居酒屋で経営知識
90.診断士2次試験に向けて
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。 新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士
「いらっしゃい。ジンさん、皆さんお待ちですよ」
「すいません。ちょっと遅れてしまいました」
みやびは貸し切り状態になっていた。
実は、由美ちゃんや雄二と原島さんの会社の若手が中小企業診断士の1次試験を受検したのでその慰労会を行うことになったのだ。
「ジンさん、早く早く。乾杯寸前よ」
亜海ちゃんに急かされて、珍しいテーブル席へ移動した。
「ジンさん、待ってたよ。今回は、やっぱり先生に乾杯してもらわなければね」
「申し訳ないです。じゃあ、さっそく乾杯しますか。由美ちゃん、雄二、木村君、小川君。1次試験お疲れ様でした。結果はこれからゆっくり聞くとして、これまでのチャレンジに乾杯!」
大森さんや近藤さん、原島さんと会社の仲間も一緒になって慰労をするため集まっている。
「久しぶりのみやびのビールはどうだい?」
大将からのメッセージだ。
「いやー、うまい」
「やっぱり、毎日酒抜きをしてきたから、目が回りそうですよ」
「いつものようにうまい」
それぞれがホッとした表情だ。いい顔だね。と言うことは、結構みんなうまくいったのかもしれない。
「ところで、みんな、自己採点はしてみたんだよね。隠すような仲間じゃないから発表してくれないかな」
まずは、由美ちゃんが立ち上がった。
「じゃあ、言うわね。平均で70点、最低点が58点だから、きっと大丈夫ね」
「おめでとー。さすがだね」
「へへへ。俺もギリギリだけど大丈夫そうなんだ。平均はたぶん62点で、40点切りはなし。変な調整がなければいいが」
「雄二も良くやったなあ。正直見直したよ。40点切りがなければ心配ないだろう。参った」
なんと、原島さんの会社の2人もクリアしたという。
「すごい合格率だね。こんなうれしいお祝いもないよ。大将、じゃんじゃん行こうよ」
「おおー、今日はジンさんの奢りだったんだ。黒さん、大トロでもいくかね」
「大森さん。じょ、冗談はやめてくださいよー。お祝いは割り勘でお願いしますよ。みんな、うまくいったんだから」
「ははは。大森さんに頼まれても、さすがに大トロは仕入れてないですよ。寿司屋じゃないですから、安居酒屋にそんなリスクは取らせないでくださいよ」
「原島さん。それにしても、木村君と小川君も大したもんですね。結構、短期間の勉強だったんじゃないですか」
原島さんの隣にいた木村君が口を開いた。
「去年の北野さんの講座がきっかけだったんで、それなりに事前勉強はしてたんです。先に田中さんが合格したのも大きかったです」
「そうだったね。田中君は2次で不合格になってしまったけど、今年のリベンジにかけるって言ってたから、これからは相乗効果が出るかもしれないね」
大将が、刺身を中心に桶に山盛りの料理を持ってきた。
「おおー、こりゃすごい」
みんなが歓声を上げた。
「黒沢さん、これは四国の皿鉢(さわち)料理じゃないですか」
近藤さんがうれしそうに箸を出したのを合図にみんなが盛られた魚貝や煮物に手を伸ばした。
「近藤さん、その通りです。高知県の郷土料理の一つで、九谷焼や伊万里焼の大皿にタイ・カツオ・貝の刺身、組み物(煮物・焼き物・揚げ物)、鮨(サバの姿鮨や魚の押し鮨)を盛りつけた宴会料理を参考にしました」
「すごーい」
今日はバイトそっちのけで料理に手を出している亜海ちゃんが更に声を上げている。
日本酒も出て、みんなが落ち着いてきたとき、雄二が突然声を上げた。
「おい、ジン。これだけ、お前の教え子が集まって、これから得体の知れない2次試験に取り組む訳だ。何か、心構えはないのか。実は、みんな不安なんだ」
受験生たちが一様に頷く。
「そうだな。前から言っているように、この中小企業診断士の2次試験は、実際の診断を採点できるようにしたものだと思っている。だから、完全な正解はないんだ」
「それは、何度も聞いたが、じゃあ、どうやって採点しているんだ」
「それも想像でしか無いんだけど、俺が言えるのは、相談の対象になっている経営者の思いと、事実としてちりばめられている課題やヒントを結びつけ、全体として一貫性のある診断結果になっているかどうかが大きなポイントじゃないかと思うんだ」
「一貫性をどう採点しているって言うんだ」
「わからんが、各設問の答えには関連性がつけられているんじゃないかと思うんだ。だから、一つの設問での解答に関連する別の設問の解答がバラバラになっているとマイナス点がつく可能性がある。俺自身、自分の再現答案を見ていても、可能性があるのはそこでマイナスにならない、もしくは、プラス点がつけられてたんじゃないかと思うんだ」
「うーん。難しいな。あの解答時間の中で、そんな一貫性をチェックするなんてできるんだろうか」
「だから、与件文の中のSWOTとどこかに出てくる経営者やその企業の思いや理念などをまずもれなく抽出する必要がある。後は、たぶん設問が誘導するままに、繋げていくことでいいと思う」
「やっぱり難しいわね。ジンさんは、とにかく過去問を何度もやれって言ってたわよね」
「それが最低限だし、もしかするとすべてかもしれない。過去問をやりながら、今のポイントを考え直してみるといい。2回目、3回目に同じ問題をやっても、きっと違った発見があるんだ。だら、全く違った答えになることも多い。じゃあ、どの解答の流れが、説明しやすいか、説得できる説明ができるかという視点で見直してみるんだ。後は、解答を書くまでの自分のやり方の流れをしっかり作ることだ」
・・・お祝いが既に真剣な2次試験対策に入り出してしまった。
(続く)
《1Point》
・2次試験対策
1次試験から2次試験までは3ヶ月ありませんので、とにかく時間を作ることが重要です。
1次試験と違って隙間時間にできることは限られています。
とにかく、本番と同じ状況を何度も繰り返し、自分のやり方を作ってしまうことが必要です。
例えば、筆記用具や電卓は常に同じものにした方が良いでしょう。
また、与件文から読むのか、設問文をざっと流してからにするのか、余白をどう使うか、どんな記号で記入するのかというテクック面も重要です。
この辺についての私の経験談はHPに載せています。
ちょっと思いが強く、長い内容になっていますので気分転換とて読んでみてください。
該当ページ→http://bit.ly/NZoO4V
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