居酒屋で経営知識

53.八つの習慣(4)

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元 看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。

「大将。つまみの追加をお願いします」

「はいよ。じゃあ、舞茸の天ぷらでも揚げようかね」

「いいですねえ」

 雄二への八つの習慣講座が続いている。今、アクションプランをつくる、まで進んだところだ。

「アクションプランをつくったら、次は実行だ」

「それが、意思決定を行う、なのか?」

「行動に移すと言うことは、八つの習慣の(4)~(7)に当たる。つまり、意思決定・コミュニケーション・機会・会議について考えるということになるんだ」

「あ、なるほど。その4つの習慣が行動にあたってのポイントとなるわけだな」

「そう。まずは、意思決定をおこなうということだけど、そのために決めなければいけないことを4つ挙げている。
1)実行の責任者
2)日程
3)影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、理解し、納得すべき人
4)影響を受けなくとも決定の内容を知らされるべき人

これらについて、きちんと決めないと失敗すると言っている」

「誰が、いつまでもやるか、というのはうちでも気をつけているところだ。そうしないと、責任が曖昧になってしまうからな」

「ところが、多くの場合、一応決めているだけというところが多いとも言われているんだけど大丈夫か?。また、決定の内容を知らされるべき人、理解し、納得すべき人というところまで決定する習慣をもっているかどうかだな」

「知らされるべき人、理解すべき人、納得すべき人、か。うーん。どうだろう。何となく、関係者にはメールで配信するが、ちょっとイメージできないなあ」

「だから、この視点で検討することを習慣とするべきだと言ってるんだろう。特に、人事の見直しを定期的にすることが意思決定の見直しにとっても重要になってくるんだ」

「意思決定をするのは、人だという考え方だろうな。そこは、納得できる」

「意思決定をしたら、次はコミュニケーションだ。アクションプランを理解してもらうのはもちろん、関係者の意見を吸い上げる努力も必要だ。そうでないと、彼らはどんな行動を取り、また、どんな情報を伝達すればいいのかがわからなくなる」

「コミュニケーションについては、口を酸っぱくしているつもりだ。確か、前にも、あの・・・組織成立の3要素で言ってたろ」

「バーナード。共通目的・貢献意欲・コミュニケーションの3つが組織を成立させる要素だというやつだ」

「それそれ。あれを実践しているつもりだ」

「そして、今話しているのが、その組織において成果を上げるための一人ひとりの習慣とすべきポイントということになるんだ。特に、今の組織においては、専門家がそれぞれの決定を行うことが多いわけだから、経営者や組織上のライン長だけでなく、この習慣を取り入れる必要がある」

「何となく理解できる。次が機会に焦点をあわせる、か。まあ、それは当然だな」

「当然だが、本当にそれを当然として実行しているか、ということを見なければいけない。経営報告書の最初に機会が書いてあるだろうか。多くの会社の月報などの最初に、外部環境のリスクや問題点を挙げているのは、そういう意味で良くないと思っているんだ。あれは、最初に言い訳をするようなもので、自分たちの行動にも悪影響を与えてしまうかもしれない」

「確かに。リーマンショックがあると、関係あるのかどうかわからないような会社まで、リーマンショックによって将来が見えないなんて書いてあるのには笑ったことがある。まあ、枕詞とか季節の挨拶程度に思っているのかもしれないが、読んだ人に警戒感を与える気がするな」

「そうそう。これから、業績の悪化を書くけど、経営判断とか意思決定の問題ではなく、世の中の状況は悪いので仕方が無いと先に言っているように感じるよな」

「機会に焦点を合わせる習慣というのは、そんな報告書にも現れてきてしまうということか」

「そういうことだな。習慣だから、その姿勢だけでなく行動自体に表現されるようになる。そして、更に具体化する7番目が会議の生産性をあげる、だ」

「これは、笑えないかもしれないな。うちでも、会議が多くなっていることが気になる」

「会議をなくせればいいが、時々、関係者が顔を合わせて目的と成果を検討することのメリットも大きいからな。でも、ドラッカーはドキッとすることを言っている。

『もちろん会議は懇談ではなく仕事の場としなければならない。会議の生産性をあげるには、事前に目的を明らかにすることが必要である。目的が違えば、そのための準備もその後の成果も違うはずだからである』

そして、『目的を達した時には直ちに閉会する』というのは強くルール化した方がいいだろう」

「なるほど。定例会議だと言って、とりあえずやるというのは問題だな」

「会議が目的になってしまったら、成果は何か?がわからなくなるだろうな。報告会議だったら、その報告によってどんな成果が上がったのか、みんなが納得できなければ開催すべきじゃないと言えるだろう」

 八つ目の習慣に入る前に、一息つくことにした。

(続く)


《1Point》
八つの習慣
(1)なされるべきことを考える
(2)組織のことを考える
(3)アクションプランをつくる
(4)意思決定を行う
(5)コミュニケーションを行う
(6)機会に焦点を合わせる
(7)会議の生産性をあげる
(8)「私は」でなく「われわれは」を考える

 今回は、(4)~(7)についての内容となっています。
 
 具体的な行動の部分ですが、普段行っていることを振り返ってみて、どう思われたでしょうか。
 
 習慣は惰性ではいけません。常に見直し、修正することが求められます。
 
【該当部】 「経営者の条件」ドラッカー名著集1 P7~P14(上田惇生訳 ダイヤモンド社)
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