存の製品の改善とブランド力の強化に焦点を合わせただけのイノベーションは、重要なことを見逃すという。真のイノベーションとは、顧客の期待を変えるものだというのである。P78
過去のデータだけでは判らないこと。
ドラッカーにとって、イノベーションとは昨日の世界と縁を切り、明日を創造することだった。P80
顧客の期待に応えるだけではイノベーションではないと言う。変えるのだ。
イノベーションについて、ドラッカー4つの問いかけ。
(1)イノベーションを可能とするために何を廃棄するか?
(2)機会を体系的に追求しているか?
(3)機会を現実のものにするためのプロセスを踏んでいるか?
(4)イノベーションのための戦略は事業戦略と合致しているか?
P82
過去の廃棄からスタートしていることの注目しよう。
イノベーションの機会を体系的に探しているか?
(1)自らの存続にかかわることとしてイノベーションの機会を探しているか?
(2)イノベーションのための7つの機会を常にチェックしているか?
 1)予期せぬこと
 2)産業構造の変化と地域間格差
 3)ギャップの存在
 4)ニーズの存在
 5)人口の変化
 6)認識の変化
 7)新しい知識
P88
再整理するまで気づかなかったが、7つの機会の順番が変わっている。
注記にあるが、「イノベーションと企業家精神」では4番目だった産業構造に格差を加えて2番目にしたという。
イノベーションには、既存の事業とは異なる基準が必要である。既存の事業の基準を使ったのではイノベーションは殺される。ドラッカーの名言の一つに、「六歳の子供に六〇キロの荷物を背負わせてはならない」がある。P101
イノベーションとは、6歳の子供だ。最初から大人のようにふるまえというのは土台無理な話だ。
育てるマネジメントが必要になる。
「短期がなければ長期もない。短期だけならば、誰でも経営できる。反対に長期だけであっても、誰でも経営できる。しかし経営とは、この二つをバランスさせることである」P111
GEのジャック・ウェルチの言葉として紹介されている。
現顧客が必要とするものを提供するには二つの原則に従わなければならない。
第一に、強みをすることだけを行わなければならない。
第二に、その他のことについては、それを強みとする者とコラボレーションしなければならない。
P116
強みに集中するためには他の人とのコラボレーションが必須だということだ。
ドラッカーがいうには、コラボレーションにおいてとくに気をつけるべきことが、動き回ることを成果をあげることと誤解することである。コラボレーションにおいては、複数の参加者が、共有する目標の実現を目指す。当然、そこには明確な役割と責任の分担がなければならない。P130
役割と責任に基づいて動き回るべき。
●あなたは敬意をもって遇されているか?
●あなたは貢献するうえで必要な教育訓練と支援を受けているか?
●あなたが貢献していることを会社は知っているか?
P140
全社員がこの質問にイエスと答えられるかどうかが企業の評価。
組織の優劣は、平凡な人間をして非凡なことをなさしめるか否かにある。P144
非凡な人を集めるのではない。
ドラッカーはあるとき、権限を与えたからには、たとえ仕事ぶりが満足すべきものでなくとも、法や倫理に反しないかぎり、あるいは助けを求めてこないかぎり、仕事は任せたままにしておかなければならないといった。P153
管理ではなく自立である。
ドラッカーは、知識とは、すでに行っていることをさらによく行うためではなく、まったく新しいことを行うためのものであるといった。P182
つまり、改善は知識を集中させる目的にはなり得ない。仕事をする上では当然のことなのだろう。
これからは、知識は誰にでも手に入るものになっていく。
顧客に価値あるものを提供するのは、人である。そのとき役に立つものが知識である。知識をもつ者が組織の能力の源泉である。
いかなる人材をもつかが企業の進むべき道を左右する。企業の能力を規定するものは、動機づけされた知識労働者である。
P168
知識自体は簡単に手に入れることが出来る。たぶん、その知識をどう使うかが人によるのだろう。
ドラッカーによれば、マネジメントとはすべて人にかかわることである。それは、「共通の事業のために人が共同して働くことである。事業の健全さは、組織の美しさ、明快さ、完全さにあるのではない。人が成果をあげることにある。P179
すべて「成果」を目指し、成果で考える。
もはや予測を当てにすることはできない。継続性を当てにすることもできない。したがって、何を行うにしても、リスクを負う覚悟が必要になった。われわれはリスクを負うことを当然とする組織文化を直ちにつくりあげなければならない。P184
企業が継続性を中心にするあまり、安定が当たり前に思えてきてしまう。変化が当然なのだ。
意思決定の対象が何であるにせよ、トヨタでは問題の全貌を把握するために万全を期す。まず対象と原因を識別する。トヨタでは、現場において現物を見て、「なぜ」を五回繰り返す。P199
問題の表層だけでなく、裏にまで深掘りする手法だ。マニュアル化した品証手法を取る現状への警鐘になるのでは。
ドラッカーはCEOの条件を三つあげた。第一に、ビジョンをもつこと。第二に、組織に個性を与えること。第三に、人を動かすことである。P207
第二の組織に個性を与えることが一番曖昧とされることではないか。
全体を見るということは、「なされるべきことは何か」を考えることである。外を見、前提を疑わなければならない。外を見ることによって、「われわれの事業は何か」「何であるべきか」「何であってはならないか」という基本的な問いに答えることができる。これらの問いへの答えが、自らの業容を定める。P208
やりたいことではない。外を見よ。
彼は無能な経営者への過度の報酬に警告を発した。「何千人もの人を解雇しつつ巨額の報酬を懐に入れることは、倫理的にも社会的にも許されることではない」と声を荒げた。P216
まるで、2008年~2009年世界を襲ったリーマンショック時のアメリカの企業を言っているようだ。
ドラッカーは、企業とは利益のためのものではないといった。CEOは利益に目がくらみ、株価に気をとられるとき、ミッションを忘れる。P216
ミッションは夢、利益は現実だと思っていないか。本当に利益は現実かどうか、検討すべきだ。
またドラッカーは、企業とはコミュニティでなければならないとした。利益を得るための道具ではないとした。P216
日本的企業はある意味コミュニティだったかもしれない。今は急速に失われている。
「毎年年末には、一年間の業績について、自己申告と、上司による評価と、顧客による評価が行われた。報酬は、それらの申告と評価によって決められた。いわば三者評価というべきものだった。DLJでは、こうして会社全体にチームワークが生まれた。社内で誰かが自分を助けてくれたという第三者申告も評価された」P218
自己申告も上司評価も形だけ。顧客評価はもっと形だけになっている。
今日の知識労働者は、かつては聞かれたことのない問題に答えることができなければならない。
「何をもって貢献すべきか」
P221
チームの中では、自分の成果は誰かの貢献になっている。