居酒屋で経営知識

103.生産形態の分類

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業を目指している
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト

(前回まで:雄二への生産の管理の初歩講座を行いました。基礎の基礎、生産管理とは、が前回のテーマでした))

 酔いも回ってきた。最後の締めにお茶漬けでも作ってもらおう。

「大将、そろそろ軽くお茶漬け作ってもらえますか」

「お、良いねえ。俺は、海苔茶漬けだな。どうせ、ジンは鮭茶漬けって言うんだろう」

「悪いか。鮭好きなんだ」

 大将が「あいよ!」と答えて準備に入ったようだ。
 
「あ、そうそう。生産の基礎の基礎に生産形態の分類があった」

「なに。この期に及んでまで勉強させる気か」

「え、聞きたくないならいいさ。俺にはどっちでもいいからな」

「ウソウソ。ジン先生、よろしくお願いしますよ。生産形態って、何のこっちゃ、という状態ではあるが」

「簡単な話だからちょっとメモしとこうか。たとえば、今、お茶漬けを注文しただろう。大将は、その注文を受けて作り出したので、受注生産という形態になるんだ。じゃあ、文房具とかコンビニの弁当などは注文の前に作って店頭に並べているよな。こんな形態を何というか知ってるか?」

「あれだな、あれ。見込みだろう。自動車なんかも見込み生産だったよな」

「そう言うこと。生産形態の1つの分類として、注文の時期によって、『受注生産』と『見込み生産』に大きく分けられる。次に、それぞれの生産数量と品種によって分類する分け方もある。品種が多く、それぞれの品種毎の生産量が少ないものを『多品種少量生産』、少ない品種を多量に作るのが『少品種多量生産』、その中間くらいを『中品種中量生産』と呼んでいる」

「受注生産と見込み生産は、なるほどと思うが、多品種とか多量とかいうのは、そのままじゃないか。別にそれが生産管理にどう影響するんだ」

「そうだな、仕事の流し方に関係するのでそんな分類をしているみたいだ。たとえば、受注生産で仕様が特殊な製品を少量作るとなると『個別生産』という形で作ることになる。オーダーメイドの高級スーツなどを考えてみるといいかもしれない。その人の寸法をとって、その寸法に会わせて、型紙を作り、布地を切り縫製するという仕事の流し方をする。次の製品は、まったく違う型紙製作から始まるので、データが来てからスタートすることになるんだ」

「イージーオーダーなんていうのはどうなんだ?」

「いきなり応用問題だな。これは、企業側の考え方だが、ある程度の体型の範囲を決めて、微調整の直しをすれば個別寸法に合うようにするわけだから、ロット生産になるだろうな」

「ロット生産?ロットってなんだ?」

「簡単に言うと同一のまとまりという感じだな。たとえば、体型別・身長別にいくつかの標準を作って、それぞれの標準のものを100着ずつ作る場合などは、この100着を1ロットなどというようだ」

「なるほどな。ロットで作り置きしておいて、ポイントの寸法だけを個別に直して配送すれば、1つずつ受注生産するより、全体コストを下げられるし、納期も短くて済むという訳か」

「そう言うわけだ。今、雄二が言ったのは、QCDのCとDでのメリットだが、Qの品質も、ロットである一定の品質を保証しているから、顧客にとっても安心だと言える。見本として、直し前の商品を展示することも出来るからな」

「なるほど。ここでも『QCD』が出てくるわけだ。個別生産とロット生産か」

「そして、同じものを大量に作るのが『連続生産』だ。この3つが仕事の流し方の分類となるんだ」

 分類を図示したが、雄二が怪訝そうに眺めている。

「このように分類するのは、具体的に生産するとき、どんな生産方式をとるかというのを計画するためにするんだ。たとえば、受注してからしか作り出せない場合は、個別生産のための生産体制を考えて対応するが、ある程度予測が可能で、かつ、納期やコストが有利であれば、見込みでのロット生産を選択するかもしれない。もちろん、鉛筆とか消しゴムのように、大量に同じものを作るなら、連続生産のラインを作って、コストを大幅に下げることが競争力に繋がるわけだ」

「なるほど。生産計画を立てるための分類というわけだな」

 ちょうどいいタイミングでお茶漬けが出来上がった。
 
「大将。さすがに、受注生産の個別生産なのに、QCDがばっちりだね」

 雄二の受け売りに大将も返答に困っている。

(続く)

《1Point》
・生産形態の分類
 
○注文の時期による分類
 (1)受注生産:注文のあとに生産を開始する
 (2)見込み生産:注文の前に生産を開始する
 
○品種と生産数量による分類 
 (1)多品種少量生産
 (2)中品種中量生産
 (3)少品種多量生産
 
○仕事の流し方による分類
 (1)個別生産
 (2)ロット生産
 (3)連続生産
 
 特に問題のない分類だとは思います。
 
 良く問題になるのは、受注生産では、情報に問題があって、手戻りや納期遅れを生じる点、見込み生産では、まさに、予測の仕方などですね。
 
 診断士の問題では、営業部門と設計部門、生産計画部門の連携が悪いという原因が多く見受けられます。実際の現場でも、情報をタイムリーに生かせるか、という視点が、QCD改善のポイントであることが多いようです。

(102)生産管理とは