居酒屋で経営知識

105.ペルソナをつくる

【主な登場人物】
ジン(北野):主人公 サラリーマンの傍ら経営コンサルタントをしている
黒沢:居酒屋みやびの大将 酒と和食へのこだわりが強み
由美:居酒屋みやびの元看板娘 黒沢の姪
雄二(鳶野):ジンの幼なじみ ジンの応援で起業した
大森:みやびの常連 地元商店街の役員
近藤:みやびの常連 建設会社顧問
亜海:居酒屋みやびの新しいアルバイト
原島:ジンの高校の大先輩。新社長としてジンにアドバイスを求めている
新田:大森さんの紹介で知的資産経営を指導している。行政書士

「いらっしゃい。おや、今日も由美っペの会社の研修でしたか」

「ええ。どんどん進んでいますよ。研修というより企画会議のようになってきました」

「そりゃ、楽しみだ。そころで、今日はなんにします?」

「話し疲れたので、エビスの生をもらおうかな」

「俺はこの間の獺祭をもらおうかな」

「由美っペは?」

「うーん。そういえば、この間おいしい梅酒が入ったって言ってたわよね。ちょっと疲れた感じがするの」

「そうなんだよ。石垣島の泡盛で作った梅酒でね、請福梅酒っていうんだけどこれがいけるんだよ」

「泡盛の梅酒ですか。それは我々も味見してみたいですよ」

「それじゃあ、まずは、皆さん一杯ずつ、どうぞ」

「え?これが泡盛の梅酒?もっと泡盛のパンチが効いているのかと思いきや、酸味と甘みのバランスがすばらしいですね。いやー、梅酒って甘いだけで酒という感じがしなかったですが、これは普段飲んでもいいですね。大将、エビスをチェイサーでいきますよ」

「ジンさんが喜ぶ梅酒って初めてね。でも、本当においしいわ。これやみつきになりそう」

「甘いのがダメな俺でもこれはいけるなあ」

「これは、メニューに載せても良さそうですね」

「女性客のみならず、ファンが増えそうですよ」

・・・・・・・・・(回想)・・・・・・・・・

「前回からターゲットを明確にする作業をしていますが、どんな内容になってますか?」

「えっと、前回、北野先生から話が合ったペルソナというものを考えてみたので、各チームから発表して貰うと言うことでいいでしょうか」

「それは良いですね。そういえば、前回、大きく二つのセグメントを取り上げるという話が出ていましたが、ペルソナはどうしました?」

「ええ、もちろんそれぞれ一つずつ考えてみました」

「それじゃあ、お願いします」

 各チームから具体的な人物像を発表して貰った。それぞれいろいろなパターンがあり、メンバーの個性が出て面白かったが、今後の作業へ向け、それらを集約して、二人のイメージを作ってもらった。現役世代と引退世代の二つの世代にまとまってきたようだ。

「そろそろ時間ですので、現状のペルソナを確認してみましょう。ペルソナを二人というのは初めての経験ですが、皆さんの中にビジネスのイメージが出来つつあるようですのでこれでいきましょう」

 概略は以下の通りになった。

1.50歳代の独身男性
・年齢・性別:52歳・男性
・ライフスタイル:仕事中心で休日はデジカメを持って町歩きをするのが趣味。食事は外食中心で、お酒も飲むが一人で飲むことが多い
・仕事:中堅工務店の総務部長(東京支社)
・社会での立場:地域とのつながりはほとんどなく、マンションの管理組合の役員も輪番制でやむなく対応している
・学歴:富山大学卒業
・購読紙:読売新聞
・インターネット:自宅ではマンションの光回線を契約し、自宅にいるときはしょっちゅうパソコンの前にいる
・住居:事務所まで約1時間の千葉県内に2LDKのマンションを購入
・生活レベル:年収880万円、自家用車は無し
・趣味:デジカメで町を撮影し、SNS等へ公開するのが趣味と言えば趣味。PCをいじるのも趣味と言える。
・その他:結婚経験なしの独身。40歳代前半までは恋人がいたことはあったが長続きしなかった

2.70歳代の老人ホーム入居者
・年齢・性別:70歳・男性
・ライフスタイル:63歳まで大企業(製造業)の営業部門に所属し、やり手として数々の実績を残す。定年直前に心筋梗塞で手術し、幸い順調に快復したが、子会社の社長の話が消え、そのまま退職した
自分では家事等をしたことがない
・仕事:無職
・社会での立場:昔の学校での友人の他には会社関係のつながりしかない
・学歴:日本大学卒業
・購読紙:日本経済新聞
・インターネット:自分から利用したことはない
・住居:都内のマンションを所有していたが売却。妻に先立たれ(4年前)、子供も独立しており、自分の意志で2年前に老人ホームに入居
・生活レベル:老人ホーム(退職金とマンション売却金で不自由はない)
・趣味:特にない
・その他:子供は娘が一人。すでに結婚し、夫の仕事の関係で家族で北京に住んでいる

・・・・・・・・・(回想ここまで)・・・・・・・・・

ペルソナをつくるのが面白かったわ。結構、みんな自分自身や友人、親なんかを想像しているようで、思い出話みたいになったところもあったみたい」

「杓子定規なセグメントを考えているのと違って、考えやすくなるだろう」

「そうね。でも、本当にこんな特殊なイメージを作ってしまって、それに向けたビジネスモデルが特殊にならないのかしら」

「それは大丈夫だよ。どうしてもおおざっぱになってしまう検討を軌道修正しやすい効果のほうが大きいと思うよ。これから、ビジネスモデルを作っていくことになるけど、仮説の検証などは考えやすくなるはずだし、何より、曖昧なイメージで進めるより意見を比較しやすくなる」

「特にチームでやっていくから、このくらい細かくしておいても全然違った考えというのも出てくるもんなんだよ」

「そうなんだあ。でも、面白かったからみんな張り切っていたわよね」

「そうだね。みんな活き活きしていた」

「それが最大の収穫かもしれないな」

「大将。この辺で日本酒にしたいんですが、何か入ってますか?」

「そうだなあ。山形の酒で、山法師の純米原酒はどうだい」

「いいですね。それいただきます」

 みんなで、山法師を片手に、ちゃんこ鍋に取り組みだした。

(続く)


《1Point》
 実際にペルソナってどういうものかを載せてみました。初めての方には、こんな勝手な人物像で大丈夫?と思うかもしれませんが、これ自体面白いのでやってみてください。

 前回と同じですが、以下に残しておきます。

ペルソナ
一般的に「架空の人物像」と言われているようです。
 できるだけ詳細な人物像を作り上げ、その人物が自社の商品・
サービスに対し、どんな感情を抱き、どう行動するかなどをシミ
ュレーションしながら、マーケティング上の課題を解決していき
ます。
これについて、過去に説明したものがありますので興味がある方
は以下を参照ください。
http://bit.ly/T8xucs