居酒屋で経営知識
114.全社戦略見直し
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。 新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士
暦の上では春ではあるが、まだまだ寒い日が続くから赤提灯が恋しくなる、という言い訳をしながらみやびに向かった。
「へい、いらっしゃい。毎度」
「大将。熱燗よろしく。ん。こんなところに豆が挟まってましたよ。節分の豆まきの豆ですね」
「あ、失礼しました。今年は結構景気よくまいたんで、拾いきれませんでした。せっかくですから、残った豆を煎ってますんでつまみにどうぞ」
「良いですね。自宅では、今年も殻付き落花生をまいたんですが、やっぱり大豆の煎ったのがいいですね」
香ばしさの残る大豆をカリカリとかじりながら、菊正宗の燗酒を楽しんだ。
「そういえば、ジンさん。昨日、由美っペがきてまして、ジンさんに指導してもらった新事業の企画プレゼンがうまくいきそうだって喜んでました。大変でしたね」
「実は、今日、経営会議で条件付き承認になったとメールで連絡がありました。その条件部分をまとめている頃だと思います」
「そうですか。ジンさんはいなくても大丈夫なんですか?」
「ファイナンスの見直しらしく、この辺は、会社に専門家がいますから私なんかので出番はないですよ。でも、みんなよく頑張りました」
「なんか、楽しそうですね。私は会社勤めの経験はないんで、何となく、会社っていつも難しい顔をして仕事しているようなイメージがあったんですが、皆さんの話を聞いているとそうでもないですね」
「大将。個人経営の店でも、大企業でもそんなに大きな違いはないですよ。課題はどんどん出てきますが、集中して取り組んで、やり遂げられればうれしいし、ダメでも次のチャレンジが明確ならワクワクすることも出来ます。仕事が楽しいとか、うまくいかないけど何とかしたい、お客さんが大好き、自社の製品を愛してるなどの前向きな感覚を持てれば、前に進んでいくし、どんどん新しいことを見つけ出します。笑う門には福来たる、というのは名言だと思いますよ」
「そうですね。みんなでわいわいやっているところは、結果を出してますよね。そうかあ。うちももっと楽しく仕事をしなくちゃね」
「わあ、マスター、大賛成!」
亜海ちゃんが突然飛び上がった。
「今、就活始めたけど、難しそうな顔をしているところって、やっぱりヤーよね。この間行ったところは、小さい会社だったけど、みんな楽しそうに挨拶してくれて、親は大きい会社が良いっていうけど心動いてるの」
「亜海ちゃん。自分の心に素直に考えたら良いと思うよ。そりゃ、親の心配はわかるけど、結局、自分に合うかどうかだから、合わないところで無理しても本当の成果は出せないと思うんだ」
「うん、ジンさんもありがとうございます。なんか、やる気がでてきたわ」
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ほぼビジネスプランとして各チームの意思が統一され、企画書としての体裁ができあがっていた。
今回、企業内起業という形で、新事業化していくため、基本戦略などは現在の既存事業とのカニバリズムを起こさないように改めて確認してきた。
「基本戦略では、既存事業がすでにありますので、全社の成長戦略との整合性が必要となります。今回の事業の位置づけを明確にし、更にヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源をどう配分して進めるのかも全体でみていくことになりますので、心してください」
「成長戦略というと、アンゾフの成長マトリクスが有名ですよね。これまでの既存事業では、新市場開拓戦略が次の一手でした。とにかく、新しい顧客を見つけてくることが営業の目標になってました。それに対し、我々の新事業は、既存事業で広めてきた既存顧客に新たなサービスを提供することを主とするので、新サービス開発戦略と位置づけるべきだと思います」
「なるほど。整理としてはすばらしいですね。であれば、既存顧客である法人契約からスタートすべきではないでしょうか。個人契約の方向性は、多角化と言えなくもないですから」
「戦略の方向性からすると明確ですね。両方一緒に始めることもないかもしれません。新サービスが法人契約で洗練されてくれば、そのサービスを新市場に投入するという形になって、2段階の成長戦略と考えれば良いでしょうか」
「すばらしい考えです。まずは、小さくスタートするという原則からしても、既存顧客をターゲットに経営資源の配分を提案すると良いと思います」
すでに、俺の手助けはあまりいらないレベルまで上がってきている。
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「由美ちゃんだけじゃなく、今回のチームメンバーのレベルが高いので、期待できます。もしかすると、社会的なインパクトが大きな事業になるかもしれませんよ」
「へえー。そうなんですか。由美っぺにも伝えておかなければいけないですね。喜びますよ」
「チームでチャレンジするというのはいいものですね。うちの営業チームも停滞感があるので、新しいチャレンジをしたくなってきました」
「ジンさんにとっても刺激になった訳ですね。やっぱり、楽しそうだ。うちも、いい酒と良い料理をどんどん考えなくっちゃいけないですね。亜海がいるうちに、もうひとがんばりしますかね」
「大賛成!私も考えまーす」
《1Point》
・今回は、以下のフローのうち、全社戦略の部分についての考え方を表現しました。アンゾフの成長戦略(マトリクス)については、以前にも何度か出ていますので、参考にしてください。
http://bit.ly/mGuG5Y
ミッション
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ビジョン
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