居酒屋で経営知識

75.経営情報システム

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

「へい、いらっしゃい。毎度」

 みやびの縄のれんをくぐるたびに、大将のだみ声が迎えてくれる当たり前がうれしい。
 
 なんだか、今日は心に染みるなあ。

「ジンさん、どうしたんですか。早くいつものカウンターに座ってくださいよ」

「あ、ちょっとぼーっとしてました。亜海ちゃん、生一丁よろしく」

「はーい。もうできまーす」

 生ビールの超特急便が届くやいなや、ゴクゴクと喉を鳴らす。

「フーッ。落ち着いたあ」

「おやおや、ジンさんでもそんなため息みたいな時があるんですか?」

「大将、俺だっていつも脳天気じゃないですよ。これでも、日々悩みがあるんですから」

「え、本当ですか?」

「ははは。ウソですよ。いつも言ってるように、俺には悩みなんてないですよ。そんなセルフトークはしていませんから」

「ですよね。ジンさんに教えてもらいました。言葉が自分を縛るんだってね。だから、私もいつも楽しいことだけをつぶやくようにしてるんです。本当にこれだけで毎日が楽しくなりますよね」

「大将は、その実直さが一番いいんでしょうね。でも、自分の言葉って、必ず自分に返ってきますから、気をつけた方がいいですね」

 ふと、店の奥に目をやると、亜海ちゃんの待ち構える姿があからさまだ。
 
「亜海ちゃん。何か聞きたいことがあるんじゃないのかい?」

「わかっちゃいました?えへへ。実は今日、本屋さんに行ってきたんです。そこで、中小企業診断士のテキストを眺めていたんですが、情報システムっていう科目もあるんですね。私、ちょっと好きなんで、これから勉強したらどうかなあって思ってたんです。どう思います?」

「へえー。亜海ちゃん、情報システムに興味があるんだ。意外だったなあ。大学でやってるの?」

「ええ、もちろん。それ以上に、うちのお父さんが昔からパソコンとか、電子機器が好きで、ちょっと古くなると私に回ってくるんで小さい頃から遊んでいたんです。そのせいで、結構詳しいかも」

「好きな科目なら入りやすいよね」

「ところで、どんな問題が出るのかしら」

「情報システムはね、細かいものは1次しか出ないんだけど、割と点数が取りやすいって言われるんで、これを得意にしていると総合点を狙うときは有利だと思うよ。

経営情報システムの問題か。たしか、昔の問題をEvernoteに置いておいたはずだな。あ、出てきた。平成22年の経営情報システムの第1問を見ると、記憶装置の特徴と名前を組み合わせるものだ。

解答群には、

 SDRAM、マスクROM、フラッシュメモリ、VRAMが並んでいる。

それぞれの特徴がわかる?」

「どれも聞いたことはあるわね。そうねえ。SDRAMって、パソコンの交換するメモリの名前の一つよね」

「本当に知ってるね。主記憶装置に使われたメモリの種類だね。ここに使われているのは、高速であることが一番重要で、ただし、電源を切ると内容は消えてしまう。それが特徴だね」

「マスクROMは、あれよね、BIOSが記録されているメモリよね。だから、電源を切っても内容は保持される」

「大正解。BIOSまで知っているとは。」

「いえいえ、ジンさん。浅く広くだから、すぐボロが出るわ。BIOSってなんでしたっけ?」

「Basic Input/OutPut Systemの略で、パソコンに接続するHDDとか、キーボードを認識し、まずはパソコンを使える状態にするプログラムのことだね」

「フラッシュメモリはわかるわ。USBメモリなどの何度も書き換えられるメモリよね」

「亜海ちゃん、お見それしました。ここまで詳しいなんて思わなかったよ。最後のVRAMはどう?」

「うーんと、確か、グラフィック系のものだったわよね。でも、RAMの一種よね」

「そうだね。VRAMのVはVideoだったはず。要は、ディスプレイに描画するために特別に確保したメモリだ。最近は、複雑で精密な描写が必要だから他の処理とは別にしているんだね。うーん、それにしても、すべて正解だね。これは1次試験で選択式だから問題なく点が取れそうだ」

「やったー。私にもできることがあったわ」

 大将も目を点にしている。

「亜海・・・人は見かけによらないというのはまさにだな。そういえば、パソコンとか、スマートフォンには詳しかったとは思っていたが。もしかすると、うちのホームページ更新も頼めるかな」

「ホームページは作ったことないけど、ブログならやってますよお」

「みやびのCIOに任命されそうだね」

「えへへ。ところで、こんな問題ばかりじゃないんでしょ?」

「ああ、そうだね。中には、システム開発の基礎やネットワーク階層、情報セキュリティとか、やはり、広範囲だからパソコン利用だけの知識だと対応は難しいだろうな」

「あ、やっぱり。でも、面白そうだからやってみるわ。ジンさん、私にも教えてね」

「了解。今の感じだと、経営情報システムは亜海ちゃんが雄二や由美ちゃんに教えるといいかもしれないなあ」

「ええー、それは無理。先輩たちに教えるなんて10年早いって言われてしまうわ」

「そうじゃないんだよ。人に教えるためには、しっかり理解しなければいけないし、質問されると曖昧なところがはっきりするから勉強には一番いい形なんだよ。他の分野は逆に亜海ちゃんを理解させることで、雄二なんかはいい勉強になるはずだ。つまり、相互学習ってことだね」

「うれしい。先輩たちと勉強できたら楽しそう。よろしくお願いします」

「あー、結局、ジンさんに亜海の面倒まで見させることになっちまいましたね」

「大将。心配しないでください。相互学習になると私の出番は少なくなりますので。隣で飲んでればいいというところですよ」

「それならいいんですが。ま、今日は、この辺にして、カツオでも切りましょうか」

「いいですね。じゃ、亜海ちゃん、後でどんなテキストがいいか見に行こうか。今度の土曜日なんかどう?」

「きゃー、うれしい。大丈夫デース」

 
(続く)


《1Point》
経営情報システム

 1次試験の経営情報システムは得手不得手がはっきりする課目かもしれません。
 
 ただ、毛嫌いしなければ、点数を取りやすい課目ですので、1次試験突破のキーポイントになります。
 
 ちなみに、私の場合、これで80点とったのが合格の決め手になりました。
 
 確かに、システム開発の手法など、IT系の仕事をしている人以外では馴染みがないかもしれません。でも、それぞれの分野での基礎的なものばかりなので、きっちりやると8割取れるというのがこの課目でしょう。たぶん、平均点も高かったはずです。