居酒屋で経営知識

91.リーダーシップ論の種類

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

「毎度。ジンさん、動きがスローですね。神輿お疲れ様でした」

 昨日の神輿巡行が無事終わり、今日は神輿や御仮屋、神酒所の解体や片付けを行った。

 その後の打ち上げに早い時間からみやびを開けてもらったのだ。

「皆さん、お疲れ様でした。今、生ビールを準備しますので、ちょっとお待ちください」

 亜海ちゃんは実家に帰っているので、由美ちゃんに手伝ってもらっている。

 人数も30人を越えるので、生ビールサーバーも一時的に3台借りてもらい、若睦の連中が一緒に生ビールを注いで運んでいる。

 商店街の人たちの協力が一番多く、陣頭指揮は大森さんだ。

 その大森さんの乾杯の音頭でスタートする。

「皆さんのご協力おかげで、今年のお祭りも無事、そしていつもにまして盛大に完了することができました。半年前から準備をいただき、そして今日の後片付けまで、本当に感謝しています。これからは、お祭りの思い出話を肴に大いに飲んで、大いに食べてください。それでは、ご唱和願います。かんぱーい!」

 一気に乾杯とお疲れ様の声があちこちで起こり、拍手で宴会がスタートした。

「いやー、いいお祭りでしたね。初めて参加しましたけど、感動しました。これだけ、多くの商店街や住民の方が参加して盛り上がれるなんて最高ですね。この街に住みたいと思いましたよ」

 新田さんは知的資産経営の指導で商店街の個店とお付き合いしていることもあり、今回の祭りにも付き合ってもらったのだ。

「新田さんにそう言ってもらえるとうれしいですね。お祭りの時だけじゃなく、常日頃集まって、地域の課題や行事の采配をしているのがいいんですね」

「今回見ていて思ったんですが、あまり表に出ない若睦の活躍が大きいんじゃないかと思いました」

「さすが新田さん。私もそう思います。彼らは睦会と称して、お祭りをメインに編成されているんですが、しょっちゅう例会と言っては飲んでいるんですよ。それもこういうイベントの本番を成功させる原動力になっていると思いますね」

「ええ、同感です。睦会の会長の求心力はすごかったですね。会社とか、NPOとかいったはっきりした目的集団とは違うし、バラバラな仕事や背景や年代の寄せ集めなのに、あれほどの結束力と行動力を発揮するのは会長のリーダーシップなんでしょうね」

「それは大きいですね。リーダーシップって、いろいろな理論がありますけど、そんな理論を考えるまでもない飲み会集団をまとめて成果を出してしまうと言うのはスーパーリーダーかもしれませんよ」

 突然、新田さんがモジモジしだした。

「北野さん。こんなところでお願いするのも申し訳ないんですが、今度行政書士の勉強会でリーダーシップの発表をするんです。スーパーリーダーシップというより、診断士の知識でのリーダーシップの基本だけでも教えて貰えないでしょうか。もちろん、後日で結構です」

「ははは。新田さん、そんなに気遣いしないでください。お互い、出せる知識は出しあいましょうよ。了解しました。前にまとめたものもあるので、明日にでもお送りしますよ。それを見ていただいて、やり取りしましょう」

「ありがとうございます。助かります。これで、心置きなく飲めます」

「じゃあ、改めて、カンパーイ!」

「あら?新田さんとジンさんでこそこそと盛り上がってますけど、何かいい話ですか?」

 由美ちゃんがいたずらっぽい目をしながら生ビールを持ってきた。

「由美ちゃん、こそこそしていないよ。新田さんが、リーダーシップ論の発表をするんだって」

「あ、それ私も入れてくださいね。2次試験対策にも気になるところなの」

「由美さん。大歓迎ですよ。2次試験も頑張ってくださいね」

「新田さん、ありがとうございます。じゃあ、私も飲んじゃお。皆さん、カンパーイ」

(続く)


《1Point》
リーダーシップ論の基本

 リーダーシップ論ほど、様々な理論や本が出ているテーマもないんじゃないかと感じます。

 それほど、ニーズが高く、かつ完成された理論がないということなんでしょう。

 私自身としては、リーダーシップを理論としてまとめるのは無理ではないかと思っています。それは、経営者の資質をまとめるのと近いのかもしれません。

 資質としての経営者やリーダーというものは無いと思いつつあります。

 とはいえ、歴史的な理論変遷はありますので、列挙します。

・資質特性論(人間特質論):個人の身体的・心理的な資質によって決まるとする研究
 
・タイプ論(機能方法論):リーダーシップを仕事中心の課題達成機能と人間中心の集団維持機能に分け、それぞれの組み合わせでタイプ分けをした研究
 
・状況論(関係場面論):リーダーとメンバーの関係や状況の変化によって、リーダーシップが変わるとする研究
 
・役割論:強烈な責任感(意志、信念)と行動力に裏付けられた役割意識にあるとする研究

 興味のある方はそれぞれ調べてみてください。

 あまり突っ込んではないですが、これまでのメルマガでも触れてますので、バックナンバー(ホームページ)を検索してみてください。