居酒屋で経営知識

115.個別戦略・リスク検討・感度分析

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

 新年の挨拶で個別案件の営業が減速気味になるのは、いつものことなのだが、さすがに節分を越えたあたりから通常のペースに戻ることになる。

「へい、いらっしゃい。あれ?ジンさん、随分早いですね。営業先から直帰ですね」

「最後の会社が隣駅でしたから、当然の結果ですね」

「その会社様様ですね。さあ、まずは、あったかいおしぼりどうぞ。まだ、亜海の出勤前ですから、今、お酒とお通しを用意しますね」

「大将、ゆっくりでいいですよ。今日は、後から雄二と由美ちゃんが来ますので」

「ああ、そうですか。久しぶりじゃないですか、3人揃うのは」

「そうだったかもしれませんね。お、今日は国稀じゃないですか」

「純米吟醸の最北の蔵が入ったんですよ」

「これは、常温ですね。・・・うわー、コクがあるのに後味はすっきりしてますね。香りも華やかだ」

「最近は国稀も品切れが多くなってしまいました。人気が出てくれるとうれしいんですが、出過ぎるとこれはこれで心配です」

「そうですね。やっぱり、最適な規模というのがあるんでしょうね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お、珍しくジンが酔っぱらっているみたいだな」

「鳶野さん、いらっしゃい。ははは。ジンさんも、5時から国稀飲み続けてますから」

「雄二。お前にも少し飲ませてやろうか」

「いかん。ジンが絡み出すとはよっぽどだな。・・・由美も、似たようなものか」

「え?何?鳶野さんが来るのが遅いんじゃない。でも、このお酒、チョーおいしいのよ」

「由美が、亜海レベルになってる・・・大将、俺も早めに追いつくわ。枡でくれ」

「鳶野さん。由美先輩が私レベルなんてあり得ないわ。失礼ね。ところで、鳶野さん。ジンさんが酔っぱらう前に、これ教えてくれたの。後は鳶野さんに聞けって」

「え?まったく。自分たちは酔っぱらっておいて、何を振ってきたんだ?」

「由美さんの会社のビジネスプランの最後の方なんだけど」

「どれどれ。個別戦略としてのマーケティングミックスとリスク検討。それと、ファイナンスの感度分析か。うーん、俺にはハードルが高そうだ」

「ジンさんに頼んで、簡単にまとめてもらったの。あら、鳶野さんに言ったかしら、私たちのビジネスプランが、最終選考に残ったの」

「あ、そうだったのか。道理で今日はお祝いだって言ってたんだ。なるほど。なんだかんだ言っても、ジンは心配だったんだな。こいつも、結構単純で、嬉しければ酔うし、悲しければまた酔うんだが、まあ、それだけ、本気で支援してたんだろう」

「雄二も偉そうになったなあ。まあ、もう俺の手助けがなくても大丈夫だからな。そのマーケティングミックスは覚えているだろうな」

「ああ。マッカーシーの4Pだからな。暗記しているよ。

基本戦略を遂行するための個別戦略(マッカーシーの4P)

1)Product(製品・サービス戦略):ターゲットにとって提供される商品・サービスの具体的な中身は何か。十分魅力的か。ニーズを満たしているか。

2)Price(価格戦略):どのくらいの価格で提供するのか。ターゲットにとって高すぎないか。逆に安すぎないか。

3)Promotion(プロモーション戦略):どのようなプロモーションを行うのか。ターゲットに対して効果的に伝わるか。

4)Place(流通戦略):流通に問題はないか。事故に対応できるか。ターゲットが求めるタイミングで提供できるか。

ってとこだな」

「ええー?鳶野さんってすごいんですね」

「亜海、今頃かよ。俺だって、経営者であり、中小企業診断士の試験通過者だ」

「よし。じゃあ、由美ちゃんに問題。今回のビジネスプランで気をつけるべきリスクについて、まずは、一般的にどう考える?」

「ええーっと。まずは、環境分析からのリスクの把握があるわよね。

順番に考えると・・・

・機会が失われることはないか?
・強みが失われることはないか?
・脅威が与える影響は?
・弱みによって影響を受けないか?

ということね」

「そうだね。でもリスクというと不可抗力についても考える必要があるよ。

例えば、

・予想外の天災
・製品・サービスの予想外の使用事故
・経営者の犯罪、社員の犯罪
・中小企業だと社長の不慮の死亡などもあるね

そして、こういったリスクに対応した計画をあらかじめ立てるということもあるんだ。それをコンティンジェンシープランというんだけど、どこまでの事態を想定するかというところがむずかしいところだね」

「ジンさん。いきなり復活してるわね。じゃあ、最後のファイナンスの感度分析についてね。これは、予想して作成したファイナンスの結果を、様々なケースに応じて数値がどう変わるかを検討すると言うことよね。

 例えば、毎年の契約数を予想しているけど、それが半減する結果だったらどうかとか、価格を下げたらどうか、上げたらどうなるかなどのシミュレーションをして結果を比較するということね」

「そうだね。ベストケース・ワーストケース分析というのもあるよ。これは、何もかもうまくいったらどうなるか、もしくは、最悪のケースはどうかという常識的な範囲での上限と下限をシミュレーションしておけば、コンティンジェンシープランの裏付けともなるというわけだ・・・・」

「ん?ジン、寝たのか?よっぽどだな。でも、大将、俺にももう一杯頼むよ。ジンに追いつくのは止めたけど、その代わり、鍋は俺が独占だ」

「いや、鍋は俺も食う」

「お前って奴は・・・今回はいつもと違って、生身のジンが垣間見えたな」


《1Point》
・個別戦略として、特別にマッカーシーの4Pを取り出しました。思い出したでしょうか。これも過去に何度か出ています。

http://bit.ly/HFrtgs

 その他、一気にリスクや感度分析についてもコメントしてますが、イメージはわかりましたか?

 次回は、出来れば、ビジネスプランのサンプルそのものか、それへのリンクを張れるように出来ればと思っていますが、乞うご期待。