居酒屋で経営知識

56.経営者の条件(9)貢献とは

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「へい、いらっしゃい。お、今日は皆さん一緒ですか」

「大将。疲れた~。早く、ビール」

「はーい。生ビール4丁。ちょっと待ってくださ~い」

 亜海ちゃんがバタバタと生ビールを注ぐのを眺めながら、いつものカウンターに腰を下ろした。

「原島さんまでいるってことは、会社の勉強会後ですか?」

「そういうことです」

 今夜は、原島さんの会社で読書会をした後、原島社長と雄二、由美ちゃんとみやびへ寄ったのだ。

「それじゃ、今日の締めに乾杯!」

「かんぱーい!」

「いやー、喉が渇いたからうまいね」

「ホントね。鳶野さんのファシリテーター振りがよかったわ」

「由美が誉めてくれるなんて珍しいね。ちょっと、俺に惚れたか」

「すぐ、調子に乗るんだから」

「ところで、北野。今日の貢献の話も、なかなかまとめるのが難しそうだな」

「原島さん。今日のようなやり取りをまとめていくことも、一種の訓練になるんですよ。もう一度、考え直しますからね」

「それはそうだな。俺にとっても、考え直さなければいけないところが多かった」

「原島さんでも、考え直すところがあるんですか?」

 今日の読書会のテーマは『どのような貢献ができるか』の章だったので、誰に対する貢献なのかが最初の議論になっていた。

→「成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える」(P78)
→「ところがほとんどの人が下に向かって焦点を合わせる。成果ではなく、努力に焦点を合わせる。」(P78)

「最初は、みんな迷っていたわよね。自らの果たすべき貢献が、誰に対するものなのかって」

「貢献と言っても、まずは権限がない状況で何かをなすというのは難しいのでは、という発言が始めにあったのが議論に火をつけたみたいだったね」

「俺は、その時、ジンの顔がうれしそうになったのを見逃さなかったぞ」

「ははは。その後の議論につながったからね。権限がなければ貢献できないなら、上や外に向かった貢献はどんな権限が必要かって質問になったろう」

「確かに、そうだったわ。貢献が、自分の得意な知識やスキルを組織全体の目的に向けることによってなされるなら、権限は自ずと責任と同一になっているという意見でみんなうーんって唸っていたわよね」

→「貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。」(P79)

「みんなが意外と感じていたのは、貢献をするという実務的な目的に『可能性を追求』することと言っていることだった」

→「自らの貢献を問うことは、可能性を追求することである。」(P80)

「可能性を追求する姿勢がないと目標を狭くしてしまうと言うのがあるよな。銀行の証券代行部の例で、精密さと能率を必要とする仕事だと考えていたのに、貢献を考え直すと、実は、銀行全体の一大営業部隊となりえる可能性があった、という話は分かりやすかったよ」

「原島さんの会社でも、最初の頃、そんな話がありましたよね」

「そうなんだ。もう随分前の話のような感覚になってしまっていたが、俺が着任した時は、みんなが自分の殻に籠もって、ミスを犯さないことが業務のような感じだった。特に、メンテナンス部隊は、お客さんに叱られることになれすぎて、言われたことだけを淡々とやる部隊だったんだ」

「メンテナンスって言うと大変そうだなあって感じるものね」

「そうなんだ。でも、ある時、お客さんにアンケートを取ったことがあった。その中で、数人のメンテ技術者の正確な対応から、次の注文もわが社に考えているという回答が出てきたんだ。それを、みんなで取り上げてから、いきなりメンテ部隊が次の注文をとりだしたってことがあったんだ」

「お客様の声に気づいたってことね。認められたってこともあったのかもね」

「その通り。それが、自分達の貢献を狭く考えず、可能性を追求しながら、対応することが重要だって気づかされたってわけだと思うよ」

 お通しの空豆とつまみながら、それぞれが生ビールのお代わりをしだした。空豆の生ビールへの貢献は何か?なんてことまで話し出しそうだ。

(続く)


《1Point》
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第3章どのような貢献ができるか、の最初の部分を再掲します。

「成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える」(P78)

 手元の仕事からを顔を上げ目標に目を向ける、という部分を見て思いだしたのですが、リーダーの役割に顔を上げさせて目標を上に見させるというのがありました。

 つまり、個々人が貢献を考えると同時に、リーダーは、彼らに貢献に焦点を当てさせるというつながりになっているのですね。

 マネジメントには、必ずセルフマネジメントと組織マネジメントがあり、それらが統合されることが大切だと感じます。