居酒屋で経営知識
16.中小企業診断士1次直前対策(2)
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。大企業の関連企業社長
「みなさん、こんにちは。今日は、北野さんが来られないのですが、昨年の合格者として、先週の続きを勉強したいと思います」
ジンさんは、出張が入ってしまい、来られなかったので、私一人で中小企業診断士の講師をすることになってしまった。
ただ、コンテンツは、ジンさんがすでに作ってあったので、内容を分かりやすく説明することに徹すればいいと割り切ることにしたの。
「先週のジンさん、じゃなかった北野さんの説明はスキミング・プライス戦略まででしたね。内容は大丈夫ですか?試験直前ですので、あまり時間をかけず、わからないところは聞いてくださいね」
「・・・はい、では、次に移ります」
ジンさんに倣って、キーワードをランダムに提示して、数人に説明してもらう形を取った。
【総資本経常利益率】(ROA:Return On Asset)とは?
総資本経常利益率(%)=(経常利益/総資本) ×100
財務分析において、最も基本的な収益性分析の判断基準であると言えます。
総資本=総資産ですので、企業が投下資本に対して十分な利益獲得をしているのか、つまり、効率的な資産運用がなされているかという視点となります。
財務分析においては、この式を分解し、より詳細に検討することで経営判断に活かすことになります。
総資本経常利益率(%)=(経常利益/売上高)×(売上高/総資本) ×100
このように売上高を介して、分解してみると二つの視点で見ることが出来ますね。
(1)経常利益/売上高:売上高経常利益率
(2)売上高/総資本:総資本回転率
当然、両方が良いに越したことはありませんが、業種・業態によって改善の方向性は変わってきます。
競合他社との比較分析をする場合には、このように視点を分解して確認することが重要となります。
【棚卸資産回転率】(単位:回)とは?
棚卸資産回転率(回)=(売上高)/(棚卸資産)
棚卸資産には、通常、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・
貯蔵品等が含まれます。(貸借対照表の流動資産の部になります)
財務分析においては、基本的な収益性分析の判断基準です。
棚卸資産が増えているという評価が出てきた場合など、効率性をはかる指標と言えます。
特に、棚卸資産が増大しているときに損益だけをみると、非常
に良くなっていることがありえますので注意が必要です。
一般的には、過剰在庫を防止し、また、欠品を防ぐという両面
から管理する必要がありますが、同業他社などと比較して、棚卸
回転率が低い場合は、不良在庫を抱えている可能性もありますの
で注意が必要です。
【ドメイン】とは?
企業が経営活動を行い、存在し続けるための「こだわり」と「領域」を定義したものと言えると思います。
ドメインとは一般的に3つの要素によって構成されています。
(1)自社のターゲットとすべき「標的顧客」(誰に)
(2)標的顧客が求めている「顧客ニーズ」(何を)
(3)顧客ニーズを満足させるために、自社の経営資源の強みで対応する「独自能力」(どのように)
2次試験でも重要な視点です。常に、対象企業にとってのドメインは何かと問いかけてください。特に、変わろうとしている企業にとっては、現在のドメインと目指すべきドメインにギャップが生じます。そこにキーポイントがあると思ってください。
つまり、ドメインは、環境が変化してきたら見直すことが重要です。
一度決めたら変えないというものではありません。そのために、常に環境分析を行い、変化があれば、再構築の検討を行うべきです。
【ニーズ】とは?
一般的に、欲求と訳されています。
しかし、マーケティングにおいて、ニーズと言ったときには、「本質的な」欲求と捉えることが重要です。
「ウォンツ」との対比で考えてみます。
ウォンツは、直接的であり、手段であるような欲求を指します。
例えば、「喉が渇いた」という欲求をニーズとすれば、「麦茶が飲みたい」「コーラを飲みたい」「ミネラルウォーターが飲みたい」などはウォンツと言うことになります。
ここでの注意は、「麦茶を飲みたい」という声を『ニーズ』であると捉えてしまうと、麦茶という製品だけしか考えられなくなってしまうということです。
そこで、顧客となる人たちが、麦茶に飽きてコーラで喉の渇きをいやし出すと一気に売上が落ちてしまいます。
つまり、この場合の本質的な欲求は、喉の渇きをいやしたいと言うことで、麦茶を飲みたいと言うことではないということが重要です。
【バランススコアカード】とは?
ロバート・S・キャプラン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)とデビッド・ノートン(コンサルタント会社社長)が1992年に「Harvard Business Review」誌上に発表した業績評価システムであり、「将来の企業における業績評価」という研究プロジェクトを通して、この概念を考案しました。(Wikipedia)
4つの視点を使って業績を評価することで、バランスをとった経営を行えるようにするものです。
・財務の視点:株主の視点となる
・顧客の視点:CS(顧客満足)等の視点
・業務プロセスの視点:実際の業務のプロセス
・学習と成長の視点:従業員の能力を高める視点
どれかに偏るのではなく、それぞれをバランス良く、また、相互に関連させながら、計画から評価までを行っていくことが重要です。
【ファイブフォース分析】とは?
ポーターの競争要因(ファイブフォース分析)です。
競争戦略とは市場の中で競争優位を獲得する方策ですが、自社
を取り巻く環境をもれなく分析することが前提にあります。
この時、競争環境を形成してる競争要因を5つに分類している
のが、ファイブフォース分析です。
(1)新規参入の脅威
(2)代替品の脅威
(3)買い手の交渉力
(4)売り手の交渉力
(5)競争業者間の敵対関係
これらを分析して最重要要因は何か、と見つけ出し、これらの
競争ルールをうまく利用した戦略を策定していくことになります。
【マトリックス組織】とは?
機能部門別・職能部門別など垂直的組織に、プロジェクトなどのように水平的な組織を串刺しにした組織形態をいいます。
たとえば、営業部門・設計部門・製造部門・研究開発部門と機能別に業務が行われている組織で、Aプロジェクトチームを各部門から担当者を指名して編成する形態をさします。
部門のマネージャーとプロジェクトマネージャーの2ボスとなる問題はありますが、グローバル化に対応させるために適応した形態であるといわれています。
組織論では、要注意ですので、再度、他の形態とのメリット・デメリットの比較をしておいてください。
【ロス・リーダー政策】とは?
価格政策の一つです。
一般的に、おとり政策とも言われます。
有名ブランド品など、品質や価格が知られている品物を極端に安くすることで「おとり」にするという代表的な戦術です。
来店者を増やし、ついで買いを期待するものですので、おとりだけを買って帰ってしまう客ばかりになってしまう失敗も良く聞きます。
・・・・・・
「へい、いらっしゃい。毎度!」
「あ、ジンさん。お疲れ様」
「由美ちゃんもお疲れ様。どうだった?」
「うん。ジンさんのやり方をそのまま使ったので、特に混乱もなかったわ。でも、人に教えるって刺激になるわね」
「そうだね。記憶の方法の中で一番いいのは、人に教えることだって何かで読んだことがあるよ」
「確かにその通りね。あ、暑い中お疲れ様でした」
今日を締めくくる一杯はうまいなあ。
(続く)
《1Point》
今回も、試験直前対策です。財務分析の基本的な公式は必ず覚えてください。
もう少しです。あと一踏ん張り!
【総資本経常利益率】(ROA:Return On Asset)
【棚卸資産回転率】(単位:回)
【ドメイン】
【ニーズ】
【バランススコアカード】
【ファイブフォース分析】
【マトリックス組織】
【ロス・リーダー政策】
(15)中小企業診断士1次直前対策(1)←
→(17)中小企業診断士1次直前対策(3)