居酒屋で経営知識

(84):現代の経営(1)

【主な登場人物】 
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 
原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長 

「へい、いらっしゃい。ジンさん、毎度」

「いやー、鍋のシーズン到来ですね。いい香りが漂ってますよ」

「じゃあ、今日も締めはちゃんこですね。準備しておきますよ」

「もちろんです。あ、こんばんは。お久しぶりです」

 大森さんと近藤さんがニコニコと奥のカウンターから手を振ってくれた。

「ジンさんも相変わらず元気だねえ」

「大森さんにはかないませんよ。近藤さんは、しばらく工事出張だって聞いてましたが竣工ですか?」

「ほぼ問題は収束したんで、やっと解放されたんですよ。そこで、大森さんに声をかけて帰還祝いをしてもらっているんです」

「近藤さんも随分苦労したみたいだから、ほら、ジンさんも今日はこっちへ来て一緒にねぎらってくれないか」

「もちろんですよ」

 カウンターに並んで座った。亜海ちゃんの特急生ビールで乾杯をする。

「それじゃ、近藤さん。お帰りなさい。乾杯〜!」

「近藤さんが応援に行かなかったら、現場は大混乱だったらしいですね」

「私なんて、年を食っているから皆んなが尊重してくれただけで、まあ、それでまとまったということなんですよ。私の手柄っていうわけでもないでしょ」

「いえいえ。それこそが大事ですよ。危機的な状況になった時というのは、どっしりとしたリーダーがいることで、一気にチーム力がアップするんですよ」

「ははは。確かにどっしりと座っていただけかもしれないよ。ある程度、現場が落ち着いて動き出してからは、一人でいる時間が増えてね。でも、ジンさんに勧められていたドラッカーをじっくり読むことができたのが、最大の収穫だったよ」

「ええー。近藤さん、ジンさんお薦めのドラッカーを読んだんですかあ。どの本か教えてくださーい」

「え?亜海ちゃんがドラッカーに興味あるなんてどうしたんだい?」

「近藤さんがいない間に、ジンさんの生徒になったようで、いつもジンさんがゆっくり飲めなくて、申し訳ないんですよ」

「なるほどね。そういえば、前からジンさんたちの話に入りたがってたね」

「そうなんです。ちょっと図々しかったけど。ところで、なんていう本ですか?」

「ああ。『現代の経営』という本だよ。ジンさん。マネジメントより、こっちの方がいいって言ってましたよね」

「どっちがいいってこともないんですが、現代の経営を軸にしてマネジメント関係の著作を展開していったって、ドラッカー本人も言ってますから、基本になると思うんです」

「そうだね。確かに、前書きにドラッカーさんが書いていたね」

「実は、原島さんの会社での読書会でも取り上げていて、随分進んでいるはずです。最後には、全体をまとめた発表と意見交換会を予定してますから、近藤さんも参加されてはどうですか」

「いやー、私なんかが行ってもいいもんかね。原島さんの会社って若い人ばかりだったからね」

「近藤さん。だからこそいいんですよ。いろいろな立場、年代の方から意見をもらうとより見方が深くなるんですから」

「あ、いいなあ。私も参加していいですか」

「大丈夫だと思うよ。来週、打ち合わせがあるから、少し参加者の枠を広げてやるように言ってみるよ」

「やったー」

「なんか、俺の出番がないんで、黒さん、ちゃんこの準備を頼むよ」

「大森さんもいかがですか?」

「なんか、ついでみたいでシャクだなあ。でも、せっかくだから日にち次第だな」

「じゃあ、ちゃんこができるまで、キクマサ飲みましょうよ」

「よっしゃ。今日は、近藤さんの帰還祝いだった。やっぱり、日本酒にしなきゃ」

 こうして、ぶり大根のお通しでキクマサを注ぎ合う宴会に突入した。

(次回へ続く)


《1Point》

 経営戦略論が一通り終わったので、ちょっと弾込めの休憩状態になってしまいました。ここで、紹介した現代の経営は、本当にいいと思いますので、次から、これを使って話を進めてみようと考えています。

 中で出てきた「現代の経営」の位置づけについての該当部分は以下の通りです。参考に。

「私のマネジメントに関するその後の著作のいくつかは、本書を発展させたものである。経営戦略に関する世界最初の本『創造する経営者』(1964年)であり、エグゼクティブとしての自らのマネジメントについて説いた『経営者の条件』(1966年)である。また『マネジメント』(1973年)は、エグゼクティブの体系的入門書だけではなく、大学の教科書としても書いた。同書は、本書『現代の経営』が読みやすい入門書を意図したのに対し、総括的な決定版を意図した。」(ドラッカー名著集2「現代の経営(上)」まえがきより 上田惇生訳 ダイヤモンド社)