居酒屋で経営知識

27.2次試験対策講座(2)

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「さあ、いよいよこの研修会も最後のまとめになってきます。知識については、すでに十分だと思って良いです。あとは、この2次試験の特徴的なポイントに絞って対応できれば大丈夫です。

何度も言ってきましたが、2次試験で私が考える一番大事なことは何でしたか。覚えていますか?」

 全員が頷きながら手を挙げた。

「そうですね。解答の一貫性です。ただし、あまり一貫性にばかり気を取られると、設問の仕方によっては変わった形で問われることが無い訳ではありませんので注意は必要です。

一貫性というのは、全体をチェックしたときに確認できますが、個々の設問毎に、あまりとらわれることも無いと思いますよ。方向性の違う複数の答えが考えられるときに、事例文や他の設問文、また、事前に抽出したドメインをチェックして、一貫性が取れている方を選ぶという程度で考えてください」

 もうすぐ戦いに出て行く男達を眺めてみた。決意に満ちた目だ。

「それでは、当たるも八卦当たらぬも八卦ではありますが、私のチェックポイントと考えられる点を、ざっとおさらいします。わからないところがありましたら、そこだけは復習しておいてください。

【組織人事の事例】

過去の経験に基づくコアコンピタンスを抽出し、過去の戦略的意志決定が環境変化の中にあって機能障害を起こしている部分をコアコンピタンスとのシナジー効果を活かしながら克服していくというのが、大きなテーマと考えられます。

つまり、ギャップがどこかに隠れている場合が多いと思います。

・技能継承という視点が出てくることが多い
→技能継承が困難という内容の場合、中小企業の経営への影響とはどんな点にあるでしょう?

『コアコンピタンスの喪失』です。つまり、
(1)既存事業の競争優位性を維持できない
(2)新規事業(成長戦略)にとって高い技能によるリスク低減やシナジー発揮が阻害される
という点が課題となることが多いので注意しましょう。

・組織の基本原則
 (1)専門化の原則
 (2)権限・責任一致の原則
 (3)命令一元化の原則
 (4)統制範囲の原則

これは、基本知識ですので忘れないように。

また、最近よく使われるバランススコアカードの視点も切り口としてチェックしておきましょう。
バランススコアカード
 (1)財務の視点:株主を見ている・収益・配当
 (2)顧客の視点:CS・市場シェア
 (3)業務プロセスの視点:新製品開発・改善提案
 (4)学習と成長の視点:能力開発費の消化率など

以前は良く出ていた事業多角化についても、多角化を志向する目的は念のため整理しておいてください。

・事業多角化の目的
 (1)主力事業の停滞に対し成長機会の追求
 (2)リスク分散と収益の安定
 (3)余剰資源の有効活用
 (4)シナジーの発揮(範囲の経済性追求)

【マーケティング・流通の事例】

1人の顧客が持つ2つのニーズをいかに融合させるかを考え、多様な顧客ニーズに対応するという視点が多い事例です。

以下のポイントを忘れないでください。

 (1)顧客のニーズを取り込んで新しい独自の商品・サービスを提供する
 (2)顧客生涯価値の向上、顧客シェア、ワントゥワンマーケティング
 (3)小売にメーカー的要素を取り込むことで競争優位を確保する

・サービスの特性を問われる問題も時々出ます。

1)無形性 2)同時性(生産と消費) 3)異質性 4)消滅性 5)需要の変動制 6)不可逆性 7)労働集約性

以下の式は、意味もわかりますね?

・GMROI(純売上高で分解)=粗利益率×商品回転率(原価での平均在庫ベース)
・交差主義比率(平均在庫高は売価)=粗利益/平均在庫高(売価)
・相乗積=売上構成比×粗利益率

【生産・技術の事例】

過去の事業での経験を活かし、需要変動が激しい状況の中で顧客への直接販売、セル生産によって、スピードと機動性を強みに競争優位を構築するという内容が時々出てきます。

・セル生産方式は納期短縮につながる。(平準化、グループテクノロジー)
→特注部品や仕様変更など納期変動リスクに対し機動的に対応できる。(納期短縮)
→生産体制の平準化による稼働率向上を図れる。(コスト削減)

OEMのメリット・デメリットは頭を整理しておいてください。
 メリット:
 (1)安定した生産量の確保、設備稼働率の向上→製造単価の低減
 (2)相手先のブランド力が利用できる
 (3)相手先の販売力が利用できる

 デメリット:
 (1)自社技術流出の恐れ
 (2)自社のブランドが育たない
 (3)自社の販売チャネルが育たない
 (4)相手に価格主導権を握られる恐れ
 (5)最終ユーザーの情報が直接入らない

【財務会計の事例】

小口取引増加で売上債権増加や販管費が増加している卸売業が出たら以下のポイントを押さえましょう。

 (1)指標:売上債権回転率、自己資本比率
 (2)売上債権の改善法は取引先別の管理
 (3)標準原価計算で問われる論点はABC(特に物流費が出たらビンゴ)
 (4)原価管理においてのキーワードは「原価企画」設計段階での原価管理

・固変分解
 (1)総費用法(ある売上高の費用総額と他の売上高の時の費用総額を対比して求める)
 (2)勘定科目法(勘定科目毎に一つ一つ分解)
 (3)スキャッターグラフ法(グラフ上に売上高と総費用を記入して求める)
 (4)最小二乗法(売上高と総費用の数値から回帰曲線を求める)

・プロダクトミックスの判断は以下がポイントです。

 (1)制約条件を見つけよ(時間、個数?)
 (2)制約条件の単位当たりの限界利益を計算
 (3)限界利益の高いモノから増やす、もしくは低いモノから減らす

 必ず出てくる指標の選択ですが、安全性については、以下の指標が怪しいです。

・安全性の指標
 借入金の増加が財務体質を悪化させている時
 「調達計画の内容に問題がある」→自己資本比率
 「運用計画の内容に問題がある」→固定比率

 財務会計の事例については、必ず、財務諸表分析と指標のピックアップを求められるので、とにかく、最後まで諦めず、間違いなく他の設問と関連性がある指標がありますので、全体から見て見直しをしてください。

 後は、体調を崩さぬよう、当日は絶対に諦めず、闘ってきてください。

 皆さん、本当によく頑張ってきました。試験の後、前祝いの準備をしておきますので、楽しみにしてください」

(続く)


《1Point》
 後は、気合いと諦めない気持ちです。

 この試験は、コンサルタントとして、社長にアドバイスするという内容であることを忘れないでください。

 その社長が自信を持って、あなたのアドバイスを受け、事業を発展させるのです。

→(28)B/SとP/L