居酒屋で経営知識

64.経営者の条件(17)成果をあげる意思決定

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長

「へい、いらっしゃい。毎度」

「うひゃー。ビショビショだよ」

「随分降り出しましたね。亜海、タオルを出してきてくれ」

 駅からの数分の間に、突然の雨となったのだ。

「ありがとう。あと数分外にいたら、家に帰らざるを得なかったね」

「そんなにー?ホントだ、すごーい」

「亜海、提灯だけでも入れておいてくれ」

 その直後、更に土砂降りの勢いが増し、間一髪で亜海ちゃんが提灯を救出した。

「危ない危ない。最近の雨は突然来るので気が抜けないですね」

「ジンさん、さあ、奥へどうぞ」

「はい、ジンさん、生ビールで休んでください」

「亜海ちゃん。ビールで休むって言うのは面白いねえ」

「うーん。ジンさん達見てるとそう見えたの」

「ははは。そうかもしれないなあ」

 お通しのイカ大根を口に運びながら、休んだところで、由美ちゃんからの宿題に目を通すことにした。

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第7章 成果をあげる意思決定とは

→「意思決定についての文献のほとんどが、まず事実を探せという。だが、成果をあげる者は事実からはスタート出来ないことを知っている」(P192)

・事実とは、絶対的な真実ではないということだと思う。起こった事象について、何らかの知識や評価の基準をもった、個々の人間がある側面について知覚・認識できる範囲のものでしかない。

「言葉の定義の意見が出た。何かが起こったという事象は、観察者がいて始めて認識される。その観察者も、何らかの基準をもっていないと事実として捉えることが困難だという」

 「・」以下が出された意見で、それに対する由美ちゃんのメモがその後の括弧内(「」)に記載されている。

・事実を明らかにするためには、いろいろな角度から(側面から)の意見によって検証する必要がある。それなのに、いきなり事実の説明からスタートする会議は確かに多い。

・最初に出される事実を正しいとしてしまうから、議論とならず、報告と説得という会議になってしまうのではないかと気づいた。

→「正しい決定は、共通の理解と、対立する意見、競合する選択肢をめぐる検討から生まれる」(P192)

・事実に対する違った側面を見ている人たちが、合意できる点や違って見える点を明らかにすることが出来れば、より事実に近づけるのだと思う。

「単に、多くの人の意見を出してもらうことも重要だが、最初に事実として提示されてしまうと、それが事実と見えない人にとっては、理解の足りない人とされてしまう、もしくは、自分でそう思ってしまい、意見を出さない人が多くなってしまうと考えられる」

「これによる問題は、反論や違った見方を排除したり、良く検討しないということにつながることと思われる」

→「人は意見からスタートせざるをえない。最初から事実を探すことは好ましいことではない。すでに決めている結論を裏付ける事実を探すだけになる。見つけたい事実を探せない者はいない。」(P195)

・確かに、それぞれが示す根拠としての事実は、それらしく聞こえてしまう。事実として、示されてしまうと反論する雰囲気がなくなってしまうかもしれない。

「特に、統計や調査、財務的な数値などは、いかにも客観的な事実のように扱われてしまうことで、重要な点を見逃すかもしれない」

「たとえば、最終的には統計の数値などでも、前提となる母集団が適切でなかったり、違う目的で操作されてしまった結果だったらどうなってしまうのだろうか」

→「したがってまず初めに、意見を持つことを奨励しなければならない。そして意見を表明した後、事実による検証を求めなければならない」(P194)

・問題のもう一点として、評価すべき基準が変化しているから、前例をそのまま検証済の事実としてしまうことにも注意が必要だと思う。

→「成果をあげる決定を行うには、それまでの評価測定の基準は正しくないものとみなさなければならない」(P194)

・変化を見つけるためにも現場主義が重要だと述べられていると考える。

→「評価測定のための基準を見出す最善の方法は、すでに述べたように、自ら出かけ、現実からフィードバックを得ることである」(P195)

「スローンの会議の進め方として何度も取り上げられている満場一致となった場合には、異なる意見が出てくるまで決定を延期したという部分がまさにここで述べられているところ」

→「意見の不一致は三つの理由から必要である。
第一に、組織の囚人になることを防ぐからである。~
第二に、選択肢を与えるからである。~
第三は、想像力を刺激するからである。~」(P200~202)

・組織の囚人や選択肢はピンときたが、想像力を刺激するというのは意外だった。

「不確実な問題について、想像力が重要である点は特筆すべきと思う」

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「ジンさん、大変ですね。勉強会の準備ですか?」

「由美ちゃんが、前回の勉強会のメモを送ってきたので、目を通していたんです」

「由美っペも、ジンさんのおかげでいっぱしのコンサルタント気取りだなあ。大丈夫なんですかね」

「大将、心配いらないですよ。彼女は、しっかりした軸をもってきましたから。私がコメントするようなところもなくなってきましたよ」

「そうですか。ジンさんがそう言うなら安心なんでしょうが、会社相手に右や左や言うのは責任が重大だなあってねえ」

「まあ、決定するのは会社側ですから。そういう意味で言うと我々は、選択肢を明確にする仕事かもしれません」

「難しいことはよくわかりませんが、これは由美っペへの指導料と言うことで」

「え?ウナギの白焼きですか。いいんですか?」

「数は仕入れられなかったんで、まずは試食ですからお願いしますよ」

「こりゃうまそう。お言葉に甘えていただきます」

(続く)


《1Point》
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 引用ベースなので、どうしても長くなってしまいますね。今回も章の途中となってしまいました。

 来週へ続きます。