居酒屋で経営知識
68.ライリーの法則・修正版ハフモデル
【主な登場人物】 ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている 黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み 由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪 雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した 大森:みやびの常連 地元商店街の役員 近藤:みやびの常連 建設会社顧問 亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト 原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている。
「いらっしゃい。あ、ジンさん、お待ちかね」
由美ちゃんから誘いのメールがあったので、みやびでの待ち合わせをしたようなものだ。
「ごめんなさい。忙しくなかった?」
「ははは。忙しいからみやびに来られないということなら、普段から来られないよ」
「そうかあ。よかった」
「ところで、診断士試験受ける決心したんだって?」
「ええ。とりあえず、テキスト買ってきてみたの。たくさんあるのよね。まずは、取っつきやすそうな『店舗・販売管理(運営管理)』というので雰囲気を掴もうかなって思ったんだけど、簡単じゃなさそうね」
「1次試験は7科目あるから1科目一冊のテキストだと7冊になるし、たぶん、内容によっては2分冊になっているものもあるから、一式そろえると10冊くらいになるからね」
「そうなの。これだけ読むのも大変そうだし、早めだと思ったけど、8月の試験までにはあまり時間がなさそうね」
「由美ちゃんは、マーケティングとか財務会計あたりは既に随分やっているはずだから、一番時間がかかりそうなのは経済学・経済政策とか経営法務あたりかな。学校には行かないの?」
「仕事が週末に入ることも多いから学校は難しいの。それに、ジン先生がいるから、不要かなって」
「それなら、善は急げだね。隙間時間を利用して、まずはざっと目を通して、早い時期から過去問をした方がいいと思うよ」
「まずは、早起きをして朝の時間を確保することにしたし、通勤の電車の中と昼休み、そして、早く帰れたときは夜勉も考えているわ」
「その考え方でいいと思うよ。1次試験は特に隙間時間を利用することで対応していくのが正解だ」
「うん、了解。あ、ごめんなさい。亜海ちゃんがビールをもってきていたんだ。まずは、乾杯ね」
「由美ちゃんの診断士試験チャレンジに乾杯!」
「今日は飲むけど、これからはお酒も控えて頑張るわ」
「そうだね。たまには息抜きは必要だけど、少しストイックにしないと合格ラインに行くのがシンドイからね」
「ところで、さっきこの店舗・販売管理の中身を見てたんだけど、ハフモデルとか、数式があったりするのね」
「商圏の関係だね。確か、ライリーの法則や修正版ハフモデルなどがキーワードになるし、それぞれ公式も覚えておく必要があるよ」
「そうなのね。そうそう。ライリーの法則が出てるわ・・・二つの都市の間にある小さな町からどちらの都市に引き寄せられるかという考えなのね」
「小売り引力の法則とも言ってね、小さな町からどちらの都市へどのくらいの人が買い物に行くかという法則だね。ライリーは、距離の二乗に反比例し、都市の人口に比例すると言ったんだけど、後のコンバースという経済学者が公式を作ったんだ」
「えっとこれね。A都市と町の距離が10Km、人口が10万人。B市は5km離れていて、人口が5万人とすると・・・
どういう意味なのかしら。A市に『1』でB市に『2』ということは、小さな町の人口が900人だったらA市へ300人、B市へ600人ということと書いてあるけど・・・」
「
という公式だね。距離の二乗に反比例なので、人口の順番と逆だというところが要注意だね」
「ハフモデルも公式なのね」
「日本で修正した修正ハフモデルを覚えておけば大丈夫だと思うよ。修正版でない元のハフモデルだと時間のλ乗となって、λが変数だけど、修正版では2乗に固定しているからね」
「λは取扱商品の魅力無さなど買い物への障害度合いって書いてあるわ」
「修正版ハフモデルやハフモデルが出すのは、消費者が買い物に行く確率となっている。考え方は、商業施設の販売面積に比例し、出かけるのにかかる時間のλ乗に反比例するということだ。
A店とB店があった場合、A店の販売面積:Aa、 A店までの時間:Atとし、B店の販売面積:Ba、B店までの時間:Btとすると
となるんだ」
「これは覚えるしか無いわね。でも、冷静に考えると単純すぎる考えよね。確かに、大型店の方が魅力があると考えるのが一般的だし、あまり時間がかからない店に行きやすいというのは感覚ではわかるけど、それを公式にするっているのがどうなの」
「さすが由美ちゃん。診断士の試験では素直に公式通り考える必要があるけど、実際の分析の時にこれらの公式を使って回答を出すというのは難しいと思っているよ」
「そうよねえ。そんな単純じゃ無いと思うわ」
「他もやる?」
「今日は飲むっていったでしょう。もうここまでね。さあ、飲みましょう。私の合格を祈ってね」
「もちろんだとも」
(続く)
《1Point》
・ライリーの法則
小売吸引力とも言いますが、ある商品を購入しようとする時、その商品を販売する商店が近隣に無く、別の二つの都市にある状況で、どちらの都市の商店に買いに行くかという考え方です。
テキストのメルマガでは分数や二乗がうまく書けないので、HPに転載するとき編集します。→ちょっと厳しいですがWordで作成してみました
考え方は、
(1)都市の人口比に比例:単純に人口が多い都市の方へ行く傾向がある。
(2)それぞれの都市への距離の二乗に反比例:二乗に反比例ですから、距離の差があるとより近い方へ行く傾向があると考えればいいでしょう。
・修正版ハフモデル
ハフモデルは、単純に言うとライリーの法則の都市人口を店舗の売り場面積とし、単純に距離では無く、かかる時間としたとも言えるかもしれません。
元祖ハフモデルでは、時間のλ乗とし、λとは店舗の魅力の無さになっており、修正版ハフモデルでは、これを二乗にしています。
わかりづらいですが、絵に描いて考えてみてください。
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